#12 家族の構造④(システムであるがゆえの特徴の理解)

1 勢力

家族内における影響力のありようを示す概念
決定」「コントロール」「」「暴力」のこのキーワードを、誰がどのように行使しているかで家族全体の行動の法則が見えてくる

2 決定(意思決定)

 2−1 家庭内の意思決定事項

家族の生活は決定の連続。

決定内容の例)
結婚/結婚式/子どもをもうけるか否か/出産場所/保育園/妻の仕事復帰/育児・家事の分担/塾や進学問題/夫の転職/実家との付き合い/旅行先/転居や家の購入/家に誰を招くか/車の購入/親の介護問題/病気になったときの治療/葬儀/法事/墓関係/そして今日の献立

誰がどのように決定を下しているのかで、その人の家庭内での影響力の大きさがわかる

夫婦の決定スタイルの4類型
①夫支配型  ②妻支配型  ③自律型 ④平等主義的協同型

 2−2 健康な家族

平等主義的が好まれるが、必ずというわけではない(柔軟性がある)
共同で決定に取り組むことによって、相手の価値観や考え方が理解できる
コミュニケーションも深まる

医療の場で必要とされるのは平等主義的協働型

3 コントロール

 3−1 コントロールとは?

コントロールとは他者を過度に干渉し、自分の思い通りにさせようと支配すること/コントロールが行き過ぎると暴力に発展

 3−2 望ましい家庭内のリーダーシップの在り方

変化に対して柔軟な民主的リーダーシップ/例外や寛容さを認めない高度の親支配でもなく、行き当たりばったりのリーダーシップでもないあり方

健康な家族:結びつきが適度に保たれていて、柔軟に変化に対応していく力がある

4 お金

ひとつのパワー。家族成員を支配する道具にもなり得る。

お金(経済力は、家族内におけるその人の地位、影響力を決定づける)
「夫婦の経済生活はコミュニケーションパターンの違いと関連し、年収100万円以上の共働き夫婦では、夫婦双方にポジティブな態度でコミュニケーションをしている共感親和群が多い。」(平山・柏木)

実家からの経済的支援⇔正しくSOSを発信し、支援を受ける力も大切(受援力)

5 暴力

 5−1 暴力による関係

誰が誰に暴力を振るっているか、誰が誰の暴力に支配されているか/どこに支配―被支配の関係があるのか/子どもへの影響はどうか

◯暴力の本質
力で相手を自分の思い通りにしようとする「パワーとコントロール(力と支配)」の行使

 5−2 DV被害男性の増加

2020年に全国の警察が相談を受けるなどしたDV事案は8万2643件。うち被害者が男性のケースは1万9478件(23・6%)に上り、この5年で2倍近く増えた。

暴力を振るうのは男性という先入観が覆される/ジェンダーの問題とは言い切れない/男性であるがゆえのしばりに苦しむ人も/加害の裏には被害体験

コロナ禍のストレス/男女問わず攻撃性が高まっている/密室のなかでぶつける相手がいない、自己コントロールができない

【家庭問題でお困りの方は・・・】
まずは、行政相談窓口など支援の窓口に行ってつながってみよう!
「支援者ガチャ」もあるため、あきらめずに!

6 今回のまとめ

・家族の構造を勢力という側面から捉えるには、①決定、②コントロール、③金、④暴力という4つの視点がある
・家族の生活は決定の連続であり、誰がなにをどのように決定するかで家族の勢力の構造が決まる
・「コントロール」という要素が家庭にあるかどうかを考えてみるのも大切。エスカレートすると暴力につながる
・個人の経済力は家族の勢力構造に明確に影響を及ぼす。
・暴力は、パワーとコントロールの行使。人権侵害。男性DV被害者の増加は、ジェンダーの問題だけでは語れないことを浮き彫りにしている
コロナ禍の密室空間では、男女ともにストレスのコントロールが難しくDVが発生しやすい。子どもへの影響を含め、暴力によって家族成員が支配される不健康(機能不全)が進行している

7 参考文献

家族機能測定尺度(FACES3)邦訳版の信頼性・妥当性に関する一研究、創価大学大学院紀要 28, 285-305, 2006
平山順子・柏木恵子(2004):中年期夫婦のコミュニケーション・パターンー夫婦の経済生活および結婚観との関連、発達心理学研究15-1;89-100



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