巫女バイト

巫女バイト
私には大好きな叔母がいる。彼女の35年来の友達が神社で御朱印をかいているらしく、そのツテで年末年始、巫女バイトとしてご奉仕することになった。巫女、と一言にいっても用意するものがあった。まずメガネが禁止なのだ。私は小学生の頃からずっとメガネである。黒ぶちメガネのアイコンで生きていたから、自分自身の顔に見慣れていない。メガネがないともの寂しい。世の中の女子のマツエクやアイシャドウやら豪華な装飾が羨ましい。そんな気持ちでコンタクトを作り、私は数年ぶりに他人の前でほんとうの顔を明かした。みんな、私のどこを見ているのだろう、私もどこを見ればいいのだろう、とあたふたしながら神社で年を越した。普段より肌面積が多いのか空気に触れている気がして、落ち着かなかった。おみくじを担当していたとき、海外の人にはLucky fortune と言って簡単なコミュニケーションをとったり、大吉が出るまで並び続ける人もを見届けたり様々だった。

この日は、お札や絵馬、お守りを担当した。お守りやお札がじゃんじゃん売れるし、また難しいことを聞かれることもしばしばある。
「このお札はどういう意味ですか」
「これは全般的なやつだと思われます」「ちなみにこちらは厄除けに特化しておりますよ」

「お札は東側がいいんだっけ?」
「少々お待ちください」
「すみませーん。お札おく方角はどこですか」
と本職の巫女さんに聞く。
「南か東―!!」
速達の情報ですみません。
お金を納めていただいたあと
「ようこそこ参拝くださいました」
とお決まりの挨拶を決めるとお客さんも私に感化されて丁寧にお辞儀をして受けとった。日本人適当だなあ。私の家のお札も何か分からぬまま、私はこの日お札を50体は売った。





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