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暗闇に溶ける

さて、第2回目。2日目。続ける、ただ続けるというのが目標の僕にとっては、とても都合よくスケジュールが空いていた。6月1日に東京の緊急事態宣言が開けて、2日。映画館や劇場もようやくその縛りから抜けたということで、せっかくなので普段行かないミニシアターでも。ということで新宿はシネマカリテに繰り出した。

見たのは『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』

ジョナサン・プライスとアダム・ドライバーが出演しているという前情報だけ握り締め、久々に地下への階段を降りた。

地下に続く階段は、はっきりとしたカナリアイエローが新しい。いや実際は新しくもなんともないのだと思うが、所謂〝コロナ明け〟の身としては貼られている映画のポスターや綺麗に掃除が行き届いたトイレ、丁寧に応対してくださった優しい声のカウンターのお兄さんですら「新しさ」を感じさせてくれた。

開演を待つ薄闇の中、アダム・ドライバーの最近の出演作について思いを巡らしていた。『パターソン』での朴訥とした佇まいが素敵だったな。スカーレット・ヨハンソンと夫婦役を演じた『ジョジョラビット』はまだ未見だった!ツイッターの僕界隈の人たちの評判がすこぶる良かったので、遠からず見たいなぁ。あ、お茶おいしい。

そんなことをつらつらと考えているうちに、開演のベルが鳴る。

社会派なドキュメンタリータッチの新作のCMが終わり、スクリーンがちょこっと広がる。暗闇が深くなり、ひと席ごとに着席している僕ら観客をスクリーンの向こう側へ誘っていく。

映画監督のトビー(アダム・ドライバー)がドン・キホーテの風車塔をもじったCMを撮影している。自分の撮っているものに満足できず、彼は気分転換に借りたバイク(盗んではいない)で走り出す。昔、彼の卒業制作『ドン・キホーテを殺した男』を撮影した場所が近かったのだ。

「凡庸な作品にしたくなくて、一般の人たちを起用した。」

その村には、かつて彼がドン・キホーテと見初めた靴職人やドゥルシネア姫だと見惚れた酒場の娘がいた場所だった・・・・

と、ここまで書いてみて、やはりいきなり映画の感想を書いていくのは難易度が高かった。書いている側から、アレを忘れてたコレを書かなきゃと色々と思い出す。今日はこれぐらいで勘弁してほしい。

久々に映画館で映画を見た。これから再開されれば劇場にも出向くだろう、演劇畑で育った僕にとっては映像の仕事が多くなったとはいえ、舞台は心にエネルギーをくれる最も大切な場所の一つだ。

暗闇に自分が溶けて、ただスクリーンに向かう意志だけが浮遊している。

物語の優越とか、いろいろな細部を超えて、その感覚が僕を劇場に掻立てるのだと、改めて思った。

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