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散り際がきれいじゃないから桜より白木蓮が好きと書く ぷつぷつと声が聞こえた街路樹の下生えそれとも樹皮の苔 いつまでも腐らないからいつまでも言葉をとっておくのか俺は 耳の中うるさいほどに考えるもの言わぬひとを見つめながら
山折りと谷折りの空爪丸め鳩は己を楔と知るや 4番も4号室もない国で四と死をつなぐ詩のしたたかさ 剥げ落ちたポプラの樹皮がそそのかす生まれ変わりたくはないかと
椿つばき青い空より灰色が似合うコートに迷った朝 明日あたり花とケーキをみぎひだりいつもの電車を乗り過ごす バス停の名前のように呼ばれたい耳の手前で弾けるように
枝越しのおぼろな月の艶姿むくわれぬから夢ですらない 年齢は桁違わずに増えていく尤もらしくコーヒー啜る 互いしか見えぬ恋などするものか背中膝腰似合わぬ眼鏡
センサーが照らすわたしは眼をつむる潤んでいるのは沈みゆく月 何ひとつ確かなことなどないそれだけは確かなのだと蛇は云う 新しき髪のひかりと恒星と時と空とを座標に置く
待ち受けが二月のままで一年が過ぎるあなたの生まれた月だ いつぶりかこんなに涙を流すのはあなたのせいにしているけれど 何食べる毎日訊いて何か食べ何かになってゆくのかきみは 泣いたこと知らないはずだが喋らない高校生がつと話し出す
旅客機のエンジンが吸い込んだ鳥に恥じるべきは飛べぬ我か マンホールみちびく先は幼い日蟻の巣穴に注いだ水音 矢文より正確なはずだからこそ光らぬスマホ冷える指先
大丈夫どこにもわたしなどいない内にも外にもあなたの中にも 切られても痛くないようあらかじめ死んでいるのか髪と爪とは 薄い白薄い灰色薄い黒重なり合って木曜の空 食べたい食べる寝たい寝る好きだから欲しいすなわち恋は欲望