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砂の鎧

嫌に条件反射をしてしまうような通知音と共に、僕は少し熱くなったスマホを手に取る。

今となっては懐かしい、と言ってものかわからないけれど、そこには日々を過ごした風景と、みんなの笑顔がそこに。

目には見えないほどに細かく砕かれた、その姿はどことなく美しく、儚く、勇ましく、ある意味の快感を僕たちに与える。

いつの間にか、ひどく癒着したその鎧は僕の心を育むと同時に、「そうするべきである」という、論理を、どうにか新たな論理で覆そうと、その鎧に厚みを被せる。

トワに波が砂を攫うように、イマはさらえるのだろうか。
5年後の僕は、自信を持ってイマを語れるのだろうか。

新しく出会う自分と、そうにはなりたくない自分が相重なったとき、僕はその僕を受け入れることはできるだろうか。

少なくとも、ここにはこの言葉の世界に吸い込まれた僕を置いておくことにしようと思う。
多分、僕が一番好きでありたいボクだから。

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僕が問う。
「砂って元々はなんだんだろうね」
誰かが答う。
「そりゃ大きな岩でしょ。」

大きな鎧を被っていたはずの岩も、数千年の時を経てこんなにもなってしまうものかと、少し手に混じる砂の結晶に同情する。

大きな一枚岩も、果てしなく長い旅を経て、こうして僕らを感動させる。
そうしてまた、勇気をくれたその結晶は儚くも波にさらわる。

「美しさの厚み」って多分、涅色である。



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