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時差について

テレビ放送がハイビジョンになった時の旅行は歴史と地理について学ぶ機会になりました。

テレビ放送の歴史とハイビジョンの発表

私がまだ幼稚園児の頃、隣の家がテレビを買ったという事で家族揃ってプロレスの力道山を見に行きました。幼かった私は『あんな箱にどうやって人間が入る仕掛けになっているのだろう』と不思議に思ったものでした。それからしばらくして我が家にも14インチの白黒テレビが来ました。夕方、遊びから帰ったらそれを視るのがすごく楽しみでした。学校での友達との話題はもっぱら前夜の番組の内容が中心で、それを観ていないと仲間外れになりました。

中学生の頃カラーTVが発売されて、三条京阪の駅に置いてあるのを大阪の帰りに観ました。それからしばらくして、京阪特急にテレビカーができて、なんと便利だと感じたものです。その頃の私はラジオを自作して、その分野に興味があったのですが、『TVを設計できるのはどんな賢い人だろう』と大いに憧れを持っていました。

大学では電気工学を専攻していたので商社に就職してからはオーディオ・ビデオの海外向け販売を担当しました。今から30年前の1992年にそれまで4:3の画面であったテレビが幅広の16:9になって同時に走査線の数も倍に増えました。この新技術でテレビの画質は格段に向上して興奮したものです。これにより電器メーカーには大きな商機が訪れました。

ラスベガスの展示会

当時私は放送局向けに撮影から編集までの番組を作る為の機材を海外に販売していました。そこで年に一度開催される世界最大の放送機器の展示会、米国ラスベガスのNAVで発表した展示用のハイビジョン機材を使ってニュージーランドでたまたま行われる予定のラグビーの国際試合『オールブラックス対ワールド15』の試合を撮影してこれを編集してデモ番組を作るプロジェクトに参加しました。

このプロジェクトはニュージーランド国営テレビとニュージーランド航空との協賛で実施されましたが、日本人としては稀なラスベガスからオークランドへの旅行になりました。

ニュージーランド航空

ラスベガスからオークランドへの旅

米国のラスベガスからニュージーランドのオークランドへは北半球から南半球への約10時間の飛行でまず季節が反転します。そして途中で日付変更線を東から西へ移動する関係から金曜日の夕方ロサンジェルスを出発した私達はオークランドに日曜日の朝到着しました。つまり休日であるべき土曜日が消失した事になります。日本から米国に出張すると夕方の出発でその日の朝に到着するので一日儲かったような気になりましたがその逆です。

750kgの撮影機材

ラグビーの試合日程が決まっているので、オークランドに到着してすぐにテレビ局のガレージで米国から持参した750Kgの機材を使ってハイビジョンの中継車を組み立てました。4月でしたがガレージには暖房の設備が無い為、すごく寒かったのが印象的でした。カメラが試作品の為、調整に手間がかかり、ビデオの技術の人と代理店の技術の人と私の3人は、する事が無く、照明のライトを腹にかざして暖を取っていました。この時に初めてカメラの調整はいくらやっても終わりがないものと理解しました。

ラグビーの撮影

カメラ技術の2名の方は結局朝方まで調整を続け、車で移動中も振動で調整がずれてはいけないという事で、親鳥が卵を抱くように膝の上に抱いておられたのでよほど繊細なものと認識しました。また同時に開発技術者の商品に対する愛情に脱帽の想いでした。

ハイビジョンカメラによるスポーツ番組の中継は当時、初めての事でTV局のカメラマンの人達も興奮気味でした。横長の画面はそれなりに迫力があり、ハイビジョンのお陰で観客の人達の表情まではっきりと表現できました。この時の素材は日本で編集した後、10年以上も展示会のデモ映像として使われていました。

急拵えの中継車

ラグビーの試合はオークランドと首都ウェリントンの2か所で実施されました。その間に一週間ほど、中継車で自然の美しい所やバンジージャンプなどを撮影して回りました。素材の編集はニュージーランドテレビとNHKのスポーツ局長を交えて実施した事もありデモ映像としての出来栄えはなかなかいいものであったと思います。

この当時は米国が不景気で、展示会の撤収の時に自分たちの持ち物である箱を自分で運ぶ事が労働組合によって禁じられていました。輸送する便の出発時間に間に合わせる為、急いでいる私達にとって大変不合理であると感じました。その事とニュージーランドの美しい自然と時差による出張旅費の課題が印象に残った旅行でした。

バンジージャンプも撮影した

時差

地球は球体です。私の仕事は主にアジア・中近東・欧州が多かったので、日本は私の活動範囲の中では一番東側にありました。従って、日本では毎日一番早く朝が来て、一番早く夜がきます。仕事をする場合、相手が働いている時間を計算して連絡をする事は常識でした。旅行をする時、東西に動くと時間が変わりそれを時差と言います。経度にして15度移動すると一時間の時差が生じます。

一方、南北に大きく動くと季節が反対になります。また赤道の周辺では季節はいつも夏で北極や南極では一年が一日です。地球儀を見ると良く分かりますが一時間の自転角度は360°÷24時間=15°となります。実際の国ごとに定められた標準時は国境の関係もあり経度を南北の直線で割ったものではありませんが、大体の目安にはなっています。

米国やロシア等東西に大きな国は標準時間がいくつもあります。中国も東西に大きな国ですが、東端の北京の時間で統一されている為に西に行くほど太陽の動きと実際の時間にズレが生じています。西端に棲むウイグルの人達にとっては不便な事と思いますが、慣れればそれほどでもないのでしょう。

ゲートの向こう側はウイグル自治区のカシュガル県(時差は3時間)



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