【漫画レビュー?】刃牙シリーズの今までとこれから
※ネタバレ多数、知ってる人向け
■刃牙シリーズとは
・週刊少年チャンピオンで91年より連載中の格闘漫画。知ってる人には説明不要、読んだことが無い人でも何となくこの癖のある絵柄と筋肉描写を見たことのある人は多いだろう。
・作者の板垣恵介氏は本作品群をギャグマンガと呼ばれることにもそれほど抵抗はないらしい。
・本エントリでは各シリーズの内容紹介というよりも本作品そのものとメタ的な意味での今後をゆるーく論じたい。
■各シリーズの役割
◆第1シリーズ:グラップラー刃牙
本作は大きく分けて三部構成となっており、
・地下闘技場編
主人公:範馬刃牙や空手道神心会総帥:愚地独歩、父:範馬勇次郎といった主要キャラの紹介的側面が強いエピソード。
・幼年編
刃牙と父勇次郎の確執を決定的なものとした事件を描く。喧嘩師:花山薫、超軍人:ガイアなどもこの章で登場。
・最大トーナメント編
刃牙を含めた大勢が参加するトーナメント編だが、ジョーカーキャラたる勇次郎は不参加。この章でいわゆる「刃牙のキャラ」と認知される人気キャラはだいたい出揃い、強者たちの面々が固定され始める。
・トーナメントには出たもののその後二度と出て来ないキャラも多数輩出した。
例:バランスのいい山本選手、野生児ズール、天内悠など
・本エントリではこれらのレギュラーキャラ界隈を新シリーズにちなんで「刃牙らへん」と呼称することにする(重要)。
・メタ的にまとめると第一シリーズは「主要キャラクター、主人公と父のバックグラウンドを紹介するまでのシリーズ」と言えるだろう。
◆第2シリーズ:バキ
本作はうーん、三部構成で良いんかなこれ。
・死刑囚編
各国から脱獄してきた超死刑囚たちを刃牙らへんが迎え撃つ。第一シリーズに比べて武器や毒の使用など全体的にえげつない戦い方をする敵が多いのが特徴。
・大雷台祭編
前述のように毒による攻撃を受け瀕死となった刃牙を回復させるため(?)烈海王は中国で100年に一度行われる大雷台祭に彼を連れ出す。珍しくチーム戦に参加する勇次郎の姿が描かれ、見応えがある。
・マホメド・アライJr編
伝説のボクサー:マホメド・アライの息子vs復活した刃牙。前二編に比べると短く、内容については触れるまい。
・すでにフォーマットはこの第2シリーズで完成しており、前述のように「強そうな新キャラを刃牙らへんが迎撃する」という内容。
◆第3シリーズ:範馬刃牙
・本作は連載前より「父と子の親子喧嘩に決着」と銘打たれており、作品としては最終章の位置づけであることが殊更強調されつつ連載開始した。
・あまり何部構成という感じではないが、脇道に逸れつつも基本的には刃牙vs今までの刃牙らへんのキャラ、若干の新キャラ追加などを挟みつつ対勇次郎戦への修行→勇次郎戦を迎えるという展開。
・その新キャラ追加には番外編として単行本1巻分を使い、1億9000万年前に恐竜と生身で戦って生活していた原人ピクルの復活を描く。
・大きな流れとしては第2シリーズと変わらないのだが、父との親子喧嘩に一応の決着がつき、このシリーズの終了をもって本作品は目的と方向性を見失う。
◆第4シリーズ:刃牙道
・「原人が復活出来るんだからクローン技術で宮本武蔵も復活できるだろ」というご老公の暴走によって始まる第4シリーズ。ピクルは塩漬けで凍っていたという説明なのでまだしも、こちらは倫理的にも完全にアウトである。何でもアリだな、もう…
・内容としてはいつもの刃牙らへんvs武蔵…なのだが。今シリーズで起きた重大な出来事としては「烈海王の死亡」であろう。
・最終的に武蔵は魂だけを抜かれるという形で決着するのだが、その抜殻を囲んでの徳川寒子の独白はまさに作品全体への反省会と言って差し支えまい。
「獰猛な獣を街に放てばどうなるのか、想像力が足りなかった」
「でもその力を、剣を試してみたかった」
思い付きで常在戦場、殺人が日常みたいな危ないキャラを出しちゃダメってことだな。
・ちなみにピクル登場時に烈は片足を、克巳は片腕を欠損している。武蔵を登場させた結果烈は死亡し、メタ的に見ると作品世界に不可逆の傷跡を残すこととなった。
◆第5シリーズ:バキ道
・今度はクローンや氷漬けからの復活でもなく、現代に生活する古代相撲の使い手野見宿禰vs刃牙らへん。
・途中当麻蹴速とかいう足技使いも出て来たが、勇次郎からは逃亡し、独歩には瞬殺された。
・ちなみにその後の宿禰vs刃牙の最終決戦も脳震盪一撃で決着。ネットでよく言われてるけど刃牙のバトルが瞬殺ばかりで全然面白くないよずっと!
・特に何があるというわけでもなく古代相撲と古代足技の人が負けて終わりましたというシリーズ。
■まとめ
◆戦う日常もの
・要するにこのエントリではこれが最も言いたいことなのだが、第3シリーズ終了時点で作品世界全体に倒すべき最終敵、果たすべき最終目的というものが消失している。
・そこで新キャラ登場、刃牙らへんが迎撃というスタイルが延々と続いているわけだが、強さがインフレしているかと言われればそうでもなく、相変わらず勇次郎と刃牙は最強であり、相性によっては強キャラが負けることもある。
・長らくこの状態に陥っている本作品を私は「戦う日常もの」と表現しているのだが、ドラえもんやちびまる子ちゃん等に代表される一話もしくは数話完結で町で起きた出来事におなじみのキャラ達が解決に当たる…という日常ものに雰囲気が近いのではないかとここのところずっと思っていた。
・そして前述のように満を持して発表された新シリーズのタイトルがなんと「刃牙らへん」。もはや「あたしンち」みたいなノリだな…
・さて以後の刃牙シリーズは日常ものを脱するのかこれまで通りの感じで続いていくのか、今後も目が離せない。
・ちなみにスピンオフ系はすべて追っているわけではないのだがガチの日常ものとして「ガイアとシコルスキー」というシリーズが存在する。
ダヴァイッッ(おわり)
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