#13,#14 家族の機能①②(システムであるがゆえの特徴の理解)

1 家族の機能とは何か?

① 家族が社会から求められている役割機能
② ①の機能を果たすために必要な家族内部の機能状態

例えば、子育て機能を果たすためには、相互理解、コミュニケーション、役割分担、意思決定、外部(親戚、コミュニティー)との関係調整機能、社会資源を活用する機能。これらは相互に関連し合っている

2 家族の歴史的変化

家族愛のきずなで結ばれ、プライバシーを重んじ、夫が稼ぎ手で妻は主婦と性別分業し、子どもに対して強い愛情と教育的関心を注ぐ今の家族「近代家族」は戦後に生まれたもの。

 2.1 近代国家が形成される以前(明治以前)

子どもは七五三までは親の元で育てられたのち、子守りや奉公人などとして家族の外に働きに出され、子どものしつけや教育は親以外の多くの大人が担ってきた。
共同体としての子育て(家族と外部社会との境界が曖昧)
養子、もらい子、捨て子を含む非親族を取り込む開放的な家制度が存在
女三界に家なし
幼少のときは親に従い、嫁に行っては夫に従い、老いては子に従わなければならないものであるから、この広い世界で、どこにも安住できるところがない。

●おしん
https://www2.nhk.or.jp/archives/search/special/detail/?d=asadra014
●木枯し紋次郎
https://www.toei-video.co.jp/special/kogarashi/

 2.2 旧民法下(1890年)

「家制度」が政策的に導入されたことにより、非親族による家族が徐々に消え、血縁関係による親子の縦軸関係が強調される。江戸時代の武士階級のイエ制度を基本に置く。

戸主は「戸主権」という家族成員を統制する権利をもっていた。家族の居住地、婚姻・養子縁組・分家などの許諾や拒否、先祖を祀る権利。
戸主権は家督相続によって長男に継承。妻は夫に従うものとされ、夫が妻の財産管理権をもつ。家の継続が絶対的使命。

「家」の生活保障は家族・親族のインフォーマルな役割分担や村落共同体の相互扶助によって支えられていた。
夫婦という単位は、「家」の後継ぎの子どもを得ることと生産労働の共同以外に構造的重要性をもたない。
情緒的な絆を共有するのが家族であるという意識は、17世紀頃に出現。
親の養育下における子ども期という概念は、産業革命の波ととも出現した近代社会に入ってから。

◯学校制度明治6年(1873年)の導入
それまでの子どもの教育は、家業を伝えることと共同体で生きていくルールを教えることが中心。
学校教育の導入によって姿を変える(女子の就学率も短期間に上昇)。
近代国家の建設、それを支えていく国民の養成が国家的課題になるにつれ、女性に子どもを産むだけではなく子どもを育て教育する母役割と家事を責任をもって遂行する妻役割が強調された→「良妻賢母主義」が規範化。
良妻賢母の必要性から女子の高等教育が振興→女性の地位が向上。

※氏の歴史
明治3年に平民に氏の使用が許され、明治8年に義務化。明治9年は夫婦別氏制の指令。明治31年明治民法にて夫婦同氏制が定められる。
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji36-02.html

※明治民法の「妻の無能力」規定
https://www.asahi.com/articles/ASP8W2VHRP8VUPQJ006.html

 2.3 戦後の家族制度(1946年日本国憲法、1948年民法全面改正)

「男女の平等と個人の尊厳」を基盤とした民主的家族の創出を理想とした。 
戸主制度の廃止、夫婦の平等の徹底。
妻も行為能力者 (旧民法下では夫が妻の財産を管理)。
「親権」が親の権力・支配権から子どもの「監護」という意味合いへ。
家督相続ではなく財産相続 長男子単独相続の廃止 妻や長男以外の子にも相続権。
1950年半ばまでは新しいシステムは機能せず。

 2.4 高度経済成長期の家族(1954年~1973年)

「夫は仕事、妻は家事・育児」という性別役割分業が高度経済成長を支えた。経済は急成長、電化製品の普及、車、家、物質的、金銭的な豊かさを手に入れた。
長期雇用や年功賃金などの日本的雇用慣行が定着し、企業が家族の福祉を丸抱え。離婚率は低く、夫婦には豊かな生活、生活水準の向上という共通の目標があった。

一方、地域社会が急速に衰退。地域共同体の休息な衰退は、子どもの遊びの文化の崩壊と衰退をもたらし、子育ての密室性を高める。限られたリソースのなかでの子育てにより負担感は増大。
父親の存在が家庭から希薄なものとなり、母子密着が。
「母原病」現象。父親が会社組織という経済社会システムに取り込まれ家族のコミットする時間や空間を侵食された結果の現象。
母親の負担感増大、子育てに自信をもちにくいモデルのない時代。
「三歳児神話」3歳までに子どもの将来が決まってしまう。言下に父親を排除するニュアンス。
厚生白書 1998 三歳児神話には少なくとも合理的な根拠は認められない。

現在、愛着対象は実母だけではなくほぼ決まった数の大人が継続的に関わる愛着のネットワークが大事
母親一人ではかえってリスクが高い リスク分散 多様な人々とのネットワーク

現在、愛着対象は実母だけではなくほぼ決まった数の大人が継続的に関わる愛着のネットワークが大事。
母親一人ではかえってリスクが高い。リスク分散、多様な人々とのネットワーク。

 2.4 低成長期の家族(1973年(オイルショック)から

高度経済成長の豊かさを維持していくために妻の就労が増え、とも働き夫婦が増加(1975年がピーク)。
女性の社会進出に伴い、平均初婚年齢の上昇、晩婚化、出生率の低下→少子高齢化が始まる。
1990年代から家族の変化が顕著。

家族に生まれ、家族を形成し、その家族に見守られて生涯を終えるという生き方が当たり前ではなくなった。
未婚化(生涯未婚 2035年 男性3割、女性2割)、晩婚化、ひとり親の子育て、子どもの貧困、DV、児童虐待、ひきこもり、ヤングケアラー、医療的ケアが必要な子ども、認知症の方の増加、介護負担、介護殺人、8050問題→9060問題、ダブルケア

「死ぬに死ねない病気」
それまでの社会には現象、企業や家族というセーフティーネットから零れ落ちる人々
家族はダメになったのか? 親はダメになったのか?
→ 家族単位の社会制度から個人単位の社会制度へ

その時代、その時代で家族に求められてきた機能、また果し得る機能も変化する

高度経済成長期までに家族に求められていた家族機能(松原治郎)
①性的機能 ② 生殖機能 ③ 養育機能 ④社会化機能 ⑤ 生産機能 ⑥ 消費機能 ⑦ 保護機能 ⑧ 休息・娯楽機能 ⑨ 宗教機能 ⑩地位付与機能

急速に進んだ家族機能の外注化により家族の役割に何が残ったか
①子どもの社会化
②生活の保障(相互に生活を支え合う)
③情緒的安定性(家族メンバーに心理的安定を与える)

 2.5 まとめ

家族の歴史の外観。
高度経済成長期までは、家族に多様な機能が求められ、また一定果たすことができていた。
しかし、社会が激変した今、家族に求められている主たる機能は、①子どもの社会化と③情緒的安定性、ここに家族の存在意義がある。

3 参考文献

木下謙治、保坂恵美子他:家族社会学―基礎と応用―、九州大学出版会、2008
長津美代子、小澤千穂子編著:改定新しい家族関係学、建帛社、2018
増子勝義編著:21世紀の家族づくり、学文社、2018
落合恵美子:21世紀家族へ 第4版、有斐閣選書、2019
中釜洋子、野末武義他:家族心理学 家族システムの発達と臨床的援助、有斐閣ブックス、2019
若島孔文、野口修司編著:テキスト 家族心理学、金剛出版、2021
小田切紀子、野口康彦他:家族の心理 変わる家族の新しいかたち、金剛出版、2017
平木典子、中釜洋子:親密な人間関係のための臨床心理学 金子書房、2011
鈴木和子、渡辺裕子:家族看護学 理論と実践 第5版、日本看護協会出版会、2018
渡辺裕子編著:家族看護を基盤とした在宅看護論 第5版、日本看護協会出版会、2021



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