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脳の役割

脳の3層構造と役割

近年の医術の発達により、私達人類の脳は進化の過程で分化し、大きく分けて次の3層構造になっている事が分かってきました。また危機に瀕した場合にはバイパス回路も備わっています。

脳幹……………爬虫類や両生類の脳で、生体を維持し命を守る機能を持つ
大脳辺縁系…犬や猫が持つ脳で、恋や恐れ、学習能力、記憶等を司る
大脳新皮質…人間が持つ脳で、思考機能、感覚で得た情報、自分が抱く感情を司る

命に係わる事など情動に関わる非常に重大な問題が起こった時、特に緊急事態が起こった時には辺縁系が新皮質を押さえ込んでしまいます。つまり神経回路の構造からみると情動を支配する脳が決定する部分を握っています。

系統発生的に根っこに近い分だけ情動を支配する脳は大脳新皮質のあちこちに繋がる無数の回路を持っています。その為情動は思考を司る新皮質を含む脳全体の働きにとても強い影響を及ぼす事ができます。核の発射ボタンを持つ人が神経的問題を抱えているような場合は人類全体が危機に晒されます。

物理空間から情報空間へ

かつての人間は物理空間だけが活動の場でした。例えば狩猟によって生きる古代人が山で熊と遭遇すれば『ギャ~』と叫んで一目散に逃げるか斧を振りかざして勇猛果敢に対決するか、即座に方針を決めなくてはなりませんでした。ぐずぐずしていると熊に襲われて命がありませんから、考える事なしに身体を動かさなくてはなりません。

クマが出た ❗️

このように人間は物理空間だけに生きていた古代の頃から、その環境にふさわしい脳のシステムを獲得していました。それは命の危険が迫った時に大脳辺縁系が一気に優位になり、前頭連合野の活動が抑制されるシステムです。

大脳辺縁系は比較的古い脳で人間が取るとっさの行動を司っています。対して前頭葉は新しい脳で人間の理性を司っています。大脳辺縁系と前頭連合野はどちらかが優位に活動している時はもう一方が抑制されて活動しない、という関係になっています。

一方いくつもの時代を経た現代人は古代人とは全く異なる世界に生きています。古代人と私達の大きな違いは、生きる為に命の危険を冒す必要がほとんど無いという点です。にもかかわらず現代人の脳にもとっさの行動をする為に大脳辺縁系が優位になり、前頭連合野の活動が抑制される仕組みが残っています。

現代人のサバイバルの舞台は時代と共に物理空間から情報空間に広がっています。例えば投資ファンドのディーラーの場合サバイバルの舞台は相場の先読みです。彼らは為替や債券の利回りや株価チャートとにらめっこし、政府要人の発言などを子細に分析します。そういう時に働いているのは常に前頭葉です。

Analogy(類推)

動いている物体はその運動を継続しようという傾向を持っています。それがはっきりするのはその運動する物体を急に停止させた時です。乗り物に乗っている人はその乗り物が急停止すれば将棋倒しのようになります。人体もまた慣性の法則の支配を受けているからです。

同じ事は生理学についても当てはまります。ものを見ていた目は対象が消えた後もなお、しばらくはそれを見続けているように錯覚します。残像作用と言われるものです。これは映画やアニメーション等、動画の原理です。映画を観ている人はスクリーンが白くなる瞬間のある事を意識していません。前のコマの残像がその空白を埋めるからです。

心理的残像というのもあります。A・B・Cという互いに関係のある事がある間隔をおいて起こったとします。初めのうちこそバラバラの三つの出来事と感じられているけれど、やがてその間にある時間が消えて繋がってしまい、同じような事が立て続けに起こったように思われてきます。

Aの残像がBにかぶり、Bの残像がCに及んで三つの点であったものが線の様になります。言葉に依る非連続の連続化は、これらの中でも生理的な残像に基づく映画やアニメーションに似ている点が最も多いです。

言葉でも流れと動きを感じるのはある程度の速度で読んでいる時に限ります。難解な文章あるいは辞書を何度も見なければならないような外国語等では部分・部分がバラバラになって意味を理解しにくくなります。つまり残像が消滅してしまい、切れ目が埋められないからです。

そういう時は思い切って早く読んでみると、かえって案外よく分かったりします。残像が生きて部分が全体にまとまり易くなるからです。これは読書する時のテクニックのひとつです。

ハエを叩こうと思って手を出してもなかなかうまく出来ません。これはハエの神経が脳を通さずに反射神経経由で直接身体に指示が出るからです。ハエの様に小さな脳でも人間の動作に負けないわけですから余程合理的です。同じ理屈で野球のバットでボールを打とうとしても脳経由で思考した場合には振りが遅れて絶対に打てないらしいです。

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