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朱鞠内全三話

#3犬
朱鞠内の犬たち。私は犬とあまり関わったことがなかった。ペットを飼ったことがなく(ザリガニは一年飼ってた)、動物との関わり合いをあまり持ってこなかったのだ。
この家の部屋には鹿の毛皮があり、私も数年前テンの皮剥を行った。そのアラスカ暮らしで必要不可欠なのが犬である。彼らは森の中や湖を犬橇で移動する。私には到底経験できないであろう犬と人間との関係がそこにはある。

ここにいる犬たちは、少し腐った鹿肉も食べるし魚の骨も食べる。到底噛みきれないような鹿肉の骨を食べる姿にはびっくりする。「顎大丈夫かしら」と。
私が鹿肉を持ってみんなのところへ向かうと、鹿肉の存在に気づいたようでソワソワしだす。

犬の名前を呼ぶと、彼らはすぐに尻尾をふりふりして嬉しそうにこちらを見る。その姿に、私のことが好きでたまらないような気がする。(実際そうかもしれないけど)でも、犬たちが鹿肉をゴリゴリ食べたりなにを気にしているのか遠吠えしているのをみると、少し怖くて、遠い存在に思える。

彼らは犬橇隊を結成している。リーダー犬がいて、いけ、止まれ、の訓練を受け雪のしまった頃には朱鞠内湖畔まで行く。
犬橇はもちろん、ドッグジョーリンもよくする。犬にハーネスをつけて自分と繋いで、テレマークスキーを履いて犬と湖まで歩いて行く遊びだ。一人一犬ペアで、何人かで移動すると、そこでは桜鱒やヒメマス、イトウがとれる。上りは犬と一緒にスキー板を大きく動かし登り、下りは犬の走りに応じて滑っていく。

犬によって性格が様々なのでいろいろな犬とバディでやると楽しい。自分からは進まないやつ。強く叱ったりしたほうがいい場合や、優しくいうとき。すぐに帰りたがるやつ。元気だけはありあまっているやつ。いろいろな犬とペアを組むと犬の性格がわかる。犬を自分が率いているのか連れて行かれているのかわからない。犬によって自分の性格もひき出される。
「go!!」
「おい!動けよ」

あるとき、友達が言うことの聞かない犬にキレていた。まず犬にキレる場面に遭遇することにびっくりした。そして犬の性格だけでなく人間の性格もあらわになる。自分の思いと犬の行動が一致すると嬉しくなるし、一緒に走っていると、犬との信頼関係を少しだけ感じることができる気がする。

夜になると吠える。誰からともなく声が遠吠え合戦が聞こえる。私も混ざってみるが全く相手にされない。




今ここの家にいる犬は、ボス、ごんざ、クリン、ガン、ロッテ、コニー、ジーナである。

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