#16 家族の機能④(システムであるがゆえの特徴の理解)

家族の機能 子どもの社会化(2):父子関係の発達

妊娠中から人によって父子関係は始まっている。
ミラーニューロン(他者が苦しみを感じているときにその場にいると自分も文字通り苦しみを感じる)と呼ばれる特別な神経がある。

1 父子関係の特徴

1.1 産後うつを体験する父親

父親も高揚感を味わい、ホルモンの変化も(プロラクチンの上昇、テストステロン、エストロジオールの低下)。
産後うつ 母親10~15%→父親10%前後(日米)。

1.2 新米パパの父子関係

オロオロする局面もありつつ、父と乳児は互いに敏感に注意を払い合って反応(言葉かけ、頬づり、鼻歌→乳児も嬉しさを表現)。

1.3 性別によって関わり方が異なっている

娘と父親に対する関わり方の違い。
1~2歳 父親は息子よりも娘に対してより注意深く関わっている(たくさんの歌を口ずさみ、多くの感情言語を使い、特に娘の悲しみや幸福な表情に対して強く反応する)。
息子の場合は、格闘ごっこを行い「最高」「勝つ」という達成を意味する言語を多用。
子どもの性別は父親の関わり方に影響を与えていた。

2 発達段階別の父親と子どもの関わりの特徴

2.1 乳児期

乳児のケアにどの程度かかわるかは個人差が大きい。
プレパパクラスを受けたか、出産の状況や生まれた我が子の状況、父親の人格傾向、父親になった自分に対する自己認識、子の性別。
母親の子どもに対する応答性に比べて父親の応答性は低く、おしつけがましいところがある(子どもに対応する時間の差)。
特にぐずりへの対応は母親の方が効果的、子どもの機嫌が悪くなるとほとんどの父親が母親に渡す→悪循環。
短い時間のなかでも父親がどのように子に振舞うのかという「かかわりの質」こそ、障害にわたる父子関係の意味を大きく決めていく。

2.2 幼児期後半から就学前

3歳~5歳の幼児その父母を対象とした研究。
父母とのアタッチメントと幼児の問題行動(機嫌が悪い、言うことをきかない、嘘をつく、盗み)と情緒的問題(すぐ怒る、すぐに怖がる、落ち着きがない)との関連を検討。
母親とのアタッチメントは行動問題にも情緒的問題にも関連がないばかりか、母親との関係が安定的であるかないかに関わらず、父親とのアタッチメントが不安定であると子どもの問題行動が増加する。
父親とのアタッチメントが安定的な幼児は不安定になりにくく、探索行動が活発で知的な発達も良好な状態にある。
父親の幼児に対する遊びの場面での関わりが、幼児の社会性や適応、言語活動に深く影響を及ぼしていることが複数の国で報告されている。

2.3 児童期

父親との関係が不安定であった児童は、9歳時点で恥かしがりや、引っ込み思案だと認識されており、同性の仲間にあまり受容されていない。
10歳時点で、問題解決のために援助を求められることや他者に対して開かれた態度がとれることなど社会的方略が高い。
安定的なアタッチメントについては、父母のどちらでもよいので築かれていることが重要。
自他の認識や仲間関係、社会的コンピテンスの領域でも父親との関係が非常に重要な要因。母子間とは別に父子関係の個別性を示している。
児童期には、学校生活という新たな場が子どもの生活に大きな比重を占めるようになる。学習の達成はもちろん、仲間の存在が大きな存在意義をもたらし、仲間関係を良好に保てるかどうかが子どもの適応を決めるといっても過言ではない。集団遊びや活動のなかでの立ち位置、クラスメイトに対しての好き嫌い、他者からの自分の評価などで多少ギクシャクすることがっても、対応していける力が求められている。そのような状況で父親との安定した関係性が児童に肯定的な影響を与えていることが明らかになっている。

2.4 青年期

父親との良好な関係をもつ子どもは、青年期においても感情調整が良好で仲間には肯定的にかかわることができていた。
こうした青年は協調性があり、集団においても目的に沿った行動がとれ、学校生活も順調。
青年期後期の恋愛関係や精神的健康度、孤独感などの領域に対するプラスの影響が報告されている。
父親との不安定な愛着関係は、行動問題の増加や問題解決能力の低下に関連。

3 まとめ

父親の愛着形成と子どもの発達
感情調節、探索行動、社会性、対人関係スキル
なぜ父親が育児から疎外されるのか?

4 参考文献

数井みゆき編著:養育者としての男性 父親の役割とは何か、ミネルヴァ書房、2021

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