口語 養生訓 よみ解き塾

貝原益軒 原著 松宮光伸 訳註 
口語 養生訓 日本評論社.2000.より引用

第一章 養生の道 より
42.流水は腐らず

華陀は、「人の体は労働すべきで、労働すれば穀気がきえて血脈も流通する」といっている。人は、欲を少なくし、ときどき身体を動かし、手足を働かせて歩行し、長時間1ヶ所に座らないようにすれば、”気血”は巡って滞ることはない、これは養生の要訣である。日々このようにしなさい。

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先日、慢性疼痛診療ガイドライン研修会に参加をした。
その中で、”疼痛(今回は痛み と呼ぶ)”が、ICDー11では、疾患の一つとして取り上げられていることを知った。痛みは、原因がはっきりとしているものと、そうでないものとがある。
現在、男性の20%、女性の25.7%が肩こり、腰痛、膝痛を感じており、3700億円の経済的損失となっている。

ガイドラインに沿った研修会でのトピックでいくつかあげる。
痛くても動かす
・慢性的な痛みを訴えて、そのまま動かないと不動性疼痛を引き起こし、さらに痛
 みを感じやすくなってしまい、痛覚過敏となるために動かすとさらに痛みを感じ
 やすい状態となってしまう。その場合、痛い場所でなくても良いので動かしてい
 く。
・無理をしてやりすぎず、少しずつ、段階的に動かしていく。
・動いたときの痛みは、筋肉痛のようなもので、数日すると治ってくる痛みであ
 る。リハビリによる痛みと元々あった痛みの違いを感じていく。

休日にもゴロゴロしない
・休日も、パジャマでゴロゴロは一番良くない。活動(Active Rest)を入れてい
 く。

運動するとすごいホルモンがたくさん出る
・運動をすることで、ランナーズ・ハイのような、幸せホルモン(オキシトシン)
 が出たり、ドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリン、メラトニン、エンドル
 フィンなどのたくさんのホルモンが自分の身体から出てくる。自分で分泌できる
 のである!あまり、身体を動かしていない人は、ドーパミンが鈍っているため、
 抑うつ気分が和らぐには少し時間がかかるそうだ。運動は、いろいろなホルモン
 が出るが、ゲーム中毒のような悪いサイクルは起こさない。
・さらに筋肉からは、マイオカインというホルモンが出て、サビの元となる抗酸
 化、コゲの元となる抗糖化、火事の元となる抗炎症の効果もある。

BCAAって知ってる?
運動をするときには、運動していく筋肉をつけていかなくてはいけない。筋肉が十分にないと、タンパク質を食べても脂肪になってしまうのだ。運動する前には、筋肉のエネルギー源になるアミノ酸BCAA(パリン、ロイシン、イソロイシン)を取り入れてから、運動をしていく。
BCAAを気軽に取り入れるには、魚肉ソーセージが良いそうだ。他には、鶏胸肉、鶏もも肉、牛肉、鰹、マグロ、鮭、卵、牛乳、チーズ、などを体重1kgあたり0.1gを摂取すると良い。

養生訓で言っていることは、まさに、じっとせずに身体を動かしなさい、ということ。慢性腰痛で休日はパジャマでゴロゴロテレビを見ている、膝痛で足を動かさず横になっている、そんなことを日常でよく見かける。少しずつでも動いてみると、動けていくようになり、痛みも和らぐのだから、一石二鳥。

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