#9,#10 家族の構造の理解①②(システムであるがゆえの特徴の理解)

1 家族の構造とは:家族内部のダイナミクス(家族内部の人間関係)

構造的家族療法からの理解

構造的家族療法とは、複雑な家族関係を、「境界」「提携」「勢力」という3つの概念から捉え、適応的な家族構造への変化を促す家族療法の体系
サルバドール・ミニューチン(1921年 アルゼンチン生まれ 児童精神科医)

(1)境界
(2)提携
①連合:第三者に対応するために二者が形成する提携
②同盟:二人が第三者とは分かち合わない共通の関心や興味を共有すること
(3)勢力:家族内における影響力を示す概念
「決定」「コントロール」「金」「暴力」のこのキーワードを、誰がどのように行使しているかで家族の行動の法則が見えてくる

2 境界

 2−1 世代間の境界を侵すリスク

子どもに対する過度の干渉(過干渉):世代間境界があいまいになる最初の芽
「過干渉」とは、子どもの考えや行動にいちいち働きかけ、親の思いどおりに動かそうとすること。56%が過干渉と回答(NHK調査)

<過干渉チェックリスト>
ひとつでも当てはまったら危険性大!
□わが子は年齢のわりに幼い方だと思う
□塾や習い事はすべて親が決めている
□子どもの考えや行動をすべて把握している
□子どもが悩んでいると、子ども以上に悩み落ち込む
□「あなたのため」と言うことがある

 2−2 単身赴任中の家族

夫婦が別居している分、母親は子供に全集中し、母子密着が強くなる。単身赴任中の夫婦関係を育てる努力をする。
オンラインでのコミュニケーションが使えないか?
中年期夫婦、妻の夫婦関係満足度は、一緒にいる時間の長さではなく、会話時間に正の相関が認められた。
単身赴任明けの家族の再統合にあたっては、ルールを作り直すような気持ちが必要。

 2−3 実家との付き合い方/家族と社会との境界

「嫁と姑」は、古くから少し難しい人間関係の代表
いつの時代も嫁姑関係に悩む女性は多く、上手な付き合い方を模索している。
妻が、家庭外の親族関係に積極的に関与していると、夫婦の情緒的絆が弱まる(金政2012)

バウンダリーを引くことが大事。
①責任のバウンダリー
②感情のバウンダリー
③空間のバウンダリー
④時間のバウンダリー
⑤お金のバウンダリー

3 今回のまとめ

・家族の構造は、「境界」「提携」「勢力」という3つの視点からとらえることができる
・家族内の世代間境界が曖昧であることは家族システムの不安定化を招きやすい
・下の世代の自律性を阻害し、精神的な不調を招きやすい
・コントロールする側にも、される側にもそれぞれのストーリーがあり、原因と結果では捉えられない。関係性の改善が必要
・世代間の境界をあいまいにする芽は子育てにおける過干渉にあり。
・まずは親が気づくこと。そして、親が自分自身のために時間を使うこと。自分で自分をご機嫌にする。
・夫婦の同盟や連合を強化し、特に単身赴任中などでは特段の配慮が必要
・独立した子世帯との境界も侵さないことが大切。
・具体的にはバウンダリーを守るための知恵を働かせる
・親子関係よりも夫婦関係を大切にし、パートナー不在の期間も、社会活動や仲間との関係性を大切にすることで個人の幸せと家族システムの安定がはかりやすい

4 参考文献

1)テキスト家族心理学:若島弘孔文、野口修司、p166-169、2021
2)対人援助職のための家族理解入門:団士郎、p89-100、2013
3)夫婦の関係を見て子は育つ:信田さよ子、梧桐書院、2004
4)水元深喜・山根律子(2010):青年期から成人期への以降期の女性における母親との距離の意味―精神的自立・精神的適応との関連性から、発達心理学研究21-3;254-263
5)花嶋裕久(2007):男性のひきこもり者からみた父子関係と父親からみた父子関係―ひきこもりの家族における父―息子関係の諸特徴、家族心理学研究21-2;7-94
6)https://www.nhk.or.jp/hogosya/pdf/nhk_etv_hogosya23.pdf(NHKウワサの保護者会)
7)土倉玲子(2005):中年期夫婦にける評価ギャップと会話時間、社会心理学研究21-2、79-90

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