初めまして。ファッションスタイリストの長田広美です。
公式ホームページ https://estylec.com/
緊急事態宣言が延長されましたね。
これからの時代のファッションのこと、ライフスタイルのこと、人の心と健康とファッションのつながりのこと、私もそれはまぁいろいろと、熱いハートで思い巡らし、オンラインで人と語り、バーチャルで東奔西走し、忙しくてなりません。
自己紹介を少々
私は1980年代から、ラグジュアリーファッションのコレクションに関わってきました。1980年代のパリコレでは、サンローランのショーの楽屋でムッシュ・イブ・サンローランご本人を横目に見ながら、日本で行うショーのための資料としてコレクションをパシャパシャと「カメラ写ルンです」に収めるという、恥知らずな暴挙もしました。来日したカール・ラガーフェルド氏、ソニア・リキエル氏、ランバン時代のアルベール・エルバス氏、マーク・ジェイコブス氏、ジャンバティスタ・バリ氏、Dior HOMMEのキム・ジョーンズ氏らにはショーのスタッフとしてお目にかかる機会をいただきました。
デザイナーご本人が来日されないショーでは、Dior、Chanel、Valentino、BVLGARI、Cartier、Van Cleef and Arpalsなど、数多くのブランドのショーをお手伝いさせていただきました。
そんな中で、素晴らしいクリエイションや職人技の息をのむ美しさに直接触れて、心震える感動や憧れやリスペクトを持ち続けてきた私には、大量生産のファストファッションがあふれ、使い捨ての価値観が世の中に広がっていくことはなんとも居心地の悪い気持ちでした。
ただやみくもに、ラグジュアリーファッションは素晴らしい!ファストファッションは悪だ!というつもりはありません。ラグジュアリーブランドの服は高価過ぎて、現実的ではないのも事実だと思います。
だから、そんな高価過ぎるファッションのコレクショントレンドをコピーして、安い値段で若者のお小遣いでも買えるかわいい服を提供するという1990年代からのファストファッションの出現は、マーケティング的に考えれば、しごく当然のこと、であったのでしょう。
それに事実、安くてかわいいそれを、仕事でちょっと使っちゃおうかな、ってこともあったし。だけど一度使うとなぜかわからぬ罪悪感。。。
Diorのクルーズコレクションのお仕事で、素晴らしい素材のリゾートウエアの優雅な美しさを満喫した翌日に、渋谷のファストファッション店でそっくりそのままのカフタンを発見した時のショックと言ったら!
しかしながら、今や、大量生産・大量廃棄の問題はファストファッションだけが負っているわけではありません。
プレタポルテの年間4シーズンごとに、売れ残った服の行き先がどうなっているのか、、、、ということもこのところずっと取り沙汰されている問題でしたし、もちろん業界内でもそれを問題視する声も多く聞かれるようになりました。
降ってわいた時間
でも、そんな世の中も、否応なくストップがかかりました。
この、強制的に世界中の経済がストップするという、私たち人類がいまだかつて経験したことのない状況になり、これから先はこのままではありえない、と考える人が一気に増えました。
いえ、急に増えたわけではなく、先送りしてきたことに向き合わざるを得なくなった。向き合う機会をこの緊急事態が与えてくれた、ということなのでしょう。
たくさんのファッション業界の著名人や、影響力のあるメディアからも、「全体的なスローダウンを考慮すべきなのでは?」という見解も多く聞かれるようになりました。
世界中の、これからもこの地球で幸せに生きていきたいと願う人々が、
富の集中や貧富の差、持続不可能なほどに進んでしまった環境汚染、人の繋がりの分断された社会構造の再構築などへの解決策を求め、この突然に降って湧いたような時間を逆にチャンスとばかりに利用して、猛烈に推進しているように、私は感じています。
Photo by Guillaume Meurice from Pexels
輪が広がっていく
有り難いことに私のお仲間もどんどん増えています。
昨年の後半くらいから、同じようにこれからのファッションの在り方を模索する方達とたくさん繋がりました。
今もファッション業界に限らず色んな分野のビジョンを同じくする方々と、どんどん繋がりが増しています。
この緊急事態が、これからの社会の変化を全世界で一層加速させることはもう疑いようのないことです。それによって、人間の欲と経済最優先に発展させてきた社会の構造を、人の幸せを最も重視する社会に変えていけるかどうかは、まさに今の私達の行動いかんにかかっていますね。私は、私たちの意識と行動で変えていくことができると強く感じますし、そうすることで、今のこの困難な状況を憂うのではなく、その先にある希望を見る機会に変えていけると信じます。
今までもこれからも、ファッションは人に希望や勇気を与え、喜びや幸せを生み出すものでありたい。これは、これからも変わらぬ私の想いです。
今こそ、これからのファッションと人の在り方をじっくり考えていきたいと、そこに向き合った時に、私はやはり、この日本という素晴らしい伝統の国に生まれたことを無視することはできません。
和魂洋才という言葉
私は先述のように、長年、海外のファッションの一流に触れてきましたが、そのことによって、日本の伝統的な美や精神の美しさにもより強く魅せられることになりました。
海外の一流ブランドのクリエイターの中にも日本の伝統の美に魅了されている方の多いことに驚かされます。
もしかしたら、彼らは日本の伝統の美が持つ、西洋にはない特別な力を、日本人よりもずっと鋭敏に感じ取っているのかもしれません。
私も若い頃には、そんな彼らより日本を知らないことに、とても恥ずかしい思いをしたこともありました。
日本各地の伝統的な手作業の中には、たくさんの美しい匠の技がありますが、それらは間違いなくスローで大量生産とは無縁の世界です。
もちろん、日本以外でも伝統技術を伴ったものづくりとはそういうものですね。
これからのファッションと人の在り方を思う時、そんな伝統技術を現代にどう活かせるのか、ということにも深い興味を覚えます。簡単便利の価値観から遠く離れたところにある美しいもの。それは、間違いなく作り手が、着る人や使う人への愛をこめて創造された物。
そんな創造物の美しさを再びじっくりと見直すことも、そしてさらにただ見直すことを超えて日常生活に取り入れること、そんなライフスタイルに憧れる今日この頃です。
そのためには「時間」の概念も捉え直す必要があるのかもしれませんね。
写真はEATABLEのTatami PochetteをHOTEL de PARIS MONTE-CARLO のレストランで。ほろ酔いのお恥ずかしい顔ですが。。。
私の大好きな美しい日本語に「和魂洋才」というものがあります。
そんな思いが、志を同じくする誰かの心に届いたら嬉しいです。
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