千歳くんはラムネ瓶のなか 2-あとがき

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チラムネ2巻をご購入いただきましたみなさま、ありがとうございます。裕夢です。
今回は本編でページ数を限界まで使い切ってしまったので、『クラスメイトが使い魔になりまして』(面白いからみんな読んでね!)の作者であり同期受賞者でもある鶴城東先生に倣って、WEB上であとがきを公開させていただきます。


そういえば、Twitterではけっこう市民権を得てきた感じのする「チラムネ」という略称ですが、ネットであまり作品のことを調べない派の方はご存じないのかもしれませんね。
これは1巻のあとがきに登場するH氏が考えたもので、聞いた瞬間に「それだ!」って思いました。ほら、作中でおっぱいおっぱい言ってるし、語感もなんかかわいいなって。
あらためて、『千歳くんはラムネ瓶のなか』はチラムネって略称で呼んでいただけるとうれしいです(ここまできてふと、なにかが頭をよぎる。あれ、これどこで公開するんだっけ……???)。


さて、気を取り直して。
ガガガ文庫の作家ってなんとなくあとがきでうまく笑いをとらなきゃいけない風潮ないですか?(あの先輩とかあの先輩とか、なんでみんなそんなにあとがきに作家の魂かけてるんだ……)
笑いの土俵で勝負しても勝てない&せっかく文字数制限のないWEBなので、たまには少し長くなる真面目な話をしようかと考えました。
というのも、最近Twitterで作家を目指している若い子が、ご家族から「そんなの無理に決まってるんだから夢見てないで勉強しろ」みたいなことを言われたらしいんですよね。
これに関してはいろいろと語りたいことがあって……(そうだ! 僕1巻のあとがきに2巻で自己紹介するって書いてたんだった忘れてた)。

↓ここから簡単な裕夢の自己紹介。読み飛ばし可。――――――――――――――――――――――――――――――
僕自身も大学入学を機に上京してきて、「大学教授を目指そう!」(若いうちから個室もらえるし毎年ぴちぴちのJDがげほんげほん)と大学院に進学しました。だけど研究者は向いてないと断念し、「っぱ編集者だわ」と中堅の出版社に新卒で就職(小学館の編集者はとても待遇がいいので第一志望だったのですが一次であっさり落ちた絶対に許さんゾ)。さらにさらに、たった1年半で「俺、小説家になるぜ」と会社を辞め、フリーランスのライターとしてぷらぷら生きながら書いた作品を投稿したら、ガガガ文庫に拾っていただいたという次第です。
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↑自己紹介ここまで。

なにが言いたかったかというと、僕もあんまり王道な生き方はしてこなかったし、いろんな節目でいろんな人から「そんなの無理」って言われてきたけれど、最後には大学時代からずっと言い続けてきた作家になるという夢も叶えたぞということ(院進学や就職はあくまで現実的な選択)。
それで、いまを生きる若い人たちに「夢を追いかけるということ」について僕の伝えたいことを書き連ねようと思っていたんだけど……ごめんやめた!!!

なぜなら考えているうちに、「これチラムネのネタとして使えるな」と思い始めてしまったからだ!
若人たちの未来よりもチラムネの未来のほうが大事なんや、すまん……すまん。
大人は自分勝手だということだけ覚えて帰ってくれ。
きっといつか作品のなかで語るはず。


というわけで、代わりに「ちゃんと勉強しておかないと大人になってから後悔するよ」という話に移行します。
僕は普段あんまりブログとかを書かないから、せっかくの機会だし、WEBのメリットを駆使してだらだら駄文を垂れ流そうと思います。
多分けっこう長くなる上に中身は皆無だから、忙しい人はここで引き返してくれ。
いったん真面目な謝辞を挟んでおきます。

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2019年6月18日に1巻が発売してから9月末の現在に至るまでに2回も重版をかけていただきました。
好きラノ2019年上半期総合5位、新作2位、ラノオンアワード2019年6月刊での三冠など、何者でもなかった僕の作品がこうした結果を残せたのは、応援してくださっている読者のみなさまのおかげです。心から感謝を。
ドラマCD企画も進行しておりますので、楽しみにお待ちください。
これからもチラムネこと『千歳くんはラムネ瓶のなか』をよろしくお願いいたします。
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さて、勉強の話に戻ろう。
僕は中学生のころから国語(というか現代文)が死ぬほど得意で英語が禿げるほど苦手だった。
「俺は日本人だし海外にも行かないから英語を覚える必然性がない」とかありがちな台詞を吐いていたし、実際そこそこいい歳なのに日本から出たことがない。
だけど僕は生涯で2回だけ、「なんで真面目に英語を勉強しておかなかったんだ」と切実に後悔したことがある。
ここから先も読む気になった若者よ、人生には思わぬ落とし穴が待っているということを知り、こんな大人にならないようぜひ勉学に励んでくれたまえ。


1回目はもう4年ぐらい前のことだ。
フリーランスのライターとしてまだ駆け出しだった僕は、いろんな雑誌からいろんな仕事を引き受けていた。
そのうちのひとつが、登山をほとんど経験したことのない日本人(仮名:今井さん)とフランス人(仮名:サーラ)の女性フォトグラファーといっしょに富士山を登り、その様子を記事にまとめるというものだった。
ちなみに僕も富士山に登ったことはなかったが、ライターとして抜擢された理由まで書くと脱線する上に長くなるのでカット。一応、富士山をガイド的に先導しつつ原稿に落とし込む最低限のスキルはあったということにとどめておく。

簡単にバックグラウンドを説明すると、今井さんが写真の勉強でフランスに留学していたときにできた友人がサーラだ。
留学を終え、日本に戻った今井さんのもとへサーラが遊びに来ることとなった。
サーラが「滞在中に富士山に登ってみたい」と言うので、どうせふたりともフォトグラファーなんだからということでアウトドア系の雑誌に企画が持ち込まれた。
「日本で生まれ育ったフォトグラファーとフランスで生まれ育ったフォトグラファーが、初めての富士山を切り撮る」みたいな感じだ。

繰り返しになるが、僕は英語がしゃべれない(もちろん聞き取れもしない)。
けれど今井さんがサーラとの会話を通訳してくれるということだったのでまぁなんとかなるだろうと思っていたし、事実途中までは3人で和やかに会話をしながら富士山を楽しんでいた。
アクシデントが起こったのは7合目に差し掛かったところ。
今井さんが軽度の高山病を発症してダウンしてしまったのだ(もちろん山小屋に一泊して高度順応してからの挑戦だったが、それでも駄目だった)。
登頂を諦め、山小屋で休むことに決めた今井さん。
ここで僕はサーラに問いかけた。

「どうする? 僕たちだけで頂上を目指すかい?」(今井さん翻訳中)
「せっかくだもの、挑戦したいわ」(今井さん翻訳中)
「わかった、最後まで登ろう」(今井さん翻訳中)

今井さんに見送られながら、僕とサーラは頂上でのご来光を目指して真っ暗な登山道を歩き始めた。
10分、20分、サーラも慣れない土地の慣れない登山で消耗しているのだろう。もちろん、相方の今井さんが倒れたことへの不安だってあるはずだ。
ふたりのあいだには重い沈黙が垂れ込めていた。

――裕夢氏、ここで重大な事実に気づく。
「沈黙もなにも、僕たち共通言語ねぇじゃん!!」

このときの僕の焦りを想像してほしい。
会話ができなければ記事にするために必要なサーラの感想も聞けないし、体調に問題がないかも確認できない。
僕は脳みそをフル回転させ、走馬灯のごとくこれまでの英語学習を振り返り、ひとつのフレーズをひねり出した。
「あ……Are you OK?」
僕の言葉を聞いて、隣を歩いていたサーラがにっこりと微笑んだ。
「OK!」

――通じた! 通じたぞおい! みんないまの聞いたか!? 英会話しちゃったぜヒヤッハー!

この瞬間、僕の脳みそからは「Are you OK」以外の言葉が喪われた。世界が「Are you OK?」で満たされた。
想像してみてほしい。
真っ暗な登山道をぜぇぜぇ登っているとき、背後から5分置きに延々「Are you OK?」と語りかけてくる男を。
富士山にはご来光渋滞というものがあり、日の出前の山頂付近はディズニーランドの人気アトラクションばりに行列ができて、1~2時間ぐらいそこで待たされる。
運の悪いことに、当日はしとしとと細かな雨も降っていてめちゃくちゃ寒かった。
であるというのに、隣の男は満面の笑みで5分置きに言うのだ。
「Are you OK?」
「o,,,OK」

雨が降っていたことから推測できるかと思うが、それだけ待たされたのに山頂付近には分厚い雲が広がり、残念ながらご来光は望めなかった。
それでも男は満面の笑みを崩さず言う。
「Are you OK?」
「o,,,,,,,,,ok」

完璧だ、と当時の僕は思っていた。
相互理解に多くの言葉は必要ない。
「Are you OK?」と「OK」を繰り返せば人類はみんな友達になれる。
いま考えると、「私、メリーさん」ばりの怪異に他ならない。


僕たちは下山し、山小屋で休んでいた今井さんと合流した。
今井さんは「お疲れ様でした」と言いながら、一眼レフカメラの液晶モニターを見せてきた。
そこに表示されていたのは、真っ赤に燃える美しいご来光だった。
雲の下に位置していた7合目からは、ばっちり朝陽を拝むことができていたのだ。

――それでも男は言う。

「Are you OK?」
「,,,,,,,,,,,,,,,NO~~~~~~!!!!!!!!!」

先にも後にも、あれほど感情のこもった「NO」を聞いたことはなかったな。
ご来光が見られなかったことだけではなく、ふたりで行動したすべての時間に対するサーラのNOだったのだと思う。


――長くなったが、これが1回目。
2回目はもちろんraemzさんがイラストレーターを引き受けてくださったいまだ。
カリフォルニア出身のraemzさんは英語を母国語としているが、たゆまぬ素晴らしい努力の結果、日常会話ぐらいは普通に日本語でできる。
ちなみに僕だけでなく担当編集氏も英語はからっきしで、そんな語学力でよくraemzさんに依頼したなよくやったぞと心の底から思っている。
これほど素晴らしいイラストレーターさんがこれまでライトノベルのイラストを担当していなかったのは間違いなく英語話者というハードルに多くの編集者が尻込みしたからだと思うし、「まあなんとかなるでしょ」でそれを飛び越えた担当編集氏には感謝の念しかない。

とはいえ、だ。
raemzさんばかりが頑張って日本語を勉強し、僕や担当編集氏がその努力にあぐらをかいているのはどうにも美しくない。
なにより、raemzさんのイラストに対する感想や感謝をありのままに伝えられないもどかしさにはもううんざりだ。

伝えたい気持ちがある、届けたい想いがある。
だったら僕は一歩踏み出さなければいけない。
――月に手を伸ばせ!!

というわけで、今回は僕の人生で学んできたすべての英語を駆使してraemzさんに感謝を伝えたいと思います。
英語表記は辞書を引くことなく書けた単語、カタカナ表記はつづりに不安のある単語、それ以外の日本語部分は僕の能力を超えた難解な英文です。


raemzさんへ。
今回もベリービューティフルなイラストをthank youでした。
Youのイラストが届くたびに、I’m happy ラッキースマイリー!
とくに今回のイラストはall cute & ビューティフルな上に、キャラクターのハートもリーディングしてくれていて、lookするたびに「GOD,GOD」とダンシングしていました。
今回はいろんなショップでのhappy giftもメニメニでベリー忙しかったと思いますが、all handを抜くことなくエクセレントなイラストをARIGATOU!
Chiramuneがone巻からここまでポピュラーになったのは、エグザクトリーraemzさんのイラストのおかげだとシンクしています。
これからもYOROSHIKUね!

続いて担当エディター氏。
One巻に続き、ロック浅さんのおかげでエクセレントな内容にfinishできたとシンクしています。
エブリデイ忙しそうにしていて、連続オールナイトをこなしていたyouには、meのmost得意なengrishをプレゼントします。

「Are you OK?」

さて、ここまでリーディングしてくれたヤングなピーポーはengrishをスタディーしておくことがどれほどプライスレスかアンダースタンドしていただけただろうか?
とにもかくにも、みんなのフレーフレーにバックプッシュされながらなんとかtwo巻も出すことができて、I’m happy ラッキースマイリー!
スリー巻もdokidokiしながらステイしていてください。

これからもChiramuneとトゥギャザーしようぜ!

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作家。『ラムネの瓶に沈んだビー玉の月』にて第13回小学館ライトノベル大賞優秀賞を受賞。受賞作品は改題し、『千歳くんはラムネ瓶のなか』のタイトルで発売中。福井県出身、東京都在住。ボーダーコリーと暮らしてます。

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コメント1件

お疲れ様です。漢の中の漢、千歳朔を見れて大満足です。

あとがきで結局笑いとってるじゃないですか!

油断してました。happyラッキースマイリーです。

いつか、あとがきで載せなかったことが作中で出てくるの楽しみにしてます。

素敵なお話をありがとうございます。
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