ゲーム紹介#01 悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲

Twitterのハッシュタグ「#いいねされた数だけハマったゲームを紹介する見た人全員やる」をつけてうっかり呟いてしまったところ3件ほどいいねが付いてしまったので…。

■概要
・FC時代から綿々と続く悪魔城ドラキュラシリーズのPS1作品。そしてエポックメイキングとなった作品。

・ジャンルとしてはシリーズ初のアクションRPGになるが、アクションとRPGの割合は7:3くらいである。だがこの3割部分が非常に重要。

・海外での評価も非常に高く、本作のような探索型ARPGを「メトロイドヴァニア」と呼称する文化すら生み出した偉大な作品。※1

■全体評価
・10点満点中10点、名作中の名作!神というか悪魔が降りている。

・後続シリーズと比べても遜色無いというか本作が最高傑作というきらいもある。軽く5周はプレイしたね。バグも含めて楽しく遊べる。

■あらすじ
・舞台は18世紀、時系列的には「血の輪廻」の5年後。100年に一度復活するというドラキュラ伯爵がなんか5年で復活しちゃったっぽいので伯爵の息子に当たるアルカードが悪魔城へ赴く…という導入。※2

・主人公アルカードはFCの悪魔城伝説にも登場していたが、当時のいかつい見た目から耽美的で美しい感じのキャラデザインになった(後述)。ちなみにALUCARDはDRACULAの逆読みである。

■映像
・PS1の世代はフルポリゴンの作品が巷に跋扈していた…というよりメインストリームで、ドット絵の作品がマイノリティになっていった時代でもある。

・そんな中本作のグラフィックの大部分は美麗なドットで描かれており、パーツごとの拡大縮小や回転などをフル活用した迫力あるアニメーション、魔法や爆発、出血などのエフェクトも非常に美しく目を引く。必要に応じてポリゴンも使用するなどバランス感覚を含め最高と断言できる内容。

・キャラデザインやイラストは従来の欧米的というか骨太なゴツいデザインから一新、小島文美氏による耽美的かつ幻想的で美しいイメージのものに刷新された。

・むしろこの耽美なイメージがあまりにもハマり過ぎていて、過去のデザインの方が良かったというような声はほとんど聞かない。※3

■サウンド
・この作品のサウンドを語るにあたってはいわゆるゲーム音源の仕様に言及する必要がある。

・PS1の仕様は詳しくないのであまり説明できないのだが、「音楽ツクールかなでーる2」などを触ってみた感じだとおそらく任意の波形サンプリング音源24ボイス、それらをMIDIなりMMLなりで鳴らせる、といった感じだろう。その他おそらく会話の音声や主題歌などに使えるオーディオストリーム用chがいくつかある、といった感じだろうか。
では本題。

・この作品、どうも前述の波形サンプリング音源部をほぼ使っていないと思われる。というのも少なくともBGM部分は外部で制作した音源をそのままストリームchで流しているっぽく、同世代の作品とは音源のレベルがまったく比較にならない水準。

・某大作RPGなどですらSC-88Proっぽい音が鳴っていたのに対し、本作では明らかに当時の業務用サンプラーレベルのサウンドが堂々と鳴っている。

・ストリームの弱点はMIDI等のプログラムと違って延々と繋ぎ目無くループ再生する、というような運用が出来ないことなのだが、この作品ではどの楽曲もループ再生用に曲が一旦終了もしくは停止するなどのブレイク部が巧みに設けられており、違和感なくBGMとして機能している。凄まじいこだわりだ。

・楽曲の内容自体に関して書き始めるとキリがないので、好きな曲をいくつか。
黄金の舞曲(錬金研究棟)
木彫パルティータ(蔵書庫)
失われた彩画(禁書保管庫/天井水脈)
焉道(焉道/洞窟)

・これらに限らずどの曲も作品の雰囲気と最高にマッチしており、サントラは何度聞いたかわからないし何曲かは研究のため耳コピしたほど。本当に素晴らしい。EDテーマが英語のボーカル曲なのも97年としては斬新だったであろう。

・大事なことなのでもう一度書くが、同世代の作品と比較して異次元レベルの音源・楽曲群。もはやオーパーツ的ですらある。

■システム
・前述の通り探索型ARPGである。この探索部分とRPG部分という点が肝で、本作を世界的なタイトルに至らしめた要因でもある。

・基本的に悪魔城シリーズは(やや理不尽に)難易度が高く、幼い僕にはちと敷居の高い作品というイメージが強かった。なので知人が本作を購入したと聞いた時も「でも、お難しいんでしょう?」程度にしか思わなかった。しかし。

◆RPG要素
・本作ではレベル制の導入、武器防具など装備の変更(しかも今作の主人公はそもそも鞭使いではない)魔法や魔導器・使い魔といった多彩な補助要素がゲームの進行を大いに助けてくれるようになり、アクションが苦手な人でもレベル上げをすることで進められる、上級者は縛ることで手ごわいバランスを楽しめる、という自由度を持たせることに成功している。

◆探索要素
・舞台となる悪魔城は一本道のステージクリア制ではなく、現代で言う箱庭タイプのようなデザインとなった。

・例えば二段ジャンプを習得したことで以前は通れなかった場所に行けるようになる、というようなこともあるため必要に応じてエントランスまで戻ったりすることも出来る。

・これはレベル上げとは別の角度で操作キャラの成長を感じることが出来る部分で、「あの通路気になってたんだよな」という伏線を回収・解決することでカタルシスを得られるシステムである。

◆複数のプレイアブルキャラクター
・クリア後は別キャラでの悪魔城攻略が可能になる。そちらはアルカードとは全く異なった性能のキャラである上にレベルや装備などの要素が無い(HPやMPは増える)ため、従来の作品に近いアクション性を楽しむことが出来る。このシステムは後続作品でも綿々と受け継がれている。

・基本的にはオマケなので、ストーリー展開が違うとかそんなことは無い。というかセリフ類は無い。


■総評
・「探索型アクション」というジャンルは古くは任天堂のメトロイドの時代(奇しくもディスクシステム黎明期、悪魔城ドラキュラ第一作と同時期)から存在するシステムで、マイナーではあるがサンソフトのへべれけなども同種の作品と言えよう。

・そこに経験値によるレベル制や取得した装備の変更などのRPG要素を組み込んだことがこの作品の決定的に斬新な点であり、前述の通り欧米圏ではメトロイドヴァニアと呼ばれるジャンルの確立に至った。

・バグは多いが革新的な作品であるにも関わらず、粗削りな印象も無くサウンドもグラフィックも超高水準で融合しており非常に安定して楽しく遊べるという奇跡的な作品。

■余談
・5周くらいはやってると思うのだが本作を周回するときに思うのは一般的なRPGを再プレイする時のような「もう一度あの冒険を!」という印象ではない。

・悪魔城は建物であって、伯爵の居住地である。冒険をするというよりアトラクションいっぱいの伯爵家を訪ねに行くような印象というか。
「オイーッス、久しぶりに遊びに来たぜー」というニュアンス。分かるかなぁw
おわり。


※1:あまりこの「メトロイドヴァニア」という言葉が好きではない。どちらも他社同士が商標権を保有しているであろう作品名の組み合わせで、クリエイティブさがないというか。

※2:「悪魔城すぺしゃる ぼくドラキュラくん」(1990年・FC)という作品がある。主人公はドラキュラ伯爵の息子であり本名は不明なのだが、その銀髪の出で立ちや使用する魔法(コウモリ変化やヘルファイアなど)、死神(DEATH)が召使だったりとアルカードとの共通点は多い。

※3:MALICE MIZERというバンドは「月下の夜想曲」というタイトルの楽曲を98年に発表している。メンバーであるmana様はゲームラボで連載を持つほどのゲーマーであり、楽曲タイトルの元ネタはこの作品であると考えて間違いないであろう。

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