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世界のトイレ

トイレを作っても使われない現状

私は、先日国際協力シンポジウムに参加してきた。今回はトイレを議題にセッションが行われたわけであるが、とても考え深い背景があったため、記事を書くことにした。トイレは綺麗な方がいいに決まっている。トイレに行きたいけど、公園のトイレに入るのはちょっと、、、と我慢した経験はあるのではないか?

「うんち」って汚い??


子供は「うんち」が好きである。その象徴として、820万部を突破した『うんこドリル』がある。「うんち」という言葉を大人が発するだけで、子供はケラケラ笑う。そして、大人でも、「うんち」を汚いと思ってない人がいると、講師の方がおっしゃった。皆さん思いつくだろうか? それは、認知症になってしまったご老人などだ。実際、老人ホームでは必ず、「うんち」を素手でつかみ、粘土のように遊ぶ老人いるという。この行為にはたくさんの原因が考えられているが、その1つとして、「うんち」は汚い物であるという概念がなくなったというものがある。そもそも、自分たちが食べたものが出てくるだけで、汚い物ではないという人もいる。このように「うんち」に対する考えは色々である。

World Trade Organization ジャック・シムさん


さて、ここから本題に入っていこう。皆さんWTOと聞いたら、World Trade Organizationを思い浮かべるのではないだろうか。実はそのほかにWorld Toilet Organizationというものがある。世界の半分以上42億人以上が劣悪な衛生環境下に置かれ、トイレがない、または、とても使える状態ではないという現状に直面している人もたくさんいる。その支援を行なっているのがWTOを立ち上げたジャック・シムさん。彼はこう話している。

まず大事なことは、誰もが1日6〜8回はトイレに行かなければならない、ということだ。ところが今、世界では24億人もの人々が、満足いく環境のトイレのない生活を送っている。例えば、トイレがない人々は道端や川の中や、外に排便し、その皮の水で洗濯物や洗い物をしたりもする。これは、清潔な水を飲めず、多くの病気を引き起こす原因になり、不衛生な環境、汚れた食品や排泄によって汚染された水が引き起こす下痢などの病気で、毎年の多くの人が死亡しているのだ。

世界の野外排泄 


世界の野外排泄者は9億人いると言われておりその中でも5億人はインド人であるとされている。ここで疑問なのが、インドはものすごい成長をしている国の1つだ。技術面でも、人口の推移でも。2030年には人口は世界1位になり、国内総生産は世界3位になり、日本を越すとされている。そこまでの成長を遂げているのになぜトイレが増えないのだろうか?2014年のインドのトイレの普及率は38.7%. 2018年は89.5%という数字が出された。しかしこれは予算上可能な普及率の数字であり、事実とは大きく違っていた。ここには2つの問題があるそうだ。まず1つ目が中間搾取。予算が出てから、実際に動き始めるまでに多くのお金が仲介する機関に取られてしまうというもの。そして2つ目が差別の問題である。インドではカーストが根強く残っている。

インド カーストによる暴力

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インドには以下の写真のようなカーストがある。その中でもダリットへの扱いはひどい。ダリットはより低い身分と見なされているばかりか、厳密に言えばカースト制度の外にいる者(アウトカースト)たちであり、かつては不可触民と呼ばれていた。
ダリットの総数は現在、推定3億人超。インドのヒンドゥー教社会で、彼らは何世紀にもわたって最下層に位置づけられ、虐げられ続けてきた。犯罪統計によれば、ここへきて、ダリットに対する暴力事件が増え始めている。最近のインドが描き出すストーリーを思えば、驚くべき話かもしれない。この国は多くの面で変化を遂げた。膨大な数の国民が貧困から抜け出し、世界トップクラスの経済大国に変貌し、新しい道路や空港、インフラ設備が各地に出現している。しかし、より貧しい地方部を中心とする多くの場所では、今もカースト制度こそが大きな意味を持つ。サルダールのように抵抗すれば、待ち受けているのは大抵の場合、歯止めのない残虐な暴力だ。
この手の暴力行為が意図しているのは、あるメッセージを送ること。痛い思いをさせることで、インドの旧来の社会秩序を維持しようとしているのだ。
2018年10月後半、14歳のダリットの少女が首を切り落とされる事件が起きた。犯人は上位のカーストの男で、その妻によれば、カーストを理由に被害者の少女を嫌悪していた。5月にはダリットの道路清掃員が縛り上げられて撲殺され、その模様を撮影した動画が拡散した。3月には、ダリットの男性が馬に乗っていたという理由で、より上のカーストに属する複数の男によって殺害された(伝統的に、ダリットは乗馬をしてはならないとされている)。「私が子供の頃は、こうした事件は起きるはずがなかった」。そう話すのは、著名な政治評論家でダリット出身のチャンドラ・バーン・プラサドだ。「私の子供時代には、ダリットは馬に乗ろうとはしなかった。1990年以前、大半のダリットは誰かに仕える身だった。彼らは今、自由の代償を支払っている」と。

インドのカースト制度どトイレの普及率の関係


では、インドのカースト制度と、トイレの普及率に何が関係があるのか。インド中部のマディヤプラデシュ州で、ヒンズー教に基づくカースト最下層の子ども2人が屋外で排便したとして、撲殺される事件が起きた。子供を棒で殴り続けたという。他にも、ダリットは、素手で、トイレの掃除をさせられている。そして現状は少しずつ改善されているものの、根強く残っている認識を変えることは難しく、インドの子供の感情よりもカーストが重視されているのが現状だ。そのため、いくらインドにトイレを作っても全員がそのトイレを使えるというわけではない。そして、トイレを綺麗に保つため、システム作りをしようとするとダリットの仕事を奪うなと反発もあるのが現状である。そのためトイレが少ないなら増やせばいいということでもないのだ。

これらを踏まえて


確かに、インドのように、トイレが増えない原因がその国の文化と繋がりがある場合、それを変えるのはとても難しい一方で、このままでいいとも思わない。そして他の国ではトイレがを設置しても、使用するうちに汚れて、結局野外排泄になってしまう事実や、手を洗う水がない場所、トイレが設置されてないため、女の子の場合生理がきてしまうと学校を休まなくてはならない場合もあるほど世界のトイレの実情は深刻である。そんな中でもトイレを増やす活動をしてる人がいて、少しでも現状を変えようとしている人がいる。生まれた場所、そして生まれた瞬間に決まっている身分などが違うだけでこれだけの生活の差があると考えると、言葉では言い表せない感情になる。1日で何回も行くトイレ。何も気にせず生活できる日がきて欲しい。では、私に今何ができるのか。まずの現状をしっかり理解し背景を知ること。そしてそれを伝えること。そして今回もこのシンポジウムに誘っていただいた方がしているトイレを設置する活動に自分も協力し、どうしたら持続的にそのトイレが使用できるのか考え行動に移していくこと。なぜ、野外排泄がいけないのか、どんな影響があるのか現地の子に伝えることだと思う。汚いトイレと野外だったら、野外の方が嫌な思いをせずにスッキリできると考えてしまう現状を変えるためにも、その仕組みづくりが重要だと感じた。お金を集めてトイレを作って満足するのではなく、その国の状況、そこに住む人に寄り添いながら進めることが1番の解決方法だと感じた。それをしないから、トイレを作っても、使用されていない、もしくは使用されなくなってしまい、お金を無駄にしてしまう。少しずつ私にできることをわたしなりに、進めていこうと思う。


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