2020-2Q ベスト曲ランキング

1. Bless Me - Moses Sumney

神聖なハーモニーを讃えよ
Moses Sumneyの2枚組大作となった本作では、持ち前のファルセットヴォイスと耽美なサウンドによる唯一無二の世界観を思う存分堪能できる。アルバム終盤のハイライトである"Bless Me"が織り成す荘厳なサウンドスケープはまさに圧巻の一言。神々しい雰囲気を醸し出す名曲だが、時に不安定に揺れ動くビブラートが実に味わい深い。

2. Pig Feet (feat. Kamasi Washington, G Perico & Daylyt) - TERRACE MARTIN & Denzel Curry

これが社会のリアル
凄惨な銃乱射事件があった翌年、Childish Gambinoはメタファーに溢れたPVと共に"This Is America"をリリースした。エンタメ界では成功する黒人が増えている中、社会的な待遇は必ずしも正当なものであるとは言えない世の中があった。そして2020年、世界が黒人差別事件に揺れ動く真っ只中でリリースされた"Pig Feet"は、今この瞬間に起こっているデモや暴動の熱量を見事に包含したような一曲である。"This Is America"で描かれたシニカルさは本曲にはなく、PVに実際のデモ映像が使用されるなど極限のリアリティーに満ちている。

3. If You're Too Shy (Let Me Know) - The 1975

躍動するダイナミズム
つくづく音作りが上手いバンドだと感じる。80s〜のサウンドに影響を受けていることは間違いないが、マシュー・ヒーリーなりの斬新なアップデートには目を見張るものがある。アンビエントライクなイントロで聴き手を引き込んだかと思えば、夢の中から呼びかけるかのようなギター、目の覚めるようなリズム隊と分厚いシンセサウンドが次々に畳みかけてくる。マシューが爽やかな声でオンライン上のじれったい恋愛について歌うのもユニークだ。

4. idontknow - Jamie xx

混沌とした世界を体現
序盤のBPMの急転換、予測不能な曲構成、極端なヴォーカルエフェクトとビートの激しい変化…。The XXの頭脳であるJamie xxの新曲は息をつかせぬ勢いで目まぐるしく展開していき、5分超を一気に聴かせる。彼のこれまでの作品と比べてダークな仕上がりになっているのもポイント。

5. Fortune - Laura Marling

母のような温もり
弾き語りと必要最小限のストリングスのみで構成された"Fortune"は、その抜群のメロディーと深みのある歌声で聴き手の心を鷲掴みにする。簡素でダウンテンポな音楽への帰結は、スフィアンスティーブンスの"Carrie&Lowell"でのフォーク回帰を彷彿とさせる。その無垢さに心が浄化される一曲。

6. Bad Friend - Rina Sawayama

リナサワヤマの七変化
STFUなどミクスチャー要素の強い先行曲のイメージが個人的に強かったリナサワヤマだが、この"Bad Friend"では別人と見紛うほどピュアな姿で、共感せずにはいられない青春について歌い上げている。彼女のメロディーメイカーとしての才能だけでなく、音楽性をいとも簡単に操る器用さも見せつけた一曲。

7. Such a Shame - The Chain Gang of 1974

卓越したメロディーセンス
90sのエッセンスを巧みに取り入れつつも、幽玄なサウンドミキシングにより夜の都会を駆け抜けていくようなモダンさも感じる一曲。ツボを押さえた優れたメロディーもさることながら、終盤にかけて流れるように高揚感を増していく展開も聴きどころ。

8. Malibu - Kim Petras

普遍的なパーティーチューン
2017年にデビューしたキム・ペトラスは、1980年代のユーロビートを彷彿とさせるサウンドで人気を獲得。新曲である"Malibu"も、カッティングギターに乗せられたレトロなポップサウンドが弾ける昔ながらのパーティーチューンといった風合いで、聴いていると自然と体が動き出してしまう。もはや使い古されたアプローチなのかもしれないが、私たちが夏に求めるのはいつだってこんな曲なのだ。

9. Baby You Have Travelled For Miles Without Love In Your Eyes - I Break Horses

甘美な二部構成
よくできたジャケットである。ディレイ処理が施されたシンセサイザーはスローモーションのごとく浮遊し、低音・高音を使い分けた二部構成のヴォーカルの絶妙な橋渡しとなっている。特に後半の透明感溢れる高音ヴォーカルはシューゲイザーサウンドとの相性も抜群だ。

10. A Hero's Death - Fontaines D.C.

早くも貫禄を見せる新機軸
昨年リリースされたデビューアルバム『Dogrel』でポストパンク界を席巻した新人バンドの2作目、『A Hero's Death』からの同名リードシングル。
ぶっきらぼうな歌唱スタイルは変わらないものの、バックコーラスを効果的に盛り込み、ギターサウンドを若干増幅させることでより壮大で奥行きのあるサウンドを実現した。

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