バイオ銘柄の分類(新薬開発と流れ)
バイオ銘柄の醍醐味である新薬開発について。薬は大まかにわけると、
①新薬候補となる活性をもった新規化合物(ヒット化合物)
②ヒット化合物が生体内で有効性を確認された化合物(リード化合物)
③phase1(健康なヒトでの安全性の検証)
④phase2(対象とする疾患罹患者での安全性・有効性・投与方法の検証)
⑤phase3(phase2の大規模版、既に上市している薬と比較し有効性があるかの検証)
の過程を経て上市します。医療政策などの問題も合わさり、⑤をクリアしたからといって必ずしも上市できるわけではありません。ちなみにパイプラインってなんなんだよって話ですが、バイオ企業が開発を進めている薬のことで大事な商売道具のことです。基本的にはバイオベンチャーは自社での販売網を有していないところが多いため導出や提携を必要とします。パイプラインの価値を最大限に高めるためには①から⑤へとステップをすすめていく必要があるのですが、進めるほどに費用を要し、また失敗の確率も上昇します。キャンバス様のマネジメントブログに一般的な成功確率について記載があったのでご参考ください。
ここで大事なことはパイプラインの価値というのは「全てのパイプラインが均等ではないということ」たくさん売れる薬はパイプラインの価値が高く、売れない薬は低いです。ではパイプラインの評価をどのように行うかというと、まず対象とする疾患での既に上市している薬の売上げからどの程度シェアを取れるかを考えて売上げ見込みをたてます。その上で特許期間を加味し、進捗段階に応じて成功確率を掛け合わせたものがパイプラインの価値になっていきます。アンメットメディカルニーズとして要求されるくすりが最近のトレンドです。また、既存のブロックバスターと重複するような対象疾患の方が価値は高いです(一方で競合が多いので他剤と比較するphase3で失敗する確率も高いです)あくまでも治験成功確率は一般論なので、メドレックス 4586、のような既存薬をベースとした投与経路を変えてphase1において血中濃度の有効性を示せた薬剤については治験成功確率が高い状態にあるといえます。また、phase2で成功したけどphase3で失敗する場合もあります。その理由としては本来大規模に行うことによって統計学的な誤差を減らし有意差を出しやすくなるのですが、多施設での実施となるので対象となるため、良くも悪くもより公平性が増すことで、1施設で実施した際には、患者のばらつきによって「偶然に」でてしまった有効性が「実際の」結果となり有意差が得られなくなることがあります。ですので治験プロトコールを把握しておくことはとても大事になります。そして開発資金はどこからでるかというと、導出・提携を行っていれば共同もしくは大手からでてきますが、自前の場合は全て費用を工面する必要があります。その場合、借り入れは既に赤字状態のバイオには難しく、上場もしくは増資によって開発資金を工面していきます。ですからバイオの株価はなかなか上昇が難しく沼といわれている由縁になります。また、継続なんちゃらになっているバイオも多いため機関投資家の投資対象とはなり難く、個人の信用買いが多いのも拍車をかけます。ですのでわたしの考え方としてはパイプラインが重大な局面(治験結果の公表や導出が近いと推測される時期)を把握した上でイベントトレイダーとしてINすることが適切なのではないかなと考えています。時価総額を考えて、パイプラインとのギャップが多い銘柄がその対象です。それに加えて、増資引き受け先がどこか、どういった手法なのかも大事になります。たとえば固定の場合は一定の株価で新株予約権が行使されるので、引き受け先としては行使しつつその株価を割らない限りはどんどん行使を進めていきます。会社側も株価が上がったところで実入りする現金が増えるわけではないので特に何らかの株価対策(提携・導出等をすすめていく)を施す意欲も低下します。ワラントは下限行使価格が設定されており、その下限行使価格を割るまでは固定と同じなのですが、株価が上がったほうが会社側は行使価格が上がるでうれしいですし、増資引き受け側としては低い株価で行使して、高い株価で売った方が利益はでるので双方とも最終的に株価が上がった方がうれしい手法になります。当然ながらこの新株は行使し市場に売られるため、しこりとして考えておいた方が良いです。なので、行使残りや次の行使がいつかを見定める必要もあります。その方法としては「過去に増資をしたタイミングでの現金残高と現在の現金残高と来期予想を加味した上で、現金残高から増資タイミングの推測を行う方法、仕上げ(導出・治験結果)の前に新規パイプラインの開発などのための資金が必要で、仕上げによって株価をあげることが期待されるタイミング」などでの方法があげられます。今回、それらの方法に加え、新株予約権の買取からの新規割り当て先による増資が、ナノキャリア 4571、メドレックス 4586、転換型社債を残した状態で新規割当先の発表を行ったシンバイオ 4582、といった新しいパターンがでてきたため増資のタイミングの予測がより困難になってきました。当然ながら十分な開発資金のある状態ではパイプラインをすすめていくのが中心となるため、急いで提携・導出をするのではなくよりよい条件をだすための交渉を進めていく形になるので、特段IRが頻回に出るといったことはなくなると考えられます(例外は多数あります)。
※このIRのタイミングとかは推測ですし、どうやったら会社も引き受け先もwin-winになるか考えた場合のものですので実際にそうなるという補償は一切ありません。
次は2018年5月17日に主要評価項目を達成できなかったブライトパスバイオ(旧グリーンペプタイド)4594を踏まえたうえでイベントトレードについて触れていきたいと思います。