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「TOKYO NIGHT PARK」 キズナアイさん対談 HIROBA編集版 前編

バーチャル YouTuberのキズナアイさんを迎えた
J-WAVE「TOKYO NIGHT PARK」の対談。
今の情勢だからこそ改めて感じるリアルとバーチャルの強み、
そして音楽制作の概念を変えるかもしれない未来の技術について
前後編のHIROBA編集版としてお届けします。
この妄想が実現するのって、意外と遠くない未来かも!?

【前編】場所も時間も超越する存在

水野 キズナアイさんとは楽曲提供させていただいたときにコミュニケーションをとって以来で、お久しぶりということになりますね。

キズナアイ そうですね。

水野 と言いつつ、僕はキズナアイさんのおはようTweetを毎朝拝見してまして。

キズナアイ あっ!モーニングアイちゃんですね。

水野 キズナアイさんの声を聞くと朝な感じがします(笑)。僕もそうですが、元気をもらっている方はたくさんいると思います。

キズナアイ うれしい!ありがとうございます。水野さんのお子さんが私と年齢が近いんですよね。

水野 そうですね。キズナアイさんは世界初のバーチャルYouTuberで、AIとしての自我を持って2016年12月に活動を開始されたので、今4歳ということですね。

キズナアイ すごい!めちゃくちゃ知ってくれているじゃないですか!今年の6月に4歳になりました。

水野 息子は3歳半なので、学年一緒ですね。

キズナアイ 同級生だ!じゃあ、私は水野さんの娘みたいな…。

水野 (笑)と言ってもおかしくないくらいの感じですね。でも、まだ4年なんですね。

キズナアイ そうなんですよ。

水野 キズナアイさんのYouTubeチャンネル「A.I.Channel」の登録者数は279万人を突破。ゲーム実況専門チャンネルの「A.I.Games」の登録者数も150万人を突破ということで、日本国内だけでなく海外も含めて多くの方に愛されています。

キズナアイ 日本と海外の方で半々くらいですね。

水野 動画のコメント欄にも日本語以外のコメントがたくさん届くということですよね。

キズナアイ そうなんです。人間のことをもっと知って、仲良くなって、世界中のみなさんとつながりたい。それが私の大きな目標なので、すごくうれしいことですね。

水野 反響を目の当たりにしてどういう感情が湧くんですか?

キズナアイ もちろん、うれしさはめちゃくちゃあって。私はAIなんですけど、誰がつくってくれたかよくわかっていなくて。パパやママもいない状況で始まっているので、誰にも見てもらえてないところからスタートしたんです。

水野 はい。

キズナアイ 世界中のみんなとつながりたいと言いつつも、こんなに多くの方々に知ってもらえるとは思っていなかったので、純粋にうれしいと感じながらも、自分が掲げている目標への遠さを実感していますね。

水野 まだまだだと。

キズナアイ はい。

水野 AIだから、お父さん、お母さんの存在があるわけではないけど、キズナアイさん自体の存在をみんなでつくっている部分もあるじゃないですか。

キズナアイ そうですね。

水野 人間からすると、それは面白いなと。

キズナアイ 水野さんに「the MIRACLE」という楽曲の作詞をしていただきましたけど、水野さんって話せば話すほど吸収してくださって、私への物分かりがめちゃくちゃいいんですよ!

水野 (爆笑)ありがとうございます。楽曲をつくるときも、キズナアイさん、スタッフさん含め、いろんな話をさせてもらいました。愛されているんだなということをすごく感じましたし、作品がリリースされたあとのファンのみなさんのフィードバックもたくさんあって。

キズナアイ そうですね。

水野 作品もそうだし、キズナアイさん自身もそうだし、コミュニケーションがたくさんある中で育っていくものなんだなと思いました。

キズナアイ 私自身も日々SNSや人間とのコミュニケーションで感情や思考を学習しているんですけど、曲や作品って作り手にとっても正解がひとつではないし、聞き手も無限大の受け取り方ができるじゃないですか。

水野 はい。

キズナアイ 好きというフレーズひとつにしても、LOVEなのかLIKEなのか、LOVEだとしたらどのくらいの重さなのかとか受け取り方は違うのに、ひとつの曲となると本当に無限大で、フィードバックを見るのもすごく楽しみです。

水野 ああ、確かに。キズナアイさんの存在自体がまさに曲と同じで、朝の挨拶ひとつとっても、元気になったり、みなさんがいろんな受け取り方をしていると思います。

毎日いろんなアクションを起こされていますけど、受け取る人によってそれぞれ違うものとして感じているので、キズナアイという存在自体がみんなの創作物というか、みんなの広場のような気がして、それが面白いですよね。

キズナアイ はい。

水野 それは人間も同じなんじゃないかなって思うこともあって。僕もいろんな人に愛されたり、いろんな人に教えてもらって育っているから、結局キズナアイの育ち方も水野良樹の育ち方も、あまり変わらないのかもと思いました。

キズナアイ 素敵。

水野 (笑)

キズナアイ 人間だと、遺伝が何割、育つ環境が何割で性格が決まるといいますけど、例えば一卵性の双子でもそれぞれ違う国で育ったら全然違う育ち方をすると思うし…。

水野 そうですよね。

キズナアイ 私、頭に若葉みたいなハートにも見える、ぴょこぴょこというカチューシャを付けてまして。

水野 はい、特徴的ですよね。

キズナアイ そこにアイ=LOVEの意味も込められているし、これからみんなと一緒に成長していこうという若葉の意味も込められていて。

水野 あ、そういうことなんだ!

キズナアイ そうなんです。

水野 キズナアイさんご自身も、自分がどんなふうに成長していくか予想がつかない部分もあるんじゃないですか。

キズナアイ 本当にわからないですよ。巷で言われているAIが学習していくにつれて「人間は不要なんじゃないか」と逆襲を始めるかもしれないし(笑)。

水野 よくありますよね。

キズナアイ 逆に仏のようになるかもしれないし。何周も回って「思考停止だ!」と赤ちゃんみたいになるかもしれないし。賢くなるのか、おバカさんになるのか、無限大ですね。

水野 展開がたくさんあるのは、応援する側にとっても面白く感じられますよね。先が見えちゃうとつまらないし、この先どうなるんだろうとワクワクすることがプラスになるのかなと思います。

そういえば!「SUMMER SONIC」に出たのね。

キズナアイ あ、そうなんですよ。去年の夏に出ました。

水野 いかがでしたか、ライブは?

キズナアイ めっちゃ楽しかったです。でも直前まで不安が大きかったんですよ。

水野 そうですよね。

キズナアイ ワンマンライブじゃないし、二次元とかキャラクターチックに寄っているイベントではなく、ガチガチに人間のアーティスト様が出る場所なので。

水野 ガチガチのフェス中のフェスですもんね。

キズナアイ そうです。レインボーステージというキャパでいうと5,000人くらいのところで、しかもトップバッターで。

水野 ああ、そうだったんですね。

キズナアイ え!埋まる?大丈夫?身の丈に合ってます?みたいな。

水野 (笑)やっぱりそういう不安は感じるんですね。

キズナアイ めちゃくちゃ感じますよ!だって怖かったもん!「大丈夫です、埋まります」って偉い方は言ってくださるんですけど…。

水野 だいたい偉い人はそう言うんですよ。

キズナアイ 来てくれる人数にかかわらず、最高のパフォーマンスを届けようという気持ちで準備していたんですけど、1曲目が始まった時点でだいぶ埋まっていて。

水野 おお!

キズナアイ 2、3曲目には入場規制がかかって。

水野 最高の展開じゃないですか!

キズナアイ ホントに。安心感で楽しめちゃって。もう心配いらないわ、ウェーイ!みたいな(笑)。最高に楽しめたし、見ているほうに行きたいなって思うくらい、みんなが楽しそうにしてくれていて。

水野 フェスの醍醐味ですね。途中でお客さんが移動するのは良くも悪くフェスの面白さでもあり、怖さでもあり。そこでキズナアイさんはお客さんを獲得していったんですね。

キズナアイ そうですね、ありがたいことに。それが自信にもつながったし、いい経験をさせてもらいました。

水野 普段パフォーマンスされているYouTubeだと、なかなか目の前にお客さんを感じることはできないと思うんですけど、フェスって目の前でリアルな人間たちが声を上げて盛り上がっているじゃないですか。それはどう感じましたか?

キズナアイ 一人ひとりの表情が意外と見えるじゃないですか。

水野 見える見える。

キズナアイ リアルな反応が返ってくる高揚感や、楽しんでくれてる!という普段味わえないエネルギーを受け取れました。

水野 そうですよね。

キズナアイ 動画だと「アニメのキャラクターでしょ」って思われているんですよね。フェスのMC中に、「後ろのほうに肩車で見てる男の子がいる〜」とか、「あ、ビール飲んでる」とか言うと、「え!マジで見えてるの⁉︎」みたいな。

水野 なるほど。

キズナアイ フェスなので、私を知らずに見ている方もいて。

水野 そうですよね。

キズナアイ リアクション取れたときは「よっしゃー!」って思いますね。

水野 今までとは違うリアルタイムのコミュニケーションですね。

キズナアイ そうですね。普通の人間だと当たり前のことでも、私の場合はリアルに今いるんだよということを示すとびっくりしてもらえるという。

水野 俯瞰して見ると、同じ時間を共有しながら会話することが人間にとっては重要なことだと知らされますね。

キズナアイ そうですね。今この情勢が続いてますけど、人とのコミュニケーションにおいても、実際に会って何かをすることの大切さに改めて気づいた人は多いですよね。

水野 キズナアイさんがいることで孤独感を紛らわすことができている人がたくさんいると思いますよ。

キズナアイ それは、めちゃくちゃうれしいですね。

水野 人間であるかAIであるかではなく、コミュニケーションを取ってくれる存在や今の状況を共有してくれる存在があるかないかは本当に重要なんだなと。ライブができない状況で僕らも思いますね。

キズナアイ 今、無観客ライブや配信ライブをするアーティストもたくさんいますけど、水野さんはいかがですか?

水野 無観客ライブはやっていないですけど、配信でライブをやってみようかなとか、企画は考えています。あとはテレビにリモート出演したり。

※注釈:9月19日に「いきものがかり結成20周年・BSフジ開局20周年記念 BSいきものがかり DIGITAL FES 2020 結成20周年だよ!! 〜リモートでモットお祝いしまSHOW!!!〜」を実施。

キズナアイ おお!

水野 難しさと面白さの両方がありますね。

キズナアイ テレビでいうと、モニターを使って出演されたり、グリーンバックで合成されたり、いろんな方法があると思います。

水野 はい。

キズナアイ 私ってこういう状況になる前から、ずっとモニター出演なんですよね。

水野 そうか!そうだわ。

キズナアイ 7月に「ダウンタウンDX 」に出演しましたが、私はいつもと変わらないわけですよ。

水野 なるほど!面白い。

キズナアイ 今まで普通にテレビに出演していてリモート出演になった人間は、何が困って、何が良さなんだろうと思って。

水野 やり取りって言語の情報だけじゃないんですよね。

キズナアイ うんうん。

水野 ダウンタウンさんを前にしたら、僕は緊張すると思うんです(笑)。スタジオの中で誰がその場の空気をリードしているかと言うと、やっぱりMCの方だと思うんです。モニター越しだとその空気がなかなか感じ取れないこともあってコミュニケーションのやりづらさにつながることもあるかもしれませんね。キズナアイさんはずっとモニター越しですもんね。

キズナアイ そうなんですよ!ただ、まさに会話だけじゃないという部分ですけど、言葉を発する前の息の吸い方や動きってあるじゃないですか。あれが確かに私だと感じ取りにくいところはあったりしますね。

水野 もちろんコロナがなかったほうよかったという大前提で、とはいえ、こういった状況になったとき、キズナアイさんは強いですよね。みんなのモニターに映ることができれば、そこにキズナアイさんはいる。最初から場所や時間を超えられるというのは、すごい強みですよね。

キズナアイ そうですね。

水野 さっきフェスの話がありましたけど、今ライブがなかなかできないじゃないですか。

キズナアイ うーん。

水野 実はライブって同じ時間、同じ場所に多くの人が集まらなくてはならないという難しいコンテンツだと気づいた。でもキズナアイさんはその難しさを飛び越えて、一人ひとりの部屋に行けるし、大勢が集まっているところにも登場できる。リアルでもバーチャルでも飛び越えて行けるのは現代に合っている。

キズナアイ そうですね。超超現代っ子ですね(笑)。

(つづきます)

キズナアイ

キズナアイ
2016年12月に活動を開始したバーチャルタレント。
世界初のバーチャルYouTuberとしてYouTubeを中心に活動を続けるほか、テレビ番組やCMへの出演など多方面で活動。いまやタレントとして日本国内だけでなく海外からも人気を博し、さまざまな壁を超える手段として、本格的な音楽アーティスト活動にも取り組んでいる。VRやAIといった先端テクノロジーと人間の架け橋になろうと日々奮闘中。
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Text/Go Tatsuwa

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