外出自粛なので未視聴だったガンダムAGEを見た

※ネタバレあり・視聴済みの人向け

ガンダムシリーズは結構見てるけど放送前・放送中の評判の悪さからAGEは未視聴状態だった。ので、2020年4月下旬現在、世は緊急事態宣言下で外出自粛要請の状態を活かして数日で全話を視聴したので適当にレビューを。

■全体評価
・10点満点で6点。

■あらすじ
・3部(4部)構成に分かれており、100年に渡るUE(正式名称はヴェイガン、火星人類)vs地球人類の戦争を描く。

1部:フリットの世代
2部:子・アセムの世代
3部:孫・キオの世代
4部:三者が絡み合う最終章
となっている。4部は実質的に3部の続きなので、このノートではまとめて「3部」と記述する。

■映像
個人的な印象として、
・1部は地味
・2部は良く動いていた
・3部は従来のガンダムと同様、MSとMAとファンネルが入り混じるゴチャゴチャのイメージ。

■音楽
・7割くらいフルオーケストラ。
・残りの3割に4つ打ち系(シューティングゲームのような)
・ループ系+エレキギターを用いたロック風
・ループ系+オーケストラ
といった印象。総じてクオリティは高く物語を盛り上げる。

■キャラクター
この作品はとにかくキャラ付けに問題があった、と個人的に思うためここからは具体的に良く掘り下げられていたキャラ、そうでないキャラの役割とその理由などを挙げてゆく。

--------------------------------------------------------------------------------------
◆主人公勢

フリット・アスノ(1部~)
3世代に渡る登場で最も掘り下げられたキャラ。1部以外では主人公ではないためやや薄口にはなるが、十分にキャラ立ちしていると言えよう。
1部では母をUE(ヴェイガン)の攻撃で失い、淡い恋心を抱いていた同世代の女の子・ユリンはヴェイガンの実験台として殺され、彼らへの怒りと憎しみを決定的に深めた。

2部では連邦軍の司令官となり、アセムの父として口数は少ないながらも我が子を良くサポートした。

3部では定年退役しており、完全に強硬姿勢に陥った老害として描写されている(連邦内でも訝しげな表情をする人多数)。物語終了直前に子や孫に諭される形で殲滅路線から考えを改めた。短いエピローグでは死後銅像が建てられたらしく、「救世主になる」という彼の目標はある意味達成されたのかもしれない。

アセム・アスノ(2部~)
2部の主人公。物語のキーキャラとなるゼハート・ガレットと学生時代からライバルであるという点でキャラの役割付けは十分な他、Xラウンダー能力を持っていない努力の人という点も好印象。
3部では行方不明の間に何故か海賊王になってしまったらしく、変なデザインの玉座から息子にビデオメッセージを送信したりとサポートに徹した。AGE2を改造した海賊型の変なMSを操り、自分はスーパーパイロットだなどというパワーワードを発言してしまう。個人的にはツッコミどころも含めて最もキャラ立ちしていて好きなキャラかもしれない。

キオ・アスノ(3部)
3部の主人公。典型的な子供の理屈と感情で動くキャラ。「戦いはいけない」「話し合うべき」「仲間が危ない」などの青い正論を振りかざし幾度となく命令違反を繰り返す。が、じいちゃんの権力により重い処分を受けることはほぼ無い。その甘さからヴェイガンにガンダムごと鹵獲されてしまうが、結果として敵総帥のイゼルカントと対話し、ヴェイガンの現状を知る機会を得る。怒りで暴走することはあれど融和路線を最後まで崩すことは無く、父と共に祖父の強硬路線を断念させることに成功した。

--------------------------------------------------------------------------------------
◆ヒロイン勢

エミリー・アモンド(1部~)
ロマリー・ストーン(2部~)
ウェンディ・ハーツ(3部)

3部それぞれに幼馴染の女の子キャラクターが存在し、主人公勢と結婚し子孫を設けることになる(キオとウェンディは描写が無いため不明)。

全員キャラがしっかり描写されているとは言い難いが、特に3部のウェンディはまさに空気、登場回数もセリフも非常に少ない。「戦艦内で子供の世話をするキャラ」というフラウやファのオマージュ役の為だけに作られたキャラという印象。
キオの母に当たるロマリーはゼハートのことが少し気になっていた、という描写があるため、アセムとの三角関係を思わせる点で十分な役割を担っていたと言えよう。その後三角関係の描写はないが。

--------------------------------------------------------------------------------------
◆キーキャラクター

ユリン・ルシェル(1部)
ララァやフォウのポジション。高いXラウンダー能力を利用されデシルに兵器として扱われ戦死したことでフリットの思想や精神に深い影を落とす。
設定的には十分だが登場回数はやや少なく、惜しい印象。

デシル・ガレット(1部~2部)
高いXラウンダー能力を持つヴェイガンの少年。精神に異常を来たしている印象で、遊び感覚で笑いながら人命を奪うなどキャラ付けは十分。だが、2部以降は完全に弟のゼハートに能力でも描写でも食われてしまい、地味な最期を迎えた。後述のゼラというキャラのシルエットが初めて出た時、「これデシルかな?」と思ったがそんなことは無かった。

ゼハート・ガレット(2部~3部)
シャアのポジション。高いXラウンダー能力から若くしてヴェイガンの総司令に任命され、機体制御のため搭乗中は常に仮面を装着するようになる。
アセムの学校に同級生・良きライバルとして潜入していた、という導入はキャラ付けとしてはほぼ完璧で、物語の最後まで見事にライバルキャラとしての役割を果たした。惜しむらくは戦う動機が大義のためという点しかなく、人間臭さがもう一歩感じられなかったことだろうか。非情になりきれずアセムを殺せなかったり等の描写はあったのだが…。

--------------------------------------------------------------------------------------
◆クルーなどサブキャラ

グルーデック・エイノア(1部~2部)
月は出ているかとか唐突に言い出しそうな見た目の艦長。冷徹な態度に加え物語序盤から怪しげな行動が多くその目的は伏せられていたが、家族をUE(ヴェイガン)に奪われた他、連邦の腐敗を正したいというごくごく真っ当な理由で動いていた正義の人。1部の最後では家族の仇であるギーラを射殺するが、その現場をギーラの息子に目撃されてしまう。
2部では軍法会議でクルーをかばった結果投獄されていたらしく、出所後にフリットに重要な情報を横流ししようとするも因果応報、ギーラの息子に裏路地で射殺される。ちなみにギーラの息子はヴェイガン側からは用済みという事で即始末された。

ウルフ・エニアクル(1部~2部)
頼れる兄貴キャラ。年上の上官パイロットというキャラは従来のガンダムにも散見されるが、大抵は主人公の方がパイロット適正が高いなどの理由であまり頼りにならない場合が多い。カッコいい機体が配備されることも少ない。
そんな中でウルフさんは結構強く、若者の面倒見も良く、ガンダムとは違う形でそれなりにスタイリッシュな機体に搭乗するという珍しいキャラ。前述のアセムの項で出た「スーパーパイロット」というパワーワードも元は彼が発言したもの。言葉の響きはともかく「Xラウンダー能力なんか無くたってお前はお前らしく強くなれる」という非常に大事な内容をアセムに伝えている。残念ながら2部で戦死。

--------------------------------------------------------------------------------------
◆それなりに重要な役割を持ちながら描写不足だった人々
主にというか全部3部以降のキャラが並ぶ。

シャナルア・マレン(3部)
マチルダさんとミハルを混ぜたようなポジション。妹の治療費のためにヴェイガン側のスパイとなり、連邦を裏切る。
登場話数も描写も最低限で、「連邦に戻ってもスパイ容疑で死刑になるだけだ!私は妹のために死ぬわけにはいかない!」と啖呵を切った直後にキオをかばって死亡。作劇上のひどい矛盾。

ジラード・スプリガン(3部)
強いて言うならばロザミア・バダムのポジションだろうか。連邦を裏切ってヴェイガン側についた女性パイロット。なんの説明も無く突然出てきて何故連邦を裏切ったのかという過去が1話かけて語られる。Xラウンダー能力でキオ達を圧倒、サイコフレームの共振のような強烈な現象を起こす。キオは戦場で初めて出会っただけの彼女を何故か必死で救おうとする。キオとの関係性の描写がシャナルア以下である、というか皆無のため、視聴者からすれば誰こいつである。

フラム・ナラ(3部)
サラ・ザビアロフのポジション。ツインテールで特徴的な見た目をしており、重要キャラの雰囲気を醸し出す。が、ゼハートに心酔していくまでの描写がいまいち希薄であり、何故こうなったのかという印象が拭えない。そしてやはりキオとの絡みがまったく無い。ジラードにあの役割をやらせるならキオとこの子に接点を作ってXラウンダー能力の暴走という作劇にした方が良かったのでは?
「そんなにゼハートに気に入られたいのか!」というセリフは「そんなにシロッコに抱かれたいのか!」のオマージュであろう。マイルドになってはいるが。

セリック・アビス(3部)
3部の先輩キャラ。メガネというかサングラス?がトレードマーク。それなりに強く有能イケメンで、ルナベース攻略戦ではブラフも交えた交渉で有能さを見せつけた。だがキオとの絡みはあまりなく、ウルフさんのようなキャラ立ちまでには至らなかった。軍人としての覚悟や良識も持ち合わせており、最後は自分ごとフォトンブラスターを撃てと母艦に伝えて戦死した。

ディーン・アノン/ルゥ・アノン(3部)
キオに火星の現状を伝えるための役割を持った民間人の兄妹。
ルゥはキオに淡い恋心を抱かせ、彼の思想に影響を与える。が、彼女は2話程度で病死してしまう。
ディーンは物語終盤の最終決戦で兵隊として参戦することに。キオと戦いながら激しい論戦を繰り広げ、「それでも誰にも死んで欲しくない!」という言葉を引き出す。二人ともに重要なキャラだが、割かれた時間は短い。

ゼラ・ギンス(3部)
実質的ラスボス。本格的に出るのは最終話。ヴェイガン総帥イゼルカントのクローンらしく、最高のXラウンダー能力を持ち、感情も無く機械のように戦闘を行う殺人マシン。
こいつのシルエット登場は44話、「デシルか!?」と思ったら違った。つまり、何の確執も伏線もない人型の秘密兵器である。そこにドラマを作るのは無理がある。

フリットの強硬姿勢を融和へ、という描写をするならこいつは出すべきではなかった。改造デシルとフリットを対峙させ、キオが殺さずに救う…とかの展開が良かったのではないかと。

--------------------------------------------------------------------------------------
◆中途半端に描写され、居てもいなくても良かったかもしれない人々

マジシャンズ8(2部)
ヴェイガンのXラウンダー部隊。その人数の多さと出番の少なさから当然視聴者は名前と顔が一致しない。2部終盤でガンガン死んでゆく。あんなにちょっとしかでてこないならプルシリーズみたいに全部クローンで良かったのでは。

オブライト・ローレイン/レミ・ルース(2部、オブライトは3部にも登場)
男性パイロットと女性エンジニア。途中若干いい仲になる描写とレミの戦死シーンがある。オブライトのトレードマークはブロッコリーみたいな赤髪なのだが、ヘルメットをかぶっていると誰だか分からないため、戦場での影は薄かった。

ナトーラ・エイナス(3部)
3部のディーヴァ艦長。髪の色などから1部2部の艦長ミレースの血縁かと思ったがそんなことは無かった。優柔不断で自信のない性格なのに艦長に任命され、だんだんと成長してゆく様を描写されていて優遇されているとは思うが、それまでの伏線や主人公勢との関係性が薄いため、やはり誰だっけこいつとなる。あとは、セリック兄貴に少しナンパされていた。

--------------------------------------------------------------------------------------
◆モブとして登場し、その役割を全うした人々

ディケ・ガンヘイル(1部~)/アリーサ・ガンヘイル(2部)/ウットビット・ガンヘイル(3部)
エンジニア属。MSのメンテナンスを請け負う形で常にアスノ家を陰からサポートした。子世代のアリーサだけは唯一パイロットとしてMSに搭乗。
孫世代のウットビットの描写にはほぼ1話分が使われたが、親や祖父世代との描写はなく彼の子供としての個人的な意見の描写であった。

--------------------------------------------------------------------------------------

■総評
・1部は新作に没入してゆく過程であり、導入、様子見や小手調べという印象。上手に出来ていたかと言えば疑問が残るが、「強いられているんだ」等の迷言は遺されている。

・続く2部は成長した1部のキャラクタのその後などが描写されており、新キャラも立っていて普通に面白かった。

・3部以降は物語をまとめに入らなければならないのに、また主人公をゼロから描写、ドラマを作るために視聴者側には特に思い入れの無いキャラが重要な悲劇などの役割を持たされている。逆に視聴者にとって思い入れのあるキャラの大半は死亡しているか高齢や作劇上の都合などで現場を退いている。


・思うにアニメ作品というものは全体の総話数≒映像の長さが決まっていて、それがそのまま作品のリソースになる。キャラクターを掘り下げるために使えるリソースに限りがある以上、3世代を描くという作品の性格上最も長く登場・描写出来るのはフリットであり、当然キオ世代に割ける時間は少なくなる。

・結論としては、3部以降で初登場したキャラクターは掘り下げ不足、魅力に欠けるため感情移入がしづらい。それがそのまま「火星と地球の対立」「その根本的な理由」といったせっかく作りこまれている全体設定を薄っぺらい印象にさせており、この作品の全体評価に繋がったのではないかと。

3世代の戦記という壮大・長大な物語を描写するには4クールでは制作側の実力が足りなかったのだ。
というのが私の意見です。おわり。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?