川崎港海底トンネルを歩いて渡ろうとしてみた(1/2)

川崎市の海っぺりに「川崎港海底トンネル」というものがあると聞きました.東扇島という人工島に繋がるものらしく,全長は1.2キロぐらいで,人間も歩いて通れるとのこと.これはぜひ歩いて渡ってみなければと思い,JR川崎駅からバスに乗って行ってみたわけです.

トンネルの手前にあるらしい「JERA川崎火力発電所前」というバス停で降りるつもりでした.が,完全にタイミングを誤って降り損ねました.言い訳をしますが,このあたりはバス停の間隔が異様に短く,手前のバス停を過ぎてから次の車内アナウンスが流れる間もなくバスが停まり,降りていく人がいます.混乱しているうちに扉が閉まり,バスは発車してしまいました.
すぐ次で降りて歩いて戻ろうと考え,降車ボタンを押します.ところがバスは徐々に坂を下ってトンネルに入ってしまいます.延々とトンネルを進みやがて坂を登って地上に出ました.歩いて渡るはずだった海底トンネルをバスで渡ってしまったのです.ま,トンネルを歩いて戻るだけで十分だと,計画を変更しますが,バスは速度をゆるめずに走り続け,ついに東扇島の端っこの方まで行ってようやく停まりました.周りに何もない殺伐とした所ですが,降車ボタンを押していた手前そこで降りないわけにも行かず,しぶしぶと降ります.随分トンネルから離れてしまったことを悔やみました.

そこからが大変でした.周りにはほとんど何もありません.見渡す果てまで大きな倉庫が並んでいます.あとは四角い大型貨物車両が行き交う広い道路です.歩いている人なんて皆無です.雑草の茂った歩道が一部にあるものの,そもそもこの島では人間が歩くことなどは想定されていないようです.
目に映るのは,ひたすら倉庫と道路と貨物車両と雑草です.自分は生き残った最後の人類であるかのような世紀末感がしてきます.
トンネルの出入り口を探すのですが,ネットで地図を見ても詳しく描かれていません.道路は載っていますので,先ほどバスでトンネルから出てきたスロープの位置はわかります.しかし,そこは自動車専用道路で人間の歩く余地はありませんでした.車と人間は出入り口が違うようです.人間用の入り口はネットの地図には載っていません.
だいたい見当をつけてその辺りを歩くのですが,歩けど歩けどそれらしいものは見つからず,そのうちに人が歩ける路側帯がなくなったりします.貨物車両がゴーゴーと高速度で走りますので,もう危なくて進めず,排煙を浴びながら引き返します.ここでは人間の存在がここまで軽いのか,と憤りながら,別の道を歩き続けていますと,今度はどこかの倉庫の敷地に入ってしまい,それ以上進めなくなったりもします.

そんなこんなで延々と島の中を歩き回った挙げ句,ようやく公園にたどり着きました.どうやらトンネルの入り口は公園の中にあるようなのです.公園といってもあまり手入れがされておらず雑草も木々も茂っていて,ま,鬱蒼とした森の雰囲気です.相変わらず人っ子一人いません.なんだか死体でも転がっていそうで,少しゾッとします.

その鬱蒼とした公園の中を歩きまわって,ようやく白いコンクリートの小屋を見つけます.その中に下り階段が伸びていますので,どうやらそれが人間用のトンネルの入り口のようです.やれやれ,ようやく目標のトンネルに入れそうです. (つづく)

(ひろかべ)

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