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『LA フード・ダイアリー』

著者 三浦哲哉

映画研究者の著者がサバティカル(在外研究)で、一年間ロサンゼルスに滞在。
その時に出会った食を通して、国、食、映画文化や多様性。さまざまなことに思いを巡らせた記録である。

フード系の軽いエッセイかと思って読み始めたが、
食を通してロサンゼルスという街のことや、アメリカという国のメンタリティ。民族多様性のあり様や概念としての「故郷」についてなど、
食を通して深く考察された良い一冊でした。


〝食〟を掘るとき、自分もまた掘られている。

中でも個人的に共感したのは、「記憶の襞(ひだ)」という箇所。
人がある時点で得る記憶(ここでは味覚についてだけではない)があるからこそ、それとは違う環境とは違う経験をした時にギャップを感じる、ということである。
外国に長期滞在したあと、日本に帰国した際、味噌や醤油の匂いや味に郷愁を感じるというのが、とてもわかりやすい例えかと思う。
つまりその時に生まれる襞(つまりギャップ)を感じることで、その人はその料理を美味しいとか美味しくないとかの判断をしているという論である。

人の味の記憶をたどり、ギャップが生まれる根本的記憶について掘った時。そこにはたぶん、ある種トラウマ的かもしれないが、自分の原体験を見つめることになる。
味覚というものが、生活や人生と深く根付いているからこその、興味深い論だと思った。

本を読みながら、大学院卒業の直前。ロンドンに一人旅に行った時のことを思い出した。
その時のこと、少し思い返して文章にしてみようかと思う。


ひろむ

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