『ジャパニーズウイスキー』の表示規則はどう定められたか―ちょっと気になること


先に別の記事で書きましたように,日本洋酒酒造組合という業界団体が2021年2月に新しい規則を定めました.「何をもって『ジャパニーズウイスキー』と称していいのか」を決めたというものです.大企業をはじめ,多くの生産者がこの団体に加盟しています.

これにより,次のようなことが定められました.
『ジャパニーズウイスキー』と表示するための製法品質の要件として,
 原材料は,麦芽,穀類,日本国内で採水された水に限ること.麦芽は必ず使用しなければならない.
 糖化,発酵,蒸留は,日本国内の蒸留所で行うこと.蒸留の際の留出時のアルコール分は95度未満とする.
 内容量700リットル以下の木製樽に詰め,当該詰めた日の翌日から起算して3年以上日本国内において貯蔵すること.
 瓶詰は,日本国内において容器詰めし,充填時のアルコール分は40度以上であること」 
その他として,「色調の微調整のためのカラメルの使用を認める.」とされています.

また,日本的な人名,地名などを表示してはならないという条文もあります.ただし,製法が上に書いたようなものでないこと,つまり「この規則に則った製法ではないですよ」と明記すればかまわないようです.なんだかややこしい気がしますね.
詳しくは,日本洋酒酒造組合のウェブサイトでも公開されています.

そこではしっかりと英語版も公開されています.そちらも読んでみましたが,外国の人がテキトーなものをジャパニーズウイスキーと称して造ったり売ったりできないようにする意図があるようです.

この規則が設けられたことで,別の記事でわたしが挙げた日本のウイスキーがいい加減だと言われる部分が改善されるかもしれません.原材料については,かなり詳しく定められました.使用する水について限定しているのは,世界でも珍しいように思います.

ただ、気になるのは添加物についてです.今回の規則では,そこについては詳しく言及されていません.カラメルの使用について触れられているだけです.
ちなみに「添加物」という用語は,「ウイスキーの表示に関する公正競争規約」等でも,「原材料」とは別のものとされていますので,原材料を厳しく規定しても添加物を規制したことにはならないでしょう.この点は,今後問題になる気がします.

別の記事で書きましたが,イギリスやアイルランドでは,法律で,「水と色調整用のカラメル以外の物質を加えてはいけない」と明確に記されています.
EUなどは食品の添加物についてとても厳しいですから,この機会に『ジャパニーズウイスキー』における添加物の使用を,厳格に規制しておくべきだったように思います.生産者からしますと,これまで使ってきた香味料を使わずに同等のものを造るのは無理,というということかもしれませんね.

今回の規則は業界団体が設けたもので,法律ではありませんから,今後もこのルールから外れた日本のウイスキーも売られていくでしょう.しかし,それらは日本的な名称ではなくなり『ジャパニーズウイスキー』とは冠されなくなるでしょう.また,このルールに違反しているものに対しては,業界が抗議をすることはできるでしょう.

さて,この業界にどういう影響が現れてくるでしょうね.移行期間を経て,実際に制度として動き出すのは2024年の4月以降となるようです.
わたしは基本的に日本のウイスキーは買わないのですが,買いたいと思うようになるかもしれませんね.

(ひろかべ)

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