2023年12月の記事一覧
持たざる者のサバイバル・タロット愚者の旅 第6話
占い婆が粗末な扉を叩くと
ドアが細めに開いた。
「ハンナ、私だよ」
「あぁ婆さん、こんな朝早くに誰かと思った」
「旦那は?」
「夕べから帰ってない」
「また賭場かい?相変わらずだねぇ」
ハンナは半笑いで占い婆を部屋に招き入れた。
「旦那が留守ならちょうど良い、
ちょいと頼みごとがあってね、
この赤ん坊をしばらく預かってくれるかい?」
赤ん坊と聞いてハンナは真顔になり
婆さんの懐に目をやった。
持たざる者のサバイバル・タロット愚者の旅5
占い婆はシーツを半分に引き裂き
手際よく赤ん坊を包むと、自分の懐に入れ
その上からマントを羽織った。
「サルル、いいかい?よくお聞き。
この赤ん坊のことは秘密にしな」
「でも婆さん、大奥様はエマがお産すると分かっていた風なんだよ」
「そりゃあそうだろうよ、アタシを連れて行けと言ったんだろ?
大奥様はお見通しだよ。だから・・・
だから赤ん坊は死んで生まれたとお伝えしな」
「えっ?だって・・・」