DX意味わからん。「IT革命」と何が違うの?という話
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DX意味わからん。「IT革命」と何が違うの?という話

はじめに

この記事は、Engineering Manager Advent Calendar 2020の24日目の記事す。

職種を越えた働き方を模索するWeb Engineerのtrebyさんと、技術を突き詰めたいiOS Developerのbanjunさんの二人のパーソナリティをつとめるpodcast「きのこるエフエム」でお話してきた今話題のキーワードDXについてのお話を再編して記事にしたものです。

実際のpodcastについては以下からどうぞ。


いつの間にか"DX"がデジタルトランスフォーメーションにとられてた。

trebyさん(以下敬称略)
これは、我々のマイブームというか、最近、「DXっていいよね?」っていうふうに私が謎掛けをしますと、banjunさんが、「DX、わからん!」というふうに返すんです。

banjunさん(以下敬称略)
「DXって何ですか?何がいいんですか?」っていう話です。はい。

treby
新卒banjunさんが、EPSONにいて、同期の方が今DX事業部でしたっけ?

banjun
何かそんな感じの名前。DX推進なんちゃら部とか。そういうのできてるじゃん!って思って、やっぱり結構びっくりしましたね。

ひろき
(笑)

banjun
ただのバズワードじゃんって思っていたのに、普通に大企業が部を作ってやってる。本当に嘘じゃなくてなんかの波が来てるのかって思ったポイントですね。

ひろき
逆に、嘘の波があると思ったんですか(笑)

banjun
(笑)僕の中の解像度的には、AI元年とかと一緒で、そういうノリの印象受けてたんです。

ひろき
なるほど、なるほど。ちなみにbanjunさんは最近はやってる「DX」って何だと思いますか?

banjun
いや、マジでわからなくて、IT革命オブザ令和みたいなものなのかなと思ってますね。

ひろき
ああ、なるほどね、IT革命オブザ令和

banjun
少なくとも、Developer eXperienceの方のDXではないものだと、ずっと思ってましたし、思ってますって感じです。

ひろき
うん、うん、うん。

banjun
でも、ひろきさんの話とか見ると、「2つのDX」って話が出てきて、「2つは一緒です。つながってます」って話が出てきて。そんな話あったんだって思ってるぐらいな感じです。

ひろき
うん。逆にそういった考えがなかったから、僕らが言ってるってことです(笑)。

banjun
ですよね。何かDXって、いつの間にかDigital Transformationに取られてしまったな。思ってたら、2つは続いてますっていう話になってて、あれ?そういう話だったのかっていうそういう印象を持ってます。

ひろき
そうですね。

まず、僕も最初にやっぱりDeveloper eXperience(DX:開発者体験)の方の言葉を知ったんです。

Developer eXperienceって大事だよね〜って思ってたら、また全然別の文脈でDXって略語が出てきてそれは「ざんねん!Digital Transformationの方でした〜」となってびっくり。それが、5年とか6年ぐらい前かな。

ベンチャーの人たちや開発者にとっては、みんなDXっていうと「Developer eXperience」だと思っているし、逆に大企業で登壇されたりすると、DXはDigital Transformationの話ししてるなって。そしたら自然とこう思うわけ:

「両方DXじゃん」って。

それが頭にある状態で、デジタル活用したい大企業の方の話を聞いてみると、ソフトウェアに関して基本的にはベンダーにお任せのような形で開発している。

さらに古くてメンテが行き届いてないシステムになってしまっていたり待遇だけでなく力を発揮できる環境もなくて、組織の中にエンジニアを採用しても、すぐ辞めちゃうような環境があったりするっていうのが、スタート地点だってことに気がつくわけ。

そうすると、「こんなDX(開発者体験)がない状況で、DX(デジタルトランスフォーメーション)できるのかよっ」てセリフが頭の中に浮かぶわけですよ。

一方、デジタル化の方のDXとは何ぞやの話をするときと、どんな調査論文やレポートでも組織のケイパビリティとか、組織改革に関わる話ってめちゃくちゃ出てくるんですね。

自社が持つべきケイパビリティの違い、会社としてデジタル技術を活用して事業につなげていくソフトエンジニアだったり、プロダクトオーナーだったり、デザイナーだったり、そういった部分のスキルセットを持ってる人が全然自社内にいないので、ソフトウェアを自分事として活用できない。あるいは既存事業での成功体験が強すぎて、新しいものに対して適用しづらいとか。

新しいものって常におもちゃ的な要素があるんですよ。

例えば、Railsとか出てきた時も、Railsっておもちゃじゃんって言われたし、
Webがでてきた時も、インターネットがでてきた時も、おもちゃじゃんって言われ続けてた。

でも、おもちゃ的なテクノロジーを組み合わせながら、ダウンサイズされてきたものを使って、新しいビジネスを展開していくってことをしようとしたとき、やっぱり既存の組織の在り方だと、実現しにくいよねっていうのはあったりします。

なので、DXをやろうとしている会社がDeveloper eXperienceの大事さを知らずに、新しい事業を他の会社に作ってもらおうとしてるような体制とか、ベンダーさんにAI使って何かしてくださいって言って、できあがるようなもんだと思ってる現状がある。

そうじゃないよっていうことを伝えるためには、Developer eXperienceの方も大事だよって話をしなきゃいけないなあっていうところがあって、「2つのDXがつながってる」って話をよくするようになったってのが背景としてありますね。

DXってIT革命オブザ令和?

一方で、じゃあ、本丸であるDX、Digital Transformationの方って、何なんでしょうねって、逆に、何だと思いますか?ってのをみなさんにちょっと聞いてみたい。

treby
多分、パーソナリティの間でも、見え方が全然違っているような気はしていますけどね。banjunさん、割と外から聞こえるようになってきて、実際に、古巣でも事業部ができてるので、あれ、来てるの?みたいなスタンスで、言ってて。

banjun
そうですね。やっぱり、自分から調べようという対象じゃなかったから、聞こえてくる内容は、意外とインパクトのある内容も聞こえてくるなあみたいな印象ですね。

treby
一方で私の方は、前職もちょっとかすってたんですけども、アプリを扱っているっていう関係で。

今の職場では、ベンチャー企業に投資する関係上、VCとして企業のデック/営業資料を見ることがあって、DXって文言は3割ぐらいは見るかなっていうような肌感にはなってきてる。なので、多少は調べたりして、こういうものかなという自分なりの認識は持ってるぐらいの感じですね。

ただ、その上で言うと、そもそもDXをやりたいって言っている主体のレベル感によっても、違ってくるかなあっていうのは、認識としてありますね。

Slack入れるのがDXですっていうようなところもあれば(笑)、ちゃんとそこまではできていて、次のデータドリブンで何かしましょうってところを指したりだとか。さらにはもっと先の何か根本的な今までの事業全体に融合したような、本当の意味でのDXはそこだと思ってるんですけども、ようなフェーズもあったりだとか.

レベル感だとか、あと、言ってる範囲もまちまち。でも、総合して、経営レベルとかになってくると、「AI」って言葉とあまり扱われ方は変わらないのかなっていう気もしてますね。

ひろき
「AIと扱われ方が同じ」っていうのは、実体を伴わない技術みたいな、そんな感じのニュアンスですか?

treby
AI自体も、私は実体を伴わないとは思ってないんですね。
それを使ってること自体が大事というか、「AI入ってますよね」みたいなそういう確認事項として使われるように、「これはDXの為のツールですよね」じゃないですけど、なってる側面もあるのかな。

よくよく見れば、両者ともわかるんですけども、AIってのはそもそも機械学習で、さらに、その中のディープラーニングなどのパートがあって、それがどこに適用されてるのかまで言えるのが、本当の意味でのAIの理解だと思ってるんですけども。

それと同様にDXも、会社の事業のどこの部分をもってDXを推進するっていうふうに言ってるんですか?ってところを捉えずに、さっきbanjunさんが言ってましたIT革命オブザ令和みたいなところを、DXっていう言葉で置き換えているところは確かにあるなあと思いました。

ひろき
ちなみに、IT革命オブザ令和だったら何か問題があるんですか?

banjun
まあ、ないんじゃないですかね。目新しさが失われるぐらいだと思いますけどね。

ひろき
カッコ悪いみたいなね。

banjun
一度やったじゃんみたいな感じが出ちゃう、やっぱり。
でも、DXは一度やってないからこそ、別の名前を付けてるんかなっていう印象ありますね。

ひろき
なるほど、なるほど。じゃあ、「IT革命はやられた」んですかね(笑)?

treby 
(笑)

banjun
とりあえず、IT革命って、じゃあ何だったんですか?って話になりますよね。IT革命って何だろう、僕は、やっぱり紙じゃなくてExcel使うようになりましたってのが一番でかいのかなと思っていますね。

この100年間を歴史的に俯瞰してみると「デジタル・IT革命の時代」

ひろき
なるほど、なるほど。まあ、何なんでしょうね。

まず、前提としては、IT革命もDXも歴史の上で同一線上にあるものだって捉えるのは、そんなに変な話じゃないと思いますね。

1950年代から2050年までのこの100年間を、2100年ぐらいから見たときに、何の時代だったんですか?って言ったら、デジタル革命、IT革命、コンピュータの発展、その他諸々の中に含まれちゃうと思うんですよね。

その中で、今この前後20年の部分を何て呼んだらいいんでしょう?って話が、じゃあDXだとしましょう。

それがどんな原典があるんですか?って話で言うと、2004、5年のスウェーデン(ラジオ内ではスイスと発言したが実際にはスウェーデンのErik Stoleterman)の学者さんの話で、IT技術っていうのは物理的な空間とかなり密接に関わってくるし、そういうリアルな体験と一致するようになるので、バーチャルな空間っていうところじゃなくて、かなりリアルな事業や社会と密接に関わるような形で比例していくよね。それによって社会が良くなっていくよねというレポートが元ネタです。

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そういう社会的な変化がまずあって、それに対して、どのように企業が対応していくのか?っていう部分が、企業のDigital Transformation。その部分が経産省とかがDXレポートで話している部分。

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大きく分けて2つあるわけです。

ここから20年ぐらいのIT技術関連する、起こるであろう社会変化を意味している「社会のDX」。

それに対して、企業が生き残るための手段っていうのが「企業にとってのDX」っていう。

いろんな定義があるかもしれないけど、それらを踏まえて大元から判断するとこれが自然な解釈かなと思うんですよ。

treby
うん。

技術の民主化で、取引コストが大きく変わるタイミングで企業がどのようにこの先生きのこるのかという問いがDX

ひろき
じゃあ、どういう変化が2020年代にはおきうるんですか?っていうことが大事になってくる。

平成の方のいわゆるIT革命の時って、パソコンっていう端末がみんなが持つようになったっていうダウンサイズが起きた。さらにインターネット回線が、家または会社につながるようになったっていうことが、1つの大きな環境変化ですね。

その中で、パソコンやインターネットを前提にとしたときに、事業構造を変えても取引コストというかトランザクションコスト下がったことで割に合うっていう事業領域が生まれてきました。

例えば、それこそECがわかりやすい例です。電子商取引をすることで、家に居ながらにして物が買えるってなったのが、1995年から2000年までの間に常識化したっていうと確かに、ECっていうのは1つのIT革命の成果でした。

次に、2010年代ぐらいから2020年ぐらいまでの間に起きてきたことって何ですか?って言うと、スマートフォンっていうのが人口の9割近く普及してました。スマホアプリを誰もがインストールできるようになって、かつLTE回線とかみんながつながってるよっていう環境ってのができました。

この環境の中で、ビジネスにおけるトランザクションコストが変わるとこって何ですかね。じゃあ「アプリで位置情報から探す」もそうだし、あんまり普及してないけど、アプリがBeaconを検知してみたいなこともできるかもしれないし、ってなってたのは、2010年代。

他にも既存のICカード付きのカードで決済するためのVisaネットワークに接続するとかよりも、賢い認証の仕組みっていうのをスマートフォンは手元で持てるから、財布の代わりにも使えるよねっていうところも、2010年代から起きたIT革命的な要素ですよね。

もっと時代が進んで2015年ぐらいから現在はどうだろう。どんどん機械学習分野が民主化されてきて、画像認識や音声認識とかも精度がぐんぐん上がってきた。これからは5Gの回線っていうのが、エッジからかなり低いレイテンシーで応答できるかも知れないっていう状況が当たり前になるかもしれません。

さらにIoT端末みたいに、通信回線を持った小さなコンピュータっていうのが、比較的安く普及できるようになりました。

とかとか、そういう環境がこれから整って、製造業、自動車とか街中のセンサーとか、そういうもののインテグレーションがしやすい環境っていうのがこれから起きてきますという中で、どんな社会変化が起きますか?その社会変化にどういうふうに生き残って対応しますか?ていう波を考えたときに、また、今度は別の部分で企業の取引コストの構造が変わってくると。

今までは、ある事業の形が成立していたのに、技術環境の変化で取引コスト構造がかわると別の業態に売上を奪われて成立しない事業が出てくることになるわけです。

その将来において成立しなくなるような事業が生き残るときに、どんな生き残り方がありますか?とか、たとえば、似たような業態何だけどビジネスモデルが変わっていますとかそういうのも含めてね。

そのときに備えて経営の多角化や生き残りを仕掛けていくことで、企業として成長していきましょう!っていうのの2020年代版で考えてみると、今後インフラも含めてどんどん進歩していくよね、っていうのは、そんなに想像に難くないことですよね。

この影響を受ける産業領域が今までよりもっと広くなるっていうのも、そんなに想像しづらいことではないと思うんですよ。

じゃあ、実際に2020年代にリプレイスされる産業とか、変わんなきゃいけない、変わらないと生き残れないかもしれない産業とか、変われる余地を残してしまってる産業っていうのは何なんだろうか?っていうのは、まだわかりません。それこそ2020年代が終わるまで。

でも、その中で今、最近出ているベンチャーとかで出ているDX系の製品というのは、たとえば、今まで「何とか部」っていう単位でもって、部で何十人かでやってたことをその部を全部リプレイスできるようなサービスにしちゃいましょう系っていうのは1つ出てますよね。

treby
SaaS化の流れですか?

ひろき
SaaS化の流れもそうですし、それはオンラインやフルリモートのBPOでもいいかもしれないですけど。

そうすると何とか部って言って自社内に持っていた機能が、どこかのサービスを利用するだけに変わっていく。

例えば、情報システム部とかマーケティング部とかの領域を企業横断に見たときのSaaSが出てきて、今まで、その部門でやってたことのタスクがまるっと変わってしまう。

歴史的に見ても、たとえば、経理って言われてた部門。昔はそろばんで弾いてた時代から、Excelやパッケージソフトになってさあ、クラウド会計ソフトになった。会計業務も自動的にある程度やってくれるようになってきた。そうすると、社内でもつ経理部門の人数も違うし、やることも変わってきたじゃないですか。

treby
そうですよね。

ひろき
このように、やること変わるかもしれないその部分を、会社の中でわざわざ内部化する必要がなくなる。あるいは外部になにかの費用を払う必要なくなるというのもある。

例えば、製造業の部品の仲介をしている代理店企業とかがあったときに、この仲介事業っていうのは、存続するんですか?っていったら、もしかしたらなにかのダイレクトなプラットフォームがざっくりできちゃった暁には、必要なくなっちゃうかもしれない。

その企業がどんな役割してたんですか?っていうと、実際にそれが適用できるのかって品質チェックができたりだとか、本当に製造してるのか、トレーサビリティってどうなのか、様々な要素があったんだけど、そこがシステムで必要なくなっちゃうかもしれない。

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そのようなリプレイスされちゃうかもしれない領域っていうのは、まず何だろう?と考えて、もしリプレイスされちゃう側だったら、むしろ自分たちでしていこうも、1つのDXのアプローチ。

逆にそういうリプレイスされそうなものはどんどん捨てていって、本当にコアに必要なものだけ持って生き残るも1つのDX。これはデジタル技術を使わないという選択肢なんですよね。

たとえば、設計能力持たなくても、製造能力だけ持てばいいとかも1つの手かもしれないし、製造能力は一切持たずにIPだけ持てばいいんだっていうのも1つのデジタル化かもしれないし、逆に商流を垂直に攻めて行って、M&Aとかして、自分の今までのサプライチェーンにいたとこを取り込んでしまって、総合サービスにしていくことで生き残ろうとかね。

例えば、販売店と製造の部門を分けてる製造業は、販売店ごと買収しちゃって、やるかもしれないし、販売店って文脈自体を切り離してしまって、全部電子的な商取引だけで、成立しちゃうかもしれない。

treby
D2Cっていう話ですね。

ひろき
とかとか。

そういったトランザクションコストが、デジタル技術とか社会のインフラとして提供されているものの変化によって大きく変わるときに、企業の生き残れる形態ってのが変わっちゃうよって現象がある。それに対して備えるためにはどうしたらいいんでしょう?っていう問いの形だから、DXという言葉が、お化けワード化しやすい

まだこれから起こることだから、本当はそのままでも全然平気かもしれない。ある業態にしてみたら。なので2030年に生き残ることだけを目的としたら、何もしなくても2030年までは生きてるかもしれない。

そんで、今後の社会構造変化の中で、自分たちの企業っていうのは、存在価値があるのか?あり続けるのか?っていう問いに対して、どのように答えるのかがDXなんですよ。

treby
うん、うん、うん、うん。

ひろき
なんだけど、今、実際にやってることの多くが、短絡的な答えをDXって言ってしまっている。新しい技術を使って、何か面白いことしたら、それDXですか?みたいな、PoCで作ったらDXですか?とか、新規事業なんかで作ったらDXですか?これ導入したらDXですか?っていうふうになってしまうんで、どうしても話が噛み合わない。

treby
そうなんですよ。今の話が噛み合わないってところ、結構重要だと思っています。

私も今のひろきさんのDXの話を聞いて、新しい視点だったなって思うのは、社会全体としてのDXっていうのは、ああ確かにそうだなって思ったところであるんですね。

それぞれの中でのDXっていうのをある程度持ってる、あるいは、軽んじて見ているみたいなところがあった結果、DXって言葉1つを取ったときに、お化けワードになった。

結果、いろんな方面で何か誤解があって、そのPoCだけでDXっていうふうに言っちゃうっていうのは、今初めて聞いたんですけど(笑)、あるんだったら、そういうことも起こりうるんだろうなあっていうような気はしてます。

さっきのIT革命と何が違うの?みたいな話になっちゃいますし。

ひろき
うん、うん。

IT化なんて、昔からできたじゃんという開発者のバイアス

treby
その視点はある意味では、我々が開発者やってますから、その視点で見たときに、技術的には別にIT革命の時からできてたことじゃん、特に今、ECのプラットフォーム使って、コロナの影響で売れなくなったものを売ろうみたいな流れとかは、別にもうずっと昔からできてることじゃんみたいな視点で見てしまうから、IT革命とどう違うの?みたいな話が出てくるんですかね。

ひろき
そう、実際にはそれをやるトランザクションコストが、ずいぶん下がってきたということなんです。自前で当時ECサイトを持たきゃいけなかったときとかは、決済サービスも自前でつなぎ込まなきゃいけなかった。

それがね、Amazonとか楽天とかに載せときゃできるよね、今はBASE使えばいいよねとか、Shopifyさえ使えばいいよねとかっていう時代になりましたよね。そういえば、オンラインしか無い雑貨屋さんや家具屋さんも増えましたよね。

つまり、販売するための実店舗を持たないでも、言い換えれば不動産によるマーケティングをしなくても、変わりのマーケティングコストを楽天やinstagramに払えばいいじゃんっていうのは、1つのDXですよね

逆に、むかしからできたじゃんっていうのは、多分に技術的なものの見方かなと思っていて、技術的にできたって意味ではWeb以前にTCP/IPプロトコルは昔からあったからECサイトもできたよねってのと同じかなと。

treby
10年前からできてるじゃんってのは、開発者がもっているバイアスだとは思うんですよね。

ひろき
例えば、AIにしても確率的勾配降下法みたいなものが、1970年代とか1980年代の論文に出てますよねとか、そういう話になるわけで。

どうしてもコーディネーションコストっていうか、それを実現するための周辺の技術的なコストが下落してきたことで、現実的になったこととかっていうのは、事業にとって無視できないファクターなんです。

社会のインフラの変化や、それによるトランザクションコスト/コーディネーションコストの変化があるからこそ成立する分野が生まれてくる。この関係性をおさえておきたいですね。

例えば、変な話、昔のIEにデータバインディングって機能があったんですけど、CSVとかのデータをバインディングしとくと、それに紐付いたUI/HTMLを自動的にレンダリングするっていう機能があって、そうすると、データ更新したときに、自動的に描画も変わるから、とっても高速に簡単にアプリケーションができますよねみたいなのがあったんですよ。

banjun
うん。

ひろき
これ、ほぼ原理的にはreact/vue/angularとかと一緒で。データバインディングして、データを更新したら自動的にUI変わる。でも当時はHTMLベースでインターネット経由のすごいリッチなアプリケーションをたくさん開発しましょうということにはならなかった。速度も出にくいし、作るのもとても大変だった。

でも今はある程度簡単にそれを作ることができる。だからもっとリッチなものを提供しようと考えることができるわけです。

何かを実現しようと思ったときの必要なコストの下落って、ソフトウェア開発でいうと、Developer eXperienceそのものなんですよ。

昔、20年近く前って、僕が自宅からラジオや楽曲の音声ストリーミング配信とかしてるときの話、自宅に物理サーバーを作って、固定IPなりダイナミックDNSなりとってとかやんなきゃいけなかった。

それが、じゃあさくらインターネットにとか、DigitalOcean にってなって、今度は、EC2インスタンスにとか、そういうふうになっていくわけじゃないですか。音声配信だけだったら、standfmでもvoicyでもいい。それって、要するに取引コストがめちゃくちゃ下がってるってことですよね。実現までに必要な時間的・経済的なコストが。ソフマップの安いパソコンに並ばなくていいわけじゃないですか。

treby
たしかに。今、自宅でサーバー組んで、固定IPどうやって振ろうかとか考えなくていいですからね。

ひろき
そう、そう。それって、要はトランザクションコストの話ですよね。無理をしなくても、簡単に導入できる。

自動テストとかもそうで、自動テストのための計算機資源を調達するのって、昔大変だったけど今は簡単になった。技術的にもコスト的にも。

ブルーグリーンデプロイメントなんて、物理サーバでやったら死んじゃう。

でも、2倍のコストかかってもいいよってそれでも可用性を高めたいよっていうシステムはあった。例えば、すごいコストかかるけど、行政とか経済の基礎になるシステムだったらできてたわけですよ。検証時のために同じ構成のホットスタンバイの本番にスイッチして変えられるような検証系システムを2つ作っときゃいいわけだから。

コンテナ技術みたいな軽量な仮想化技術がなくても、サーバーの構築なんてゼロからするのは、別にやろうと思えばできたし。

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つまり、これまで起きてきたことっていうのは、そういったものを調達するのに必要な取引コストが極端に下がったことによって、ライフサイクルとか開発サイクルってのが短く保てるようになったということ。

クイックに仮説検証できる状況とか、自動テスト/自動デプロイができて、自動スケールアウトできる状況っていうのは、まちがいなく強力な1つのDeveloper eXperienceだったりするわけじゃないですか。これがDigital Transformationを引き起こしている一因になっている。

treby
うん。

banjun
うん、まさにそうですね。

ひろき
昔でもマイクロサービスって、やろうと思ったら、SOAPだってあったし、CORBAだってあったし、みたいな話をし始めたら、「うん、まあ、そうだよね」と。

だけど、それを実現するのに必要なコストは、golangでずいぶん下がったよね。gRPCでずいぶん下がったよね。でEKSやらk8sでずいぶん下がったよね。っていうことは間違いなくありますよね。

banjun
うん。

何が簡単にできるようになったのかを知らないと、何が実現可能なのかわからない。

ひろき
そのずいぶん下がったことによって、今までわざわざそんなことをしなくてもよかった領域にも、簡単にそんなことができるようになりました、が現実に起きてる現象です。逆にいえば、「簡単にできるようになりました」の部分を知らないと、何がコスト安になったかわからないんですよね。

treby
うん。いや、耳が痛いというか、

banjun
痛いんだ(笑)。

treby
私自身は、本当はAWSが2010年頃に出た時に、AWSのよさが全然わかんなかったですもんね。それまでも、レンタルサーバーみたいなのはあったし、

banjun
ああ。

treby
軽く調達できるよとか言われても、いや、別に家に自宅サーバー立ててるしなみたいな思ってたりだとか、むしろ、クラウドってランニングコストだけで見ると割高じゃんみたいなとこもあったし、

実績がまだあんまりなかった時代だったんで、想像するのが難しかったってのはありますね。自分自身もちゃんと調べようとはしなかったんでしょうねっていうのは、思ったりしましたね。

banjun
うん。

ひろき
自分たちの界隈でも「コンテナの方が(Disposableで)楽だよね」って話があったときに、「いや、いや、だってそんなのVMでもできたでしょ」とか、「いやいや、別に冪等にchef書けばいいんじゃない」って話をされたら、ちょっと待ってくれよって話になりますよね。

今結構、「冪等性とか実装するとつらいんだぜ」とか。この話を極論まで言えば、「サーバーのキッティングから自分でやれよ」みたいな話になっていくと思う。

だけど、それがなぜか、他の産業の話だと、そこに実体がないように見えるんですよね。自分たちの周りに起きてるそういったトランザクションコストの変化には、結構自覚を持って、確かにこれは大事だって思えるんですけど。

treby
そうなんですよ。自分ごととして見ないと、まず見えないっていうのはあるような気がしてて、気がついたら理解できないまま、置いてかれているっていうか、もう死に体になってるみたいな、あります。

ひろき
ていうところが、2000年代にいろんな業界に起きたことによって、結構まざまざと困ったなあって思ったんだと思うんですよね。

いろんな業界の人が、これはもしかしたら本物かもしれないぞ、IT革命が起きてるのかもんしれん思ったわけですよ。

banjun
本当のIT革命も(笑)。

treby
1つあるのは、我々がある意味先端のとこにいるから、なかなか気づきづらいみたいなのはあるのかもしれないですね。

banjun
それこそ、日進月歩じゃないですけど、毎日見てますからね。

treby
ちょっとした差分は見えづらいっていうか、そういうのはありますね。

ひろき
やっぱり、それでもクラウドに移るときに、クラウドなんてって言ってた人は結構いたし。

そういうことっていうのは、やっぱ起きちゃうんで、どうなんでしょうね。
例えば、5G回線が本当に普及してたら、無線LANがなくなると思うんですよね、回線速度的には。

treby
ああ、確かに。回線引かなくてよくなる時代がもう来るみたいな。

ひろき
そのときに、コストが変わってくるという前提でサービス考えましょう/事業展開しましょうみたいなことなんですが、本当に自分たちがいつでもできるのかな?というのは常に内省をしとかないとすぐ置いてかれちゃう部分はあるよなあとか。

例えばね、ノーコードツールとか、今はさあ、それはおもちゃだけど、いつまでおもちゃなんでしょうねとか。

treby
ああ、その話、前しましたね。

banjun
うん。

treby
「アプリエンジニアとして見たら、Yappliとか出てきてますけど、驚異に思ってないんですか?」っていう。

banjun
うん、Yappliね。

ひろき
Yappli結構昔からあったけどね。

banjun
うん。

企業の"改善"から、もっと大きな改革が必要になってきている

banjun
そうですね。

今の話聞いて思ってたのは、要するに、IT革命とIT革命オブザ令和は、何が違うのかって思いながら聞いてたんですけど(笑)。

もちろん時代の変化とコストの変化は無視できないところとかも、お互いに影響しあって、今のDXの時代を迎えているってのは、まあ、そうだなと思いつつ、最初にあった社会の変化ってところからいうと、IT革命って言ってた頃、2000年ぐらい、だから20年前、そのころのIT化というのは、やっぱりそれぞれの企業の改善活動に近い話ですね。

なので、IT"革命"と言いつつも改善なんじゃないかなという気がしていて(笑)、要するにコストがちょっと減って、競争力が上がって、競合他社よりちょっと秀でることができる。

「コスト削減がITを採用した強みです」といって競争して、よりよくしていこうというのが過去のIT利用だった。

でも、今、言っているのは、それは、コストがもっと下がり、時代が変わりってなってきた時点で、いや、そもそも改善をして利益を伸ばそうとかではなくて、何かを置き換えていこうという動きに変わった。

大鉈と言うほど大鉈じゃないんだけど、部分ごとの置き換えみたいなことが起きる。

改善というといかにも、今あるものを「ちょっとよくしよう」、あるいは何ならちょっと「増やそう」みたいに見えちゃうと思うんですけど、「削ろう」、「置き換えよう」っていうところが過去のIT革命と現在のDXの話の違いなのかなと。

今度「何が違うんですか?」って言われたら、そこが違うんですよって、ドヤ顔してみようかなと思いました。

ひろき
それはポイントとしては、すごく適切だと思います。

一方、これは連続的な変化で、改善でも良かった企業も多かった反面、ECが出た時に生まれてきた企業があったのと同じで、顧客接点をインターネット経由にして成功した業態ってのはやっぱりずっと継続的に増えているんですよね。

例えば最近だと、Uber Eats専門店みたいなのってあるんですよ。

そうすると、店舗コストがすごく低いし、キッチンコストだけで結構いいとこに作ることができる。しかも、ある程度値段も取れるかもしれない地域に。たとえば、タイ料理専門店が、ベトナム料理専門店に変更しようと思っても、登録を変えるだけでできるから、生き残りしやすいみたいなのあります。

これって時代の変化に対応した事業形態の一例で、そういう話ってのは結構あるのかも知れない。これって全然デジタルじゃないじゃないですか。基本的には料理作ってるし。だけど、戦う場所を変えたから、コスト構造が変わる。

店舗内装とか回転率みたいなことを気にしなくてよいから、キッチンでの原価率を上げて、十分な原価をかけることができる。

1/3の法則って言うのがあります。売上に対して、家賃1/3ぐらいっていわれてて、原材料費とか原価って1/3あって、利益が1/3になるってのが一般的な飲食店のビジネスモデルです。そのうちの家賃にかかる1/3はかなりコストカットできるかもしれない。

そういう目線で、DXは考えないといけないと思っていて、業態そのものをちょっと変えなきゃいけないって出発点で考えたときに、ある部署まるごといらないどころじゃないぞみたいなことがあるかもしれない。

日本では不況期とITシステムの普及時期が重なってしまったからITはコストコントロールのためのものと理解された。

ひろき
ちなみに、企業がIT技術を改善に向けていた90年代みたいなのが、何だったかっていうと、不況期とすごい重なったんすよね。

90年-95年ぐらいのタイミング。各社はバブル崩壊の煽りを受けてリストラクチャリングをしなきゃいけなかった。

そもそも日本の企業ってなんでも内製化するのが好きだったんですよ。

でも、不況期のリストラクチャリングのタイミングで、機能子会社を作ったりして、情報子会社に発注する構造にしたりとかシステムを自分たちで作てったものもコストコントロールしやすいように、外注にするとかっていうふうにしていった。その上でコストメリットの出るようなIT投資だけしましょうというような時期っていうのがあった。

その後の1995-2000年代にITバブルが起きたことによって、IT銘柄って伸びるぞってなった。

だけど、当時それを扱って事業展開ができるっていうほど、力をかけられた会社そんなになかった。リクルートとかはそういう雑誌の業態から、紙の業態から、情報サイトとか、マッチングサイトっていうところのモデルに持っていけたんで、それはそれで伸びましたよねっていうようなことがあった。

2010年代アプリの時代になるとまた、攻めといた方がいいよっていうふうに度々攻めに転じるべきタイミングってのはあったんですけど。そのタイミングで転換できたところは少なかった。なぜなら、企業全体としてはIT技術を扱えるところはコスト部門やコスト管理のための機能子会社になってしまっている事が多かったから。

そもそもなぜ日本の企業が守りに対してのみITを使う組織構造になったのかっていうと、ちょうど情報技術が注目を浴び始めた時期に日本はバブル崩壊の不況期が来たから。子会社化や外注化でコストコントロールできるからっていう理由。

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でも、IT化することは必須だとその頃の政府も考えていたから、そのための税制とか、そのための仕組みを入れて、SI系の企業に発注しやすい構造を作って支援したわけです。行政が。

IT革命は、そういう構造で、なので結果的に日本ではベンダー側にいる開発者の数とか、マーケットの方が圧倒的に大きくなった。かつそのころのシステムっていうのが古くなってもしっかり残ってるっていう問題もおきている。

例えば、Linuxとか出る前のタイミングで、そういうIT投資してるから、その大きな汎用機の中におごりで抱えたシステムがみたいなのは、そういう時代背景から来てたりして、その時はハードウェア企業とかでかかったんで。

2000年代の初めは、そういう会社はオープン化の波っていう感じで、ダウンサイジングをしていきましょうっていうことで、PCと同じ端末にLinuxなり、別のUNIX系OSを入れるなり、Windows Serverを入れたりして、やっていきましょうってアプローチに、変わっていったってのは2000年代前半のそのコスト系の話ね。

次に、もうちょっとしたら、ERPパッケージ入れましょうみたいなの流行ってて。今度はそのERPパッケージも、パッケージの耐用年数がもう結構つらくなってきた2025年問題っていうその流れ。

日本特殊な事情やその時々のIT投資の流行り廃りみたいなのがやっぱりあって。それで変質しちゃってるところがある。

経産省のレポートだと、「2025年の壁」の話とか、レガシーシステムからの脱却をしないことには、DXがしづらいよみたいなのがあるっていうのは、そういう文脈に則ってるのかなと思いますね。

treby
今のお話で、IT革命の時期と不況期が被ったっていうのは、自分としては初耳だったんですけど、割と一般的に言われてる話なんですか?

ひろき
もちろんIT革命っていうのを、どこからかって言うかだと思うんですが、まず90年代前半のIT投資っていうのはそういうものだったようですね。

2000年代初頭とかは、Webの世界、Webオープン化の波があった。安くする方にWeb技術とかを使うようになったとかの時代もありました。

treby
そうですね。頭の中の整理としては、自然につながりますし、いわゆるSIerで勤めてるエンジニアの人口の方が多いっていうのが、なぜそうなったかってうのも、すごく示唆に富んだ話だったなあって聞いてました。

ひろき
日本のIT産業が生まれてくるタイミングが、バブル崩壊直後からの流れで、事業会社が自前でIT人員を抱えるって、メリットないんじゃないのっていうふうになってった時代だったということですね。

treby
うん、うん。

バズワードをバズワードと笑っていた自分が、この10年の確実な変化から学んだことと、はやり言葉の「けまらしさ」

treby
何かいろんなものが、本当はつながってるはずなのに、側面を見ちゃって。
ひろきさんの本でも書いてましたっけ?目が見えない方が象を触ってると、ある人は足を触ってて、ある人は鼻を触ってて、何かよくわからなくなっちゃってるみたいな。

ひろき
「群盲象をなでる」みたいな。

treby
それに、近しいものがあるのかなあっていうのは、ちょっと感じましたね。
それを改めて、全部整理して、自分の中で紐解いていくと、何かすごく面白いですし、見え方がまた変わってきますよね。

ひろき
まあ、そうなんだけど。むずかしいよね。

僕も急にビッグデータが流行ったときに、何もでっかくないわと思ったりしたしね(笑)。

DXとかってのが、バズワードになった時は、「わー、またバズワードかよ」って思う気持ちはすげえ理解できる。

でも、それを散々繰り返してきたから、自分の年代としては。

このバズワードってものに、まるで本質がないことばっかりかっていうと、そうではない。

例えば、ビッグデータって言って、「ビッグデータって、何やねん」って僕も言ってたけど、Hadoopクラスターはコモディティ化したし、BigQueryは簡単に使えるようになったし、ビッグなデータを扱う手段、分散で扱う手段っていうのは、とてもイージーになったよね。

それが、ビッグデータっていうバズワードに集まった投資の少なくとも価値として、我々は体感してる。

AIに関する投資に関しても、機械学習のためのコスト、機械学習を、特にディープラーニング系のことをやるための取引コストってのは、めちゃくちゃに低くなったと思うんですよね。

まず、モデルの標準規格もできたし、最適化ツールもできたし、なんなら、転移学習するための学習モデルも、もうタスクサーチできるようになったりしたしとか、そういうこと考えたら、もう尋常じゃなく楽になってきちゃってる。

だから、難しいから解けるようになってんだけど、ただ、やんなきゃいけないことは、簡単だって言われてないものかな。尋常じゃなく昔難しかったことが、イージーになってるわけですよ。
それに対して投資されてきたことをよく知ってるんだから、AIだ何だって言ってるのって、何らかその意味があったんだなって思えるね。

treby
うん、やっぱり自戒としても、ただ耳障りのいい言葉というか、いろんなところで聞こえてくる言葉を、「はい、はい、バズワード」っていうふうにしないで、その根底にどういう意図があるのかまで、全部が全部は無理なんだとは思うんですけども。

ちゃんと自分の中で消化するような癖はつけたいなとは思いますよね。

ひろき
ただ、僕、「けまらしい」っていうところなのかなと思って。
けまらしいっていうキーワードをよく、昔、はてなで流行った、自分以外の人が仲良くしてて嫌だっていう感情。

banjun
20年前ぐらいですかね(笑)?

ひろき
そう、そう、そう。20年は言いすぎじゃない、20年は言いすぎだって信じたい。

banjun
もうちょっと後だと思います。

ひろき
これ、他の人たちが仲良くしてる様子とかが、不快みたいな気持ち。
インターネットとかで互助会がどうのとか、クラスターで仲良くしてる感じがムカつくとか、そういう、「あの人たち何でこんなに仲良くしてるの、ムカつくみ」たいなのを表現してる新しい形容詞を作ろうって言って。
例えば、「インスタが、すごいけまらしよね」みたいに使うっていう表現がけまらしい、「ボカロ界隈ってけまらしいよね」とかが、

banjun
アルファブロガーの時代かな(笑)。

ひろき
まさかね、調べてみたら2004年か。16年経ってるとは思わなかった。おおよそほぼ20年って言っても、ほぼ誤差だ。

バズワードって、イケイケの経営者たちやおっさんたちがさ何も知らないのに急に「DX、DX、ビッグデータ、ビッグデータ」みたいに言ってるようなイメージってあるじゃないですか。

それはやっぱ "けまらしい" ですよ。

おっさんが急に「キミ、DXしてるかね?」みたいな感じで話しかけてくるみたいな印象あるよね。

そうなると、何なのこいつらってやっぱ思う。

でもさ、思うけど、そのキーワードが悪いんかね、それは。
そのおっさんらが悪いんじゃないんかい?

treby・banjun 
(笑)

ひろき
誰かにわかりやすく表現することって悪いことじゃない。

例えば、AIについて、いや、「AIじゃなくて、ディープラーニングなんだ」みたいな話をしてたとしても、わかってないおっさん経営者から「ディープラーニングでやってくれよ」みたいな話になっちゃうじゃん。

逆に、それは何だかよくわかってないやつに、言われることがムカつくんであって、わかってて言われるぶんには別にムカつかないでしょって思うわけ。

例えば、Google Cloudのさあ、AI Platformみたいな名前のプラットフォームがあるじゃない?あれに関してさあ、「AIって言いやがって」って思う?

treby
いや、全然。

ひろき
それって、多分、Googleの人は、ディープラーニングだけでなく機械学習全般のことをひっくるめて「AI Platform」って言ってるんだなあって思うからでしょ。

だけど、誰だったか、お偉い方かはわかんないけど、どなたかが、「AIっていうのは関数近似値で、最小二乗法のお化けみたいなもんだからね」、みたいな話を言ったときに、炎上したっていう事件があったんだよね。

treby
ちょっと、存じ上げてないですが、いつ頃ぐらいすかね?

ひろき
これは、2019年2月なんで、1年半ぐらい前で、ある方が「AIのディープラーニングっていうのは、原理的には単純な最小二乗法にすぎない」、そんなような表現をしたのね。

「それは、何か言いすぎじゃない」ぐらい、「言いすぎじゃない、最小二乗法の3次元版だ」とか、そういうコメントをつけてたような発言があって、それはそんなに大きく間違ってないどころか、かなり深く理解した上で発言しているように聞こえるんですよ、僕からすれば。

banjun
うん。

treby
お偉いさんだったっていうことですか?

ひろき
そう、そう。

「最小二乗法のエンジニアが、最初に、会社に入ったら最初に習うような最適化プログラムであって、最小二乗法には何の秘密もない。秘密は何をインプットして、何を最適化するかのノウハウである」っていう話をしてて、そのまとめ方はそんなに言いすぎじゃないというか、それはそうでしょっていうレベルの話だと思うんですけど。

それに対して、「そんなことはない、ディープラーニングはディープラーニングだ」みたいな感じになった。

treby
うん、うん、うん、うん、うん。

ひろき
でも、東大の松尾先生とかも、最小二乗法っていう読みは、そんなにあながち間違いじゃないけど、あるいは、そういうふうに説明してるっていう時期があったんですよ。

関数近似の方法として、誤差を最小化するためにってことなんで、ほぼ変わらないっちゃ、変わらないんだよね。

なんで、AIってものをお化け化せずに、関数近似であって、その関数近似も、単純化したら、それは最小二乗法の一種だみたいな話としては、DNNへの説明としては、かなり誠意のある方で、脳の構造を再現してるとかの方が、かなり誠意ない表現だと思うんですよ、そのDNNについて伝えるときに。

banjun
うん、そのとおりですね(笑)。

ひろき
何だけど、なんか炎上したんですよね。

それと本質的に何か似てることだなとはちょっと思ってて、何か知らんおじさんって、結構適当にしゃべってるんじゃないのって思うし、こいつは何も知らんやろうっていう前提で、何かよし叩けるぞ、おー、みたいな感じで叩いてみるみたいな風潮って結構あるなと。

banjun
インターネットでは(笑)。

treby
そうですね、けまらしいって言ってる人たちも、実はけまらしいところがあるのかもしれないみたいな(笑)。

ひろき
なんで、ちょっとフェアじゃないなとは思うんですよね、おじさんに対して。

なんで、僕は少なくとも、AIっていう表現より、実は最小二乗法の表現の一種であるから、むしろデータであったり、学習させるためのノウハウ/手法が重要であるっていうのは、かなり理解した表現に聞こえる。

経営レベルとしてはかなり高い解像度、出てるとは思うんだけど、ただ、それに対して噛み付いちゃう理由の方が、実は理解が浅いなみたいな感じしちゃう。

banjun
噛み付き方がどういうふうだったのか、ちょっと気になりますけどね。
松尾先生も「深い探索」のことを言ってて、まさにそれはそうで、深いがゆえに学習が現実的に終わらないっていう課題がずっとあった。

それが解決したからこそ、ディープラーニングは大事なのであるという指摘は正しいと思うんですよね。そこは最小二乗法とは、そういう単純な話とは全然違うよっていう指摘は、それはそれで正しい気はするけど、

だから、噛みつき方がどういうふうだったのかは、気になるなあっていう気はする。「深い関数」だって、GPUがたくさんあればいいじゃんとか、そういう簡単な話ではないと思うんですよね。

ひろき
それはそのとおり。

これは「技術的にエポックではない」という論旨ではなくて、魔法ではないからAIによるレコメンドを神様のように思う必要はないよという文脈で書かれている文章なんだよね。

よりよく分かっていない人に説明する文章で、技術的な不正確さを問題にするって、意図的に悪意を持って読まないとなかなかできない。こいつは間違ってるに違いないと思わないとできないとおもうんですよね。

だからこそ、その指摘をする意味がないなと思ったんですよね。

何でその人の発言を悪意持って受け取ったのかっていうとこに対して、思考を巡らす方が正しい物事の理解かなと僕は思ったんだよね。

treby
DXは、けまらしいっていうところから、言ってる内容そのものではなく、属性で拒絶反応を起こしてしまうこともあるのかなあっていうのは、非常に示唆に富むというか、忘れてはいけない観点な感じがしますね。

ひろき
そうだと思うな。

なんでデジタルって言葉を使うの?アナログとデジタルの対比で古臭く聞こえるじゃん。

banjun
すごいレベルの低い話をすると、何でデジタルって言葉使うんだろうとかって思うんです。

デジタルっていうと、アナログからのデジタル。それこそすごい古い話になって、むしろ、ITみたいにInformation Technologyの方が、デジタルの上に構築されているハイレベルな概念なのに、何でデジタルみたいなもっと古い時代の言葉にしたんだろうみたいな印象はやっぱありますね。

treby
ただ、信号処理みたいなイメージになりますしね、ある意味ね(笑)。

banjun
そう、そう、そう、そう、そう。

ICが生まれたぞみたいな、そういう時代まで戻ってる気がすごいしちゃうんですよね、その言葉のイメージから。

ひろき
そう、そう。それはね、僕も最初違和感あった。
じゃあ、デジタルってなんだろうってのに僕なりに答えがでた。

物理空間に染み出してるかどうかが、デジタルと呼ばれる部分とそうじゃない部分の境目。センサー技術なり、IoTもそうだし、カメラで見るでも何でもいいんだけど。物理的社会的空間との調和っていうのが、Digital Transformationの原典の時点から、書いてあるんだよね。

banjun
なるほど。

ひろき
昔は、Web上のバーチャルな場所に何かがありますよとか、そういうコミュニティがありますよってのが、インターネットの見られ方だった。

でも、物理的/社会的な空間に意味のあるものとして、実体/実存を持ってくるようになった。デジタルなアイデンティティが社会にとっての一級のアイデンティティになると。

通貨もそうだし、契約もそうだし、大体、今まで物理的実体を伴わなきゃいけなかった。このようなファーストクラスの一級オブジェクトっていうのが、デジタルなものも認めるようになっていくっていうのが、Digital Transformationの社会変革を指してる。

ITっていえば多くの人が「バーチャルな」っていうイメージがあった時期。インターネットコミュニティとか、リアルワールドとは別の存在でっていう時代。っていうのが、多分2004年ぐらいから201何年ぐらいまで続いていた。

やっぱりスマートフォンの時代になってから、デジタルな世界に記録された存在が、物理実体と同じように法的に社会的に"第一級で"扱えるようなオブジェクトがインターネット上にも生まれてきた。

こういう感覚って、やっぱり2010年代以降から増えてきたと思ってる。それを何て呼ぶかっていう単純表現がデジタルだったんだよね。

banjun
なるほどですね、完全に理解できました。

インフォメーションっていう言葉には実体性が薄くて、デジタルって言葉には実在性を感じるってのは、すごい話だなと聞いてて思ったな。

ひろき
うん、なんで、おっしゃるとおり、僕も最初、何でデジタルなんだって思ってたんですけど。

treby・banjun 
(笑)

ひろき
それは思うじゃない。デジタルって言われても、単に2進数に離散化された信号だな思っちゃうんだけど。

社会の人たちはそうは捉えない。そうなったときに、社会の人たちが捉えてる解像度の理解ってのは何なの?っていう話で。

ある程度誤解を招く表現だったかもしれないけど、文脈を持ってちゃんと説明したら、理解できないような話をしてるわけじゃないなとは思ってる。

treby
いや、人の認知って面白いな。

banjun
認知もそうだし、多分デジタルに昔そういう意味はなかったと思うけど、今、そういう意味で使うのに適任の言葉に進化したってこと?

ひろき
うん、そう、そう、そうなんすよ。

例えば、仮想通貨のことをデジタルカレンシーって呼ぶのか、バーチャルカレンシーって呼ぶのかと言う問題。だけど、ステーブルコインとかCBDCみたいな、仮想的実体を持ったことを呼ぶときには、デジタルコインって呼ぶんだよね。

banjun
ああ、そう言われると、もう完全につながります。

ひろき
インターネット上にあって、バーチャルじゃないもので、世界・社会にとって第一級オブジェクトであることを総称して、「デジタル」って表現をリネームして使うようになったのだと理解している。

banjun
何かもうそれが前提になってしまうと、めちゃくちゃ使いやすい言葉だなという。

使いやすいってのは、バズりやすいっていう意味じゃなくて、意味を特定するために本当に使える言葉だなっていう感じがしますね。


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広木大地(日本CTO協会理事/レクター取締役)

エンジニアリングと組織の関係について、より多くのビジネスパーソンに知っていただきたいという思いで投稿しております!

ありがてぇ。
株式会社レクター取締役。エンジニアリング組織論への招待~不確実性に向き合う思考と組織のリファクタリングhttp://gihyo.jp/book/2018/978-4-7741-9605-3が好評発売中。