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畑部活動報告(2023年8月)

こんにちは、ヘルシーパスの小野です。
本日は、8月7日の「小農を考える会」に参加し、とても印象深かったお話を共有いたします。

無農薬栽培や有機栽培の価値とは?

早速ですが、、無農薬栽培や有機栽培の価値とは何でしょうか?
農薬によるリスクが低い作物を手に入れられる「安心・安全」が、消費者にとっては一番大きいと思います。
では、生産者の目線で見るとどうでしょうか?

無農薬栽培とか有機栽培は土壌の生物多様性によって支えられていて、農を通して、色んな生きものが互いに関わりながら成り立っている、そんな環境を作っているという事実そのものが価値だと思うんですよね
自分はどんな恩恵を享受できるのか?という視点の価値だけじゃなくて、もっとその背景にある価値にも注目してもらえるようになったらな、と思っています。

とおっしゃるのは、静岡市で無農薬栽培に取り組む石上光春さん。
無農薬栽培や有機栽培*は、慣行栽培(法律に則って農薬や肥料を使用する現在主流の農法)に比べると、どうしても効率は下がり生産性も落ちます。
大量生産には不向きなため、その分、当然ですが価格は高くなります。

このような背景を理解して、無農薬栽培や有機栽培の農作物を選ぶことが、生物の多様性を育む土壌づくりを応援することに繋がるのではないか?と思います。

なぜ無農薬でまともな野菜が作れるのか?

スーパーに陳列されている野菜は、見た目がやけに立派過ぎると思ったことはありませんでしょうか?
おそらく、家庭菜園の経験がおありの方ならば身に覚えがあるはずです。
無農薬栽培や有機栽培で、スーパーで販売できるような野菜を作るのは、結構大変なことです。
では、農薬も化学肥料も使わず、どのようにして販売できる野菜を作っているのでしょうか?

除草剤を使わずに雑草をコントロールする

農薬を使用せずに、雑草や病害虫の発生を制御するために、様々な工夫があります。
小野は、一昨年から昨年にかけての18か月間、社会人向けの農業学校で有機栽培の基礎を学びました。
昆虫の行動特性を逆手に取ったり、植物同士の相互作用を利用したり、土壌中の細菌叢のバランスを考慮したりと、なかなか科学的で面白いものもあります。
様々な工夫の中で基本的なものは、保温・保湿のほか、雑草コントロールにも役立つ「マルチング(mulching)」です。
ほとんどの野菜栽培に応用できる手法です。
一般的にはポリエチレン製のフィルムを用いますが、植物を育てて、それを刈って地面に敷き詰める、「緑肥」を使った「リビングマルチ」という方法もあります。

北海道の人気観光地 富良野や美瑛などで、畑の一画にヒマワリやキガラシが広がる美しい風景を見たことはありますでしょうか?
実はそれらも緑肥で、最後は土にすきこんで畑の肥やしにします。鑑賞目的で植えているわけではないのですね。
ポリエチレンのマルチング材は使用後に大量のゴミへと変わりますが、緑肥を活用したリビングマルチは、それ自体が肥料になり、有用な微生物を増やすことにも繋がります。
雑草の繁殖を妨ぐマルチングの役目も果たしつつ、それ自体が肥料にもなる緑肥のマルチ。環境にも優しいですね。

石上農園の取り組み「不耕起と緑肥のマルチ」

さて、石上農園さんでは数年前より不耕起と緑肥のマルチを試されています。
不耕起とは言葉のままで「耕さない」ことです。
一般的な耕作の流れは、耕うん→畝立て→施肥→播種(または育苗→定植)となります。
それでいて「不耕起」とは、一体全体どういうことなのか?
これにはちゃんと理由があるのです。その鍵が、緑肥のマルチなのです。

良い土とは?土壌の「団粒構造」と緑肥のマルチ

そもそも、なぜ耕す必要があるのでしょうか?
それは、植物が根を張るために、土壌を柔らかくして空気を入れて水通りを良くしてあげる必要があるからです。
植物にとって良い土とは、その様な状態の土壌であり、それを「団粒構造」といいます。

想像してください。例えば「肥沃な大地」
おそらく、ウクライナに広がるふっくらとした黒い土「チェルノーゼム」を思い浮かべるのではないでしょうか。

想像してください。例えば「不毛の大地」
おそらく、カラカラに干からび、カチカチに固まり、無数にひび割れた白っぽい大地を思い浮かべるのではないでしょうか。

両者の違い、そのポイントの一つが「団粒構造」なのです。
土壌は粘土などの無機物と、落ち葉などの有機物が混ざり合ってできていて、土壌を構成するそれら粒子の塊によって構成されたものが「団粒構造」です。
「団粒構造」は、土壌の[化学性][物理性][生物性]がかみ合ってできます。
[化学性]粘土はマイナスに帯電しており、表面に土壌中の陽イオンを留める性質があります。ミネラル系の肥料や、pHなども関わってきます。
[物理性]土の柔らかさなど、物理的な性質のことです。植物の根が張ることの効果として、物理的に土に空間ができ水の通りがよくなることがあります。
[生物性]根の周りには細菌類が増殖し、細菌類が分泌する粘液もまた塊をつくるのに役立ちます

緑肥マルチは、自身が腐葉土として肥料になりますし、根が腐った後には土壌中に空間をつくり出します。根のまわりには微生物が多く繁殖するようで、土壌中の生物性を豊かにする効果があります。
団粒構造ができている土壌には、微生物も含め多様な生き物が生息しているそうです。正確なことは分かりませんが、病害虫の防御なども、これら多様な生物の相互作用によってコントロールされている部分があると考えられています。
もちろん、緑肥を育てるという手間はかかりますが、そんな取り組みをされている農家さんをヘルシーパスでは応援していきたいと思っています。

では。


*有機栽培では、有機JAS認定された農薬は使用できます。厳密な意味で無農薬栽培ではありませんが、それでも慣行栽培の農作物よりは化学物質の点では安全といえます。


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