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テクニカル分析とバイアス②

前回の続きです。


テクニカル分析って何?

テクニカル分析、なんかカッコイイ名前だよね。
直訳すると技術的分析。
…いやぁ、ダセェ。
うん、間違いではないよ?
小難しい言葉で説明すると、値動きをグラフ化してチャート上に表示し、将来を予想すること。主に短期投資で使われます。
もう少し詳しく言うとそこからトレンドやパターンを探して、過去と似ていれば将来も同じようなパターンになる可能性が高いと予測します。
投資と聞いて想像するのは大体こういう感じ。

画像にあるのはローソク足、移動平均線、ボリンジャーバンドなどなど…
これら全てテクニカル分析の対象。
例えば移動平均線だとこう。

ふむふむ、交わったら買えばええんやな。
ボリンジャーバンドだとこう。

なるほど、±2σのところで売買すればええんやな。
簡単そうだし、これさえ勉強すれば大儲けや!と突っ走るアナタ、ちょまま ちょままま ちょっと待ってちょっと!

まずは一旦落ち着こうね?
簡単に稼げるなら誰も苦労してないよ?

テクニカル分析の根本は確率

か、確率…げろげろ~とアレルギー反応を起こした方、ちょっとだけでも良いから読んでみよう、ね?
理系の方には釈迦に説法で申し訳ありません…数学Aを思い出しながら復習のつもりでどうぞ。

宝くじを買ったことはありますか?
「7億円」という言葉に乗せられて買ったりしてますが、夢の中でしか当たったことがないです。
7億当たるか外れるかのどちらかなんだから、当たる確率は1/2だったらなぁ…と考えたことありません?
でも実際の当選確率は以下の通り。ひぇ~

何故1/2ではないのでしょう。
それは、当たりと外れの数が違うからです。
状況が全く異なることは明らかだと思います。

そして、別に銀座で買っても近所のコンビニで買っても確率は変わりませんし、ましてや性別やイニシャル、職種、星座、手相などの条件で左右するはずがないことも少し考えれば分かるはずです。

遠回りになりましたが、このように同じ程度に起こるものと期待されるとき、同様に確からしいと言います。
そして誰が買っても同様に確からしいとき、当たる確率は「当たりの数」を「宝くじ全体の数」で割った値となります。
逆に購入場所や生年月日などによって当たりやすさが違う場合、即ち同様に確からしいと言えないとき、同じ計算方法で正確な確率を求めることができなくなってしまいます。
(ここでは数学的な厳密さは置いておきます)

テクニカル分析は過去の値動きという結果のみ注目して確率を計算しているから、今まで起きていたことがこれからも続くという考えが前提としてある訳です。

ゑ、マジで?
だったら誰も苦労しないよ!?

市場は変化しないの?

実際はそんなことは無く、常に状況は変化しています。
なのでテクニカル分析で将来を予測することはできません。
予想が当たるから利益が得られるのであれば、テクニカル分析で稼ごうとするのはギャンブルと変わらないと思います。

最近だと銀行が相次いで破綻したよね。
青学の監督が云々ってテレビで見た?
株価が急落「クレディ・スイス」何がヤバいのか 問題はシリコンバレー銀行破綻の余波ではない | The New York Times | 東洋経済オンライン (toyokeizai.net)
今まで余裕をかましていた投資家が一斉に「あのクレディスイスが?流石にやばくね!?」とざわつくようになりました。
前からやばかったけど。
クレディ・スイス、顧客資産回復に必死-3カ月物6.5%の高金利提供 - Bloomberg
ターミナルレート6.0%の予想はあったけど、それ以上の高金利を提供するには何かしらの理由があるはず、ということに気付けなかったらしいね。

他にはスイスフランショック。
今までフラン安を誘導してきたスイス中銀が為替介入で下がり続けるユーロを買い続けた結果損失が膨らみ、最終的にユーロの相対的な上昇を諦めたという話。
これで大儲けした人がいる中、大損して退場した人もかなりの数に。

これ見て取引したいと思う?

市場参加者やその心理はコロコロ変わります。ですが、テクニカル分析では価格の裏にあるものを考えることなく同じパターンであれば全て同じものとして扱ってしまいます。個人的にはとても危険な考え方だと思います。

あり得ないはあり得ない

一言で言うとこれ。
ノーベル賞を受賞した人達が運営していたLTCMというファンドは、6σ(100万分の3)の確率を無視してポジションを組んだ結果、アジア通貨危機とロシアの財政破綻が起きて多額の損失を被り破産しました。
(後期の経済学で軽く紹介されると思うよ)

ただでさえ世界情勢が大きく変化している今、単にこの2つが交わったから買い、ナントカラインに達したから売りと考えるのではなく、しっかりと勉強しないと痛い目に遭うと思います。
前回貼った画像をここでもう一度載せておこうと思います。

チャート上に雲が出てきて、それが価格を支えたりするらしい。

そんな気がするだけです。

テクニカルトレードの現状

仮に市場が一切変化しないとするよ?
ならいけんじゃね?と思った方は残念。

金融市場で取引しているのは我々人間だけだと勘違いしやすいですが、実はコンピューターもできるんです。現在のコンピューターの取引量は市場全体の8割以上を占めていると言われています。びっくりぽん。
AIがチャートを瞬時に分析し、テクニカル分析は勿論、経済指標も計算して自動で売買するアルゴリズム取引が主流です。2010年頃からよく使われるようになり、その中でもHFTは1000分の1秒単位で高頻度の取引を行ってます。
一回当たりの利益は小さいけれど、それを何度も行うので低リスクである程度の利益が期待できるという訳です。

個人投資家は常にアルゴの後追いになってしまい、勝ち続けることはほぼムリゲー…素直に諦めよう。
先物取引で最初の1回だけ爆勝ちした後、アルゴの餌食になって破産したおじさんが身近にいたりしない?
ゑ、そもそも先物やってない…?

そもそもテクニカル分析は見方次第で上がるようにも、下がるようにも見えるもの。
どのような金融商品も一直線に上がったり下がったりすることはなく、波のように上がったり下がったりを繰り返しながら動いているからね。
だから、時間軸を変えれば買いサインが売りサインになっていることもよくある訳で、そんな中で「いけんじゃね?」と判断して、その理由を都合良く確証バイアスで補強するのはまずくないですか?

ちなみに、ここら辺の話も心理学で習うので興味があれば受けてみよう!
ヒューリスティックとは?【簡単に】具体例、種類、バイアス - カオナビ人事用語集 (kaonavi.jp)

何故テクニカルは人気なのか?

個人が視覚情報を基に判断しようとしてもミリ秒単位で売買を繰り返している相手に歯が立たないのに、どうしてテクニカルは根強い人気があるんだろうね。

理由はいくつかあるんだろうけど、その一つは簡単だからだと思う。
最初に説明したように、移動平均にしろボリンジャーバンドにしろ覚えるのは難しくないし、それで大金持ちになった人(真偽不明)がネット上には沢山いるからつい真似したくなるんだと思う。一度やってみて利益が出たらもうやめられない、とまらない…
それにテクニカルなら誰かに教えるのも比較的容易だから記事にしやすく、それを見た人が「これはいける!」と勘違いしてしまうのだと思う。

これで君も雰囲気トレーダーだ!

7STEPで経験値爆増!FX初めてのテクニカル分析を手取り足取り解説|資産形成ゴールドオンライン (gentosha-go.com)

あと、書店でこんな感じの本を見たことありません?

右側の女性、正直タイプかも…!?
嘘です

僕にはよく分からないけど、こういった本に書いてある内容を真似すれば自分も億れると考える人が一定数いるらしいですね。
はっきり言ってわけわかめ。
(信じている人がいたらごめんね?)

様々なバイアスに気を付けて

金融市場に限らず勝負の世界では負けている人がいる反面、勝っている人もいないと辻褄が合わないよね。

優勝校だけが注目されがち

例えばテクニカルで爆勝ちしてる人といえばテスタさん。

【テスタ】ファンダ無視して移動平均線だけで億る【テスタ切り抜き/テクニカル/ゴールデンクロス】 - YouTube

上記の本や動画には成功の秘訣として独自の手法だったり性格だったりと実に様々なことが紹介されているけど、その裏で資金を溶かして退場していった人達については一切触れられていないから、成功した人だけ注目するのは自ら生存バイアスにかかろうとしていると思うんだよね。
同じように稼げる自信はどこから来るの?
何億も稼いだのは確かだけど、アドバイスを真に受けるんじゃなくて、あくまで参考程度に聞いておこう。
生存バイアス|グロービス経営大学院 創造と変革のMBA (globis.ac.jp)

ちなみに彼の資産推移は次のようになってます。

少し古いデータだけどすごいよね。
ねぇ、ちょっとぐらい恵んでよ?なんて思いながら眺めていると疑問に思うところが。
100万を200万にするのは簡単だけど1億を2億にするのは難しい。彼は基本日本株以外触っていないので日経平均と比べてみよう。

日本株は金融緩和が本格的に行われてから息を吹き返していると言えるね。アベノミクスが始まった2013年以降えぐいスピードで増えてるけど、本当に実力で増やしたの?と感じるのは僕だけ!?
まぁいいや、これについては別に記事にするつもり。

結論

人には人のスタイルがあると思うけど、今までの話をまとめると「直感でポチ!は危ないから気を付けなはれや」ということ。
俗に言うダマシに巻き込まれてはいられないからね。
仮に今までなら何とかなったとしても、今まで使えたからこれからも使えると判断するべきではないと思うよ。

コンピューターと同じ土俵で戦っても歯が立たないなら、コンピューターが苦手とする将来予測に力を入れるべきだと思います。
めちゃくちゃ難しいし面倒くさいけど。

最後に、世界三大投資家の一人であるジム・ロジャーズは次のように述べています。

勉強しなければ成功しないでしょう。
自分のお金を投資しようとするのに、生半可なことでは話になりません。

ねぇ、不労所得なんて言葉作ったの誰?

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