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<タケオキクチコレクションで大人の男たちの熱にうなされた話>ファッション温故知新Vol.6

「ファッション イン ジャパン」展に滑り込む

国立新美術館で行われている「ファッション イン ジャパン」展を見てきました。

戦後から今、そして未来まで日本のファッションの変遷をたどる展覧会は、私の生きてきた場面とかぶる部分も多く、見応えがありました。

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印象に残った展示はいくつもあったのですが、個人的な懐かしさがMAXになったのは、1980年代のお部屋で上映されていた、Takeo Kikuchi 1986s/sコレクションのVTRでした。

TakeoKikuchi1986S/Sコレクションの記憶

閉鎖まじかだった赤坂のクラブ、「MUGEN」で開催されたそのショーは、当時のファッション界と、ストリートとエンタメの「かっこいい」をすべてMIXしたような、あのころの私が羨望の目でみていた、かっこいい大人の男のクリエイターたちが作る、なんともクールで熱い、ショーでした。

菊池武夫さんはお仕事で関わる誰もがタケ先生と慕う、本当にかっこいい大人の男。
男服の基本を知り尽くしたうえで、崩し、味をつけるそのセンスは決して生身の「男」の人間くささから離れることはない、生き様のカッコいい人が着た時に最高に光る服だった。

展示の説明書きに名前も出ていた演出の四方義朗さん。当時の私は叱られるのが怖くて現場でもできるだけ接触しなくて済むように、ひたすら恐れていたけれど、笑
何をするにもカッコよすぎる、佇まい。なんせご著書のタイトルが「KIZA」という、その振り切り方が、気障というよりむしろ熱い。

スタッフとして関わったファッションショーは数えきれない程あるけれど、あのショーは本当に強烈に、記憶に残るものでした。

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展覧会の一室で、思いがけずそのVTRを見たときに、当時の準備期間の光景や、スタイリングを作る時の菊池武夫さんとスタッフのやり取りの場面、その時感じた感情までもが一瞬でよみがえってきました。

記憶に浮かび上がった、あの最高のカオス

あれはファションショーと呼ぶにはちょっと異質のもの。

赤坂「MUGEN」に集まった観客が渡されるのは、興奮という媚薬

ショーと呼ぶにも
エンタメと呼ぶにも
その言葉ではなんか無機質過ぎて足りない気がする、もっと腹の底からグラグラと揺さぶられるような、
そう、やっぱり『興奮』
という感情体験を、観客もクリエイトする側の人もキャストも含め、その場にいる人たちすべてが共有している、としか言いようのないものでした。

まあ、そんなショーなのだから、モデルとして集められたモノホンのストリートキッズ達が、その興奮状態に包まれているバックステージのカオスぶりと言ったら、、、

もう収拾がつかない、、、笑

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普通は、ランウェイ上でノリノリの音楽が流れていようと、モデルさんが楽しそうにくるくる回っていようと、バックステージの雰囲気というのは全く違うもの。

高揚はしているのだけど、一発勝負の本番に臨む緊張感と冷静さが、どちらかというと優っているのが、普通はバックステージの雰囲気というものなのです。

だけどあの時は、表の興奮と熱気がそのまま裏にも、というのか、
裏のカオスと熱がごちゃ混ぜになって表に流れ出ちゃってる感じというのか、
とにかく、裏も表も一体となってショー本番の数分にエネルギーが凝縮された「祭り」の熱みたいなものだったと当時の興奮がよみがえりました。

あんなにめちゃくちゃで
あんなに最高にカッコいい
ファッションショーを体験できたこと、
今でもその熱量と情動を思い出せたことに、何だか嬉しくなりました。

全てはエネルギーという概念を形作るもの

今思えばあのショーの体験もまた、若く未熟な私の、そして熱い先輩たち世代の一つ下で、世間ではしらけ世代と言われ、その通りにしらけまくっていた私の眠っていた感覚を叩き起こし、クリエーションというもの、美しさというものへの概念を形作っていく過程で、重要な経験だったと思います。

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                  Photo by brunetto ziosi on Unsplash

どんなクリエーションでも、伝わるのは、そこに宿るエネルギー

感動も共感も、目に見える服の美しさを伝えることをしているようで、
伝わっているのは、実は、そこにのっているエネルギーなんだな。

私が「美しさ」を感じる時に、目に見えているその「具象」以上に、目には見えないけれど、そこにまとっている何かにとても惹かれてしまうのは、そういうことなんだと思うし。

それは「人の美しさ」も同じ

目に見えている目鼻立ちや体型以上に人に伝わっているのは、目には見えないけど、その人が醸しだしている「美」のエネルギー

デビューしたては、さえない感じの女の子だったアイドルが、整形したわけでもないのになぜか「美人」になっていくのも、見えないエネルギーが変わっていくからなんだな。

そんな、今の私が「美」の本質だと思ってお伝えしていることの原点が、こんな、若いころの現場のカオス体験にもあったのかと、逆発見したようでちょっとびっくりした展覧会の一コマでした。

楽しかった~~❣

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