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読む『小説家Z』 水野良樹×加賀翔 第4回:やらざるを得ないタイプの人間。

HIROBAの公式YouTubeチャンネルで公開されている『小説家Z』。こちらをテキスト化した”読む”小説家Zです。

今回のゲストはお笑いコンビ かが屋の加賀翔さんです。

前回はこちら


「ちょっとおかしいぞ、あの水野ってひと」


水野:リンクするのかわからないけど。僕もなんかやってないとダメな人間なんですね。

加賀:嬉しいですね。絶対にリンクする。

水野:「なんかやってないと俺はダメなんだ」って思っちゃうタイプ。練習するとか、本を読むとか、「何か行動を起こしてないとダメだろう」っていう強迫観念があることに最近気づいたんですよ。

加賀:でもちょっと水野さんを見ていて、すごすぎるとは思っているんですよ。その…量が(笑)。

水野:(笑)。

加賀:量も質も。早いしすごすぎる。勝手に意識しているときがあって、「ちょっとおかしいぞ、あの水野ってひと」って(笑)。

水野:恥ずかしいけど、めっちゃ嬉しい。僕、「全然やれてない」って気持ちなんですよ。ずっと。ずーっと。で、実際やれてないと思うの。誰がなんと言おうと、やれてないと思うんです。

加賀:はい。

水野:だけど僕、 9年前くらいに結婚したんですよね。それで、ひとと住むようになるじゃないですか。

加賀:あぁー、はい。

水野:妻は普通にテレビを観ていて。家だから当たり前ですよね。ドラマとか好きだから、ドラマをゆっくり観ている。そういう姿を見たとき、「別に人間って…」。……これ絶対、怒られるな(笑)やめとこ。

加賀:いやいや今、僕も同じこと思って笑っちゃった。

水野:逆に僕はすっごく怒られたんですよ。「何かをしようとしすぎ!あなたは!」と。その通りだなって。

加賀:わかります。

水野:いまだに言われるんですけど、「そんなみんな頑張らないよ!」って。

加賀:めちゃくちゃツボに入っています。僕も近いことを思うんですよ。で、「素敵だな」とも思うんですよ。テレビを観る、ゆっくりする、ゴロゴロする。当たり前なんですけど、そういう光景を見て、感動とかする。

水野:はい。ほんとうに。これ、まじで。

加賀:でも、「テレビ観ながら、スクワットできるじゃん」って(笑)。

水野:厳しい(笑)。

加賀:会議中とかも、ジッと座っているときがあるんですけど、「立ったらいいじゃん」って。

水野:言っちゃうんですね。

加賀:言っちゃうんですよ。

水野:「ようこそ、こちらへ」って感じ(笑)。書かざるを得ないですよね。何かをやらざるを得ない。

加賀:そうですね。本当にやらざるを得ない。

水野:そういうタイプの人間なんだと思います、お互い。


どこにも属せてない寂しさ。


加賀:前に、芸人たちがいっぱいいる楽屋で、「借金がすごくて」みたいな話をしている先輩がいたんですね。で、僕はツッコミのつもりで、「そんな借金がって言うんだったら、死ぬほどバイトしたらいいじゃないですか!今いろいろあるし」って。そうしたら、シーンってなって。芸人たちが引き攣っていて。

水野:それはないだろと。その正論を投げちゃいかんぞと。

加賀:「そんな冷めること言うな」みたいな。僕は高校中退しているし、イレギュラーな側だと思っていたんですけど、意外とどこにも属せてない寂しさみたいなものがあって。だから今日こういう話をできて嬉しいです。

水野:僕は逆に、「マジョリティーの側にいる」ってずっと言われ続けてきたんですよ。普通に学校に行って。いきものがかりも、さっきちょっと言っていただいたように、まっすぐ歌うタイプのグループで。“みんなが聴く”モード感、“みんながイコール幸せ”みたいなところを真っすぐ通ってきたひとだって。

加賀:はい。

水野:だけど僕個人はずっと、「どこにも居場所がなかった」って感覚でいるんですよ。その寂しさがあるから、逆回転して、ああいうポップなグループにいったと、自分なりに解釈していて。友だちがいなかったわけではないんだけど、なかなかコミュニケーションも取れないし、自分がやることってあんまり理解されないし。

加賀:ちょっと…たまらないですねぇ。

水野:だから、通った道は違うけれど、加賀さんと共通点があるんじゃないかなってすごく思います。あと、この話よくHIROBAでするんですけど、1~2年前、さすがに仕事量が多すぎちゃって、「休んだほうがいいですよ」ってスタッフの方に言われて。自分もそう思っていたから、予定を切ってもらって、2週間ぐらい休みをもらったんですよ。

加賀:あぁー。

水野:締め切りとかもなくて、何もしない。…ってなったら、病んじゃったんですよ。

加賀:(笑)。

水野:疲れているときの病みより、すごく深い病みに落ちてしまったんです。

加賀:めっちゃわかる感じがする。

水野:「止まったらいかん、これは危険だ」ってことに気づいて。何かやっていることが自分を繋いでいたんだって。それ以降は、もちろん体力的にヤバいときは休むようにしているけど、なるべく行動が途絶えないようにして、自分を保っているんですよ。多分、加賀さんも近いんじゃないかな。


まったく同じスマートウォッチ。


加賀:水野さんさっき、「全然やれてないと思う」っておっしゃっていたじゃないですか。でも本当は、もっとやってないやつがゴロゴロいるんですよ! これが難しくて。もっとやってないやつがゴロゴロいるから、「全然やってない」わけではない。ただ、たとえば水野さん、もっと上手に泳げるようになりたいと思ったら、週1スイミングとかでは済まないと思うんですよ。

水野:(笑)。

加賀:だって、泳げるようになりたいって目標があるから。多分、「週2~3通うかな」とか決められると思うんですけど。「いや、週1でいいじゃん」って言ってくるひとに対して、ドキッっとしちゃうというか。

水野:週1がいちばん難しい。

加賀:難しいですよね! 意味わからないじゃないですか。続けられないし。「もっと細かくいっぱいやったほうがいいのに」って思っちゃう。

水野:言っちゃえば最近、健康のために走っているんですよね。ちょっとハマっちゃって。

加賀:わかります。

水野:毎日走っちゃっているんです。今日も7キロ。なんなら先週、1週間ぜんぶ走っていて。お願いしているトレーナーさんからは、「あんまりやりすぎるのもよくないですよ。休まなきゃだめですよ」って言われるんですけど。毎日やる感じにならないと持続しない。で、たまたま、昨日僕、人間ドックだったんですよ。

加賀:あ、そうなんですか。

水野:前日からご飯とか抑えなきゃいけなくて。この2日間走ってなかったから、なんかもうすごく…。

加賀:ウズウズして(笑)。

水野:だからもう、やるってなったら、週1とか続かないんですよ。「あ、またこの曜日に走らなきゃいけない」って思うのがもうツラくて。

加賀:めちゃくちゃわかります。

水野:だから基本週5で、必ず7キロ以上。

加賀:ははは。

水野:近くの公園の外周を走っているんですけど。外周を1回まわると大体1キロぐらいなんです。で、たとえば今日は1周多くまわって、8キロ走ったとしますよ。そうするとね、もう次の日は…9キロ走らないと。

加賀:7キロでいいのにね(笑)。

水野:最初、7キロでいいと思っていたのに、たまたま1周多く走っちゃった日から、「いや、俺は次のステップに進まなきゃ」みたいな(笑)逆に「今日はちょっと疲れているし、6キロでいいか」って1回でもやっちゃうと、急に、「あー、やっぱ俺、ダメかもしれない」って。

加賀:それで言うと僕も、毎日歩いていて。水野さん、左手にスマートウォッチつけているじゃないですか。まったく同じ(笑)。

水野:まったく同じだわ! 読者のみなさんに説明すると、いちばん有名なスマートウォッチで、画面上にどれぐらい歩いたかとか、走ったかとかがすぐに見れるようにカスタマイズできるもの。それを今、加賀さんも僕も二人ともつけています(笑)

加賀:ふたりともスマートウォッチの待ち受けに数値が表示されていて。

水野:今日、小説の話をしていたはずなのに(笑)

加賀:僕も毎日、12000歩からって決めて歩いていて。で、1年間のトータルの歩数というか、距離を直線距離に直したら、どれぐらい歩いたんだろうと思って、地図アプリみたいなやつに直線をあてがってみたら、新宿からモンゴルまで歩いていたんですよ(笑)。

水野:伊能忠敬か(笑)!すげぇなぁ!

加賀:水野さんもモンゴルくらいは余裕ですよ。

水野:それ調べちゃうかもなぁ。いやぁ…、時間が来ちゃったんですけど。もう止まらないですね。これはちょっとまたいつか続きを。

加賀:ぜひ。本当に普通にお話したいです。

水野:なんならもう吉澤嘉代子さんも来ていただいて、司会になっていただいて。

加賀:聞いてもらって。


水野:でも、よりわかった気もします。この『おおあんごう』を読んだときに感じた人間味であったり。みなさんも読んで感じる部分はあると思うんですけど、その理由みたいなところを感じた1時間で。

加賀:僕も気になっていた、「水野さんってどんなひとなんだろう」っていうのが、ちょっとわかりました。いちばん聞けて嬉しかったこともありましたし。

水野:またぜひ、よろしくお願いします。そんなわけで、小説家Zゲスト、加賀翔さんにお越しいただきました。ありがとうございました!

加賀:ありがとうございました!



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