沈没家族

私には6ヶ月の姪っ子がいる。その姪っ子は、姉夫婦とは暮らしていない。別暮らしをしている。私たちが習っているピアノの先生とだ。
姉は産後うつになって以来、姪っ子と暮らすことが出来なくなって、母がいなく父が単身赴任の理由で、ピアノの先生家に預けられた。

それが沈没家族のはじまりだった。沈没家族とは2017年に公開されたドキュメンタリー映画である。1人のシングルマザーが、子供を育てるために見ず知らずの人を募集して共同保育を行ったことを記録したものだ。息子自身が昔育てられた独身の男性のところに尋ねてしゃべったり、当時の映像が流れたりとても変わった映画だった。

そして、今この沈没家族が私の家でも行われている。保育園に預けず、ピアノの先生の家にいる姪っ子は毎日色々な大人と関わる。先生夫婦、先生の両親、先生のいとこ、ピアノの生徒の親、私の友達、など。そのせいか、人見知りをしないし、毎日クラシック音楽が流れる家で生きている。

このことを昨日たまたま上野千鶴子さんにしゃべる機会があった。上野さんは「パートタイマー育児いいじゃない?」と言っていた。そして1人の人間が1人の赤ちゃんを育てることを恐れた友人の話をしていた。「私の知り合いで、自分がこの赤ちゃんを育てると自分の価値観しか知らなくなるのが怖いって人もいたわよ」。
なるほど。確かに姪っ子はすでに大人たちに囲まれ、見知らぬものに触れている。姪っ子の取り巻く環境がユニークで私も楽しい。


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