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『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記』を読んで

先日、3分の1ほど読んで少し感想を書いたあと、やはり最後が気になりどんどん読み進めました。

後半は訴訟問題についての詳細でした。

色々と思うところはありますが、最初の印象からほとんど変わっていません。

出版業界って一般の人は知らない闇がやっぱりあるんですよね。

「印税カット」「支払い遅延」「出版日延期」「出版中止」というのは珍しくなく、不誠実なやり取りも「あるある」のようです。

私自身の限られた出版翻訳の経験では支払いの問題はありました。出版日は数カ月の延期はありましたが、9割は「急ぎ」の案件は文字通り急いで出版されました。1件不払いで泣き寝入りしていますが、出版中止や印税・翻訳料カットはありません。

同書での極めつけは「原著者が訳者名を表示せずに書籍刊行」したこと。これは「ゴースト翻訳」として契約していれば許されることですが、約束不履行の不誠実な態度の結果だったようです。

結局は訴訟問題で「燃え尽きてしまった」ようで、とても残念です。

私自身、不払いの件で訴訟を起こすかどうか迷った時期はあります。業界のこと、将来の出版翻訳家のことも考えて「正しい行為」を選ぶなら訴えるべきでした。少なくとも、もう少し催促をするべきでした。けれども、数人の共訳だったため額が少なく、心理的苦労に見合った報酬が得られるとは思えずあきらめました。

出版業界が厳しいのは分かりますが、出版翻訳家を目指す人が多いため、条件面では買い手市場になっているのが原因の一つかもしれません。

そう思うと、宮崎伸治さんが経験されたことは大変お気の毒に思いますが、おかげでこのような書籍を残してくださったことは将来の出版翻訳家の役に立つことでしょう。

出版翻訳にはたくさん魅力があります。またこれに関しては日を改めて執筆したいと思います。私自身、今は会議通訳や通訳者養成に情熱を注いでいるけど、将来また機会があれば出版翻訳をするかもしれません。

ビジネス翻訳経験者で出版を夢見ている人はぜひお読みになることをお勧めします。

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