「経営者」と「事業責任者」の差分
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「経営者」と「事業責任者」の差分

山田浩輝(@ROXX_yamada)

事業責任者にも色々いる

世の中を観察するとビジネスサイドの人々のキャリアゴールに事業責任者というものが挙げられることがよくあります。自分自身もCOOとして「SARDINE」という事業を責任者として立ち上げ、今は新しい事業である「back check」の事業責任者を務めております。しかし、一概に事業責任者と言っても色々な状況の事業責任者がいるでしょう。

経営者と事業責任者を兼任している人/事業責任者を何度も経験している人/初めて事業責任者を経験する人/新規事業立ち上げとして責任者を経験する人

これらは全て「事業責任者」として括られますが、当然ながら状況や事業責任者としての習熟度、難易度等も全く違う訳なので一概に事業責任者だからすごいとか、こうするべきというものがあるわけではないと思います。あくまでも当該事業の責任者として何がミッションで、何が困難なのかによって動き方もキャリアとしての価値も変わってきます。

「経営者」と「事業責任者」の差分

自分自身は一応COOという経営者を務めながら事業責任者を務めております。両方の目線で物事を見てきたからこそ、経営者と事業責任者に存在する差分が見えたような気がします。事業責任者として結果を出したとしても、その先に経営者というポジションがあるとは限りません。明確にそこには大きな壁が、溝が存在します。そして、事業責任者としてのパフォーマンスも当然ながらこの壁を超えて、経営者の目線を持ってる事業責任者の方が高いと考えられます。では、経営者と事業責任者の間に存在する差分とは何なのでしょうか?

「調達」と「資源配分」

世の中の経営者と事業責任者を観察するに、その差分とは「調達」と「資源配分」です。事業責任者は「事業戦略」「PL理解」「マーケット理解」「プロダクト戦略」等に関して経営者と同じレベル、もしくはそれ以上のレベルを持っていることがほとんどです。しかし、「調達」と「資源配分」には大きな差があります。この二つが十分にできる事業責任者はおそらく既に経営者になっているか、もう間近な存在になってると思います。

「調達」という活動の対象は多岐に渡ります。資金・人材・情報・資材。事業の制約というのはまさにこの調達に依存するわけです。資金が調達できなければ今の資金の範囲内で、人材が調達できなければ今の人員の範囲内で、情報が調達できれなければ今の知識の範囲内で、資材が調達できなければ今の材料の範囲内で事業を進めなければいけません。これは事業の前提を規定しているということです。経営者はこの前提を「調達」という活動を通して変えていきます。あらゆる前提や制約を取り払うことが経営者が最初に考えることなのです。事業責任者をやっていて、自分で資金を調達してる人、自分で重要ポストの人材を採用できてる人はどれだけいるでしょうか?与えられた前提や環境の中で事業を進めていることが多くないでしょうか?何を調達すれば前提が変わるのか、それらはどうすれば調達可能になるのか。これを常に考え、実行していくことが経営者に近づくために極めて重要なことになります。

次に「資源配分」です。調達したものをどう配分するか。ここにも経営者と事業責任者に大きな差分が生まれやすいところです。どうしても人間の思考には惰性がかかります。過去・現在の延長線上に思考が向くのです。しかし、それでは大胆な資源配分の変更というのはできません。ある時、先輩経営者に経営者は会社をどんな風に見てるんですか?と聞いたら、こんな答えが帰ってきました。

「飛行機に乗ることあるよね?飛行機に乗って窓を見ると街が小さく見えると思うけど、あんな感じに見えるよ」

これは何を意味しているかというと、それだけ俯瞰して遠くから見ているため街の中の店やそこにいる生身の人の顔なんて見えないし、それで経営者は良いと言ってるんだと勝手に解釈しました。逆にそこまで見えてしまったら経営者としての正しい意思決定はできないと。「この人はこの仕事がやりやくて入社してきた。その人から希望する仕事を奪って良いのか?」見えすぎてしまうと、このような葛藤が必ず生まれます。個人にとっての最善と会社にとっての最善とどちらを選ぶべきか。一人の人間として悩むのは当然です。そして、悩むだけの人格を持っていないと経営者としてはそもそも失格です。ただ、その上でも会社としての最善の意思決定をしなければならないのです。そのためには飛行機から街を見ているくらいのサイズで会社や事業を見ていかなければならない。そうしないと大胆な資源配分はできないのです。

特に資源配分において「人事配置」というのは事業責任者の大きな壁になると観察しています。大胆な人事異動をあっさり意思決定できる事業責任者は少ないです。しかし、人事異動は時として事業戦略の変更以上に有効になる瞬間があります。全ての部署の言い分を聞き、全てに応えようとするとそんなことは絶対にできません。どこかに大きな負担がいくことは必然です。それでも、それを会社全体の最適解として推し進められるのは、事業責任者だけなのです。

大戦は「強さ」だけでは勝てない

ビジネスの観点からも高く評価されている人気マンガに『キングダム』があります。キングダムには多くの将軍が登場しますが現在進行中の大戦である秦と趙の戦において大将を担うのは王翦李牧という将軍です。武力だけで見ればもっと強い将軍はいるはずです。にも関わらずこの二人が選ばれているのはまさしく「調達」と「資源配分」が圧倒的に優れているからだと思います。この二人は経営者でありながら戦上に赴いて指揮をとっている事業責任者という風に見えてなりません。他の将軍には持っていないものを持っている。その差分はまさしく経営者と事業責任者の差分に近しいものであり、多くのビジネスマンのヒントになると思います。


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山田浩輝(@ROXX_yamada)
株式会社ROXX(旧SCOUTER) 取締役COO COO/経営管理/No.2/SaaS/人材 ネット情報ではなかなか得られないスタートアップの"リアル"をNo.2の目線から晒していきます。