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摂食・嚥下チームアシスタントレポートVol.5「呼吸と嚥下」〜胸郭可動域編②〜

はじめに

 摂食嚥下チームアシスタントレポートにお越しいただき誠にありがとうございます。
まだまだ梅雨が続きますね。そんな中でも摂食嚥下チームアシスタントメンバーでは嚥下障害の方をより効果的に治療できるよう、毎週1回オンライン実技練習をしています!引き続き、実技練習で学んだことをこのレポートで共有させてもらいますのでどうぞよろしくお願い致します!

前回のレポートはこちら⬇️

 今回は実際の生活動作として、寝返りの中でどのように胸郭の評価・治療を行うかをお伝えしていきたいと思います。ここでは寝返りの治療を通して食事中の1回換気量向上や咳嗽力向上を目的にしています。大切なポイントは3つあります。

1つ目は胸郭は肋椎関節を軸に前方回旋と後方回旋の動きがあるということ、2つ目は胸郭の可動性を阻害している背面筋の治療、3つ目は腹圧(腹部の筋緊張)の変化を感じることが大切なポイントです。
まず、長期臥位が胸郭に及ぼす影響を考えてみましょう!

1.長期臥位での胸郭への影響

臨床でよく見かけるのは以下の2パターンが多いのではないでしょうか?

長期臥位での胸郭の特徴

<伸展パターン>
長期臥床で不動が続くと身体の重さと重力が背面にかかり、脊柱起立筋などの背面筋の可動域低下が起こります。その結果、頭頸部伸展、胸郭挙上・後方回旋し骨盤前傾して腹圧が入りにくくなります。


長期臥床の胸郭の特徴②

<屈曲パターン>
円背の方では頭部が前方突出し、胸郭が下制することで腹直筋や股関節屈曲筋の短縮が起こります。結果、股関節の伸展制限を生じやすくなります。

2.寝返りに必要な胸郭の要素

寝返りに必要な胸郭

寝返るためには運動側の胸郭の前方回旋が大事になります。この時、背面の脊柱起立筋(多裂筋等)の長さがないと胸郭が前方回旋せず、1回換気量の向上に繋がる腹圧(腹斜筋・腹横筋)も入りにくくなります。さらに寝返りは、支持側の胸郭も閉鎖的な動きで前方回旋することが必要です。両方の胸郭が前方回旋することで腹圧が入る動作は咳嗽訓練にも繋がります。

3.実技(背面筋の評価・治療)

肋椎関節と胸郭の動き

胸郭は肋椎関節を軸に前方回旋と後方回旋の動きがあります。
2つのポイントを意識しながら肋椎関節に介入していきましょう。
1.胸郭可動性向上のための背面筋の評価・治療
2.腹圧(腹部の筋緊張)の評価・治療

治療ポイント

まず、肋椎関節を軸に前方回旋と後方回旋の動きが出るか評価します。
①運動側(上側)の肋椎関節の可動性(背面筋の可動性)
②支持側(下側)の肋椎関節の可動性も必要

*寝返りには①②どちらの前方回旋の動きも必要になります。

各背面筋

③両側の前方回旋がしにくい原因筋がどこにあるかを評価する。広背筋、菱形筋、深層の多裂筋や脊柱起立筋の可動性をみていきます。

胸郭可動方向

治療:原因筋(脊柱起立筋、多裂筋、菱形筋、広背筋等)にアプローチしながら、運動側(上側)の前方回旋・後方回旋を繰り返し肋椎関節の可動性を促していきます。最終域まで動かしながら、動きが詰まる箇所でどこが制限因子になっているのかを評価し再度治療していきます。

〈ポイント〉
・体幹が側屈しないように注意する。
・側屈する場合はタオルを入れて脊柱をなるべくまっすぐにする。
・運動側(上側)を動かす時は必ず、支持側(下側)を固定する。
・両方の背面筋の可動性を出していく治療が大事。

4.実技(腹圧の評価・治療)

治療ポイント腹圧

次に、腹圧(腹部の筋緊張)の評価をします。
腹圧を高めるために前面から介入することもあります。運動方向に外腹斜筋と内腹斜筋を集めて腹圧を高めていきます。

まとめ

 今回は、食事中の1回換気量向上や咳嗽力向上を目的に寝返りの中でどのように胸郭を評価・治療するかをお伝えしてきました。ポイントは以下の3点です。

①胸郭は肋椎関節を軸に前方回旋と後方回旋の動きがあります。この時、支持側(下側)の固定が重要です。

②胸郭の可動性を阻害している背面筋の評価が必要であり、広背筋、菱形筋、深層の多裂筋や脊柱起立筋の可動性をみていきましょう。

③寝返りの治療を行いながら腹圧(腹部の筋緊張)の変化を感じることが大切です。

ぜひ、介入前後の食事や嚥下時の呼吸機能の変化を評価をしてみてください。

おわりに

同じ嚥下障害に悩む患者様を担当されているセラピストの皆さんに一人でも多く、知っていただき、一緒に嚥下障害を治療していく仲間が増えることを私達摂食嚥下チーム一同願っております!
一人でも多くの皆さんに知っていただけるよう、私達の活動を応援していただけると幸いです。今後も摂食・嚥下アシスタントレポートを宜しくお願い致します。

ごあんない

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