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詩とおもう(スケッチ)

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情景やら心象やらを集めました。
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#絵本

音読(2020.2.22)

開かれた 絵本のページを 読み上げながら 言葉に似たものを 密かに 流し込む 幼いふたつの耳の気配を わたしは片耳で うかがっていた 届いているかは知らない このひと夜は 今もまだ続いているから 言葉に似たものは ときおり わかものの口から 言葉のかたちで 流れ出す

公園(2020.3.9)

鯨のなめらかな背中を 駆け回る子どもたち 月が消えるまで 誰も来ないから 鯨のなめらかな背中は 裸足でも痛くない サーチライトも 届かないから あの日もあの夜も 月も星も めぐっては消え 陸のうえでも 波の音が耳から離れないけど 鯨のようだった盛り土が 今日 公園になった まだ誰も足を踏み入れていない まだ誰も手を触れていない しんとした遊具 月が虹色の暈をひらいた 鯨は子どもたちをのせて 海をめぐる