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詩とおもう(スケッチ)

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情景やら心象やらを集めました。
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2020年3月の記事一覧

バス(2020.3.11)

バスの中はいつでも夜で わたしはいつでも心細く どこへ向かうのかと どこで降りるのかと 降りてよかったのかと いつでも迷っている 十六夜の月の出 すこしの欠け具合が 不確かさに輪をかける まだ乗っている まだ降りられない バスに乗っているあいだはずっと 水のような夜で 目を開いていても 眠っているようで 目を閉じてしまったら もう二度と目覚めないようで わたしは仕方なく ただただ座っている このバスは どこへ行くのですか このバスは 乗っていてもいいのですか このバスを いつ

公園(2020.3.9)

鯨のなめらかな背中を 駆け回る子どもたち 月が消えるまで 誰も来ないから 鯨のなめらかな背中は 裸足でも痛くない サーチライトも 届かないから あの日もあの夜も 月も星も めぐっては消え 陸のうえでも 波の音が耳から離れないけど 鯨のようだった盛り土が 今日 公園になった まだ誰も足を踏み入れていない まだ誰も手を触れていない しんとした遊具 月が虹色の暈をひらいた 鯨は子どもたちをのせて 海をめぐる

果て(2020.3.1)

月と木星のあいだを 飛行機が横切っていく 目に映るままに世界があると 疑わなかったころ 果てはとても近かった 信じることをやめた今 やっぱり果てはすぐそこなのだった それなら 同じ平面に 月と木星と飛行機を並べて 悦に入ったっていいはずなのだ 開きかけたモクレンと 霞む青空と 泣いているわたしとを 同じ平面に並べて 記念写真を撮ったっていいはずなのだ 足元の黒猫が 訳知り顔でにゃあと鳴く おまえ 飛行機が何か知っているかい