#15 家族の機能③(システムであるがゆえの特徴の理解)

子どもの社会化(1) アタッチメントとは何か

子どもの社会化は、大きなテーマ。発達理論のなかで詳しく話すとして、子どもの社会化の根幹にかかわる愛着形成について。

1 アタッチメント(愛着)

 1.1 アタッチメントとは何か?

子どもの初期の発達における養育者と子どもの相互交渉における情緒的な結びつき(絆)。
人は生まれながらにして誰かと「くっつきたい」という本能をもっている。
アタッチメントの機能は、くっつきたいという本能を基盤として、そのなかで不安や恐れの感覚を養育者によって調整してもらい、「怖くない状態」に戻ること。

◯ボウルビー[1907〜1990]英国の精神科医
当初は、唯一の養育者(事実上母親)が乳児にとって重要であり、母子関係のみが後々の人格発達に影響すると考えられていた。
しかし、子どもが複数の養育者との間でアタッチメント関係を築くと報告。

子ども側からみると・・・乳児期で最も重要な発達課題はこのアタッチメント関係を築くこと。
空腹で泣く→親がミルクを飲ませてくれる。
知らない人が近づいてくる→泣いたら親が抱き上げてくれる。
アタッチメント機能の中核とは不安感や危機感を親の適切な対応によって取り除いてもらい、安心した状態に戻ること。
子どもは、親からの日常の世話のなかで親と繰り返すことで、生後1年をかけてアタッチメント関係を形成する。

アタッチメント関係の形成によって、自分は困ったときには助けてもらえる存在であること、自分の親は頼れる存在で、あてにしていいのだという心が築かれていく。これが安定型のアタッチメント。
しかし、望む対応をしてもらえなかったり、無視されたり拒否されると不安定なアタッチメントとなる。
子どもとの間に安定したアタッチメントを形成することは、家族に求められている機能でもある。

 1.2 なぜアタッチメント関係が重要なのか

①子どものその後の感情調整システムのもとになる
幼児期後期 感情調整がうまくできることは、集団での社会生活や人格発達などにとって大きなプラスの影響をもたらす

②アタッチメント関係はやがてイメージ化されて内的作業モデルとして機能する
自分の周りの世界はどのようなものか、主要な人物は自分にどのように振舞うのか、自分は相手にどのようにふるまうのか、といった自他に関する情報がインプットされ、無意識的なレベルでその人の在り方に影響する。
この内的作業モデルは、新たに出会う他者と行う相互作用の仕方を導いたり関係を築きはじめて維持するときのひな型となる。
成長するにつれて、個別の養育者者に対して形成されたアッタチメントは代表的なアタッチメントとしてイメージ化され、人の一生を通して他者との相互作用や関係構築に影響を与えていく。
最も影響を与えるのは、養育にかかわる領域で、自分が親になったときの我が子との関わり、父母のアタッチメントへの影響は父母で同程度であるといわれている。

2 アタッチメント理論への疑問

①愛着対象は、親を中心とする養育者という単一でならないのか
②初期の発達がのちの発達を規定するという説の根拠 もっと人の発達は柔軟で弾力性に富んだものではないか

◯ソーシャルネットワークモデル ルイス2007
親子関係は重要であるが、子どもの育ちには祖父母、仲間などとの相互関係も重要。
子どもの愛着対象も複数、子どもは多様な人々からなるネットワークのなかに存在し、親子関係はそのひとつの関係性にすぎない。
親子関係と子どもが他の人々と結ぶ関係は独立しており、並行するシステムである。

ソーシャルネットワークモデルは、初期における親、特に母親との関係性が長期にわたって影響を及ぼすとするモデルの限界を超えようとするもの。
家族のかたちや機能が変容しているなかで、親子関係だけではなく子どもを取り巻くネットワークから得られる多様なサポートが子どもの発達に寄与するという議論がより説得力をもっている。

3 ポリヴェーガル理論から考える愛着形成

ポリヴェーガルのポリとは「複数」、ヴェーガルは「迷走神経」という意味
つまり、ポリヴェーガルとは複数の迷走神経と言う意味。

従来、自律神経は、交感神経と副交感神経の2種と言われてきた。
副交感神経の8割を占める迷走神経には、背側迷走神経複合体と腹側迷走神経複合体に分かれる。

<自律神経>
◯交感神経(闘う神経):赤
◯背側迷走神経(休む、フリーズ):青
◯腹側迷走神経(安心する・リラックス・つながる):緑
自律神経の状態が、思考(認知)、感情、行動に大きく影響する。

<人間(ヒト)の発達の順番>
胎児の時に「背側迷走神経複合体」が発達
その次に「交感神経」が発達
生まれる前と生後に「腹側迷走神経複合体」が発達

愛着形成とは、子どもの緑の神経を育む営み。
子どもの緑の神経を育むには、大人が緑の状態でないと難しい。

4 まとめ

・アタッチメントとは何か
・安定したアタッチメントの形成はなぜ大切か?
・家族機能の中核としてのアタッチメント
・母子から父子へ、親子へ
・アタッチメント理論の限界を超えようとするソーシャルネットワークモデル
・ポリヴェーガル理論からみた愛着

5 参考文献

岡田尊司:愛着障害 子ども時代を引きずる人々、光文社新書、2011 

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