クロニクル(2019.6.29)
紙の辞書で
性的な言葉を手繰っては
白白しく端正に記述された
空空しいフォントによる
その定義を疑っていた頃
二千年代の人類は
終末後の僅かな生き残りで
生殖は当局に管理されている
というフィクションを
予言のように信じていた頃
するよりもされるほうが
値打ちだという信仰を
あげつらいながら
それを刷り込まれていることに
身を裂かれて気づいた頃
鏡で見てきた
その時時の顔は
常にわたしであり
常にわたしではなかった
掠れて滲んだ黒いひと筆書き
ばらまいたものは
ばらま