えぐい曲が録れたと思う
そう、ラストサビは”熱く”なのだ。
今日の譜面には”一言ディレクション”が書き込んであった。
なんせ”5C”と書いてあるのだから、サビを5回やっているということなのだ。それだけでもう十分に熱い。熱苦しいと言ってもいいのかもしれない。
そんな、良くも悪くもどこか熱量が過剰な曲というのはけっこう自分は書いてきたつもりだ。洒脱に品良く、コンパクトにまとめられている…というのがどうしても得意じゃなくて、「なんか足りない気がする」と思って、展開を足してしまったり、キメをつくってしまったり。いらんことをアレコレとしてしまうことが多い。そぎ落とすほうがよっぽど難しい。
サビのフレーズは短くシンプルにしたつもりだけれど、その分、何度も繰り返したくなってしまった。ループ感は、最近のテーマのようにも思う。
メンバーやスタッフに新曲を聴かせる曲出し会では、自分が仮歌を入れたデモを聴かせることがほとんどだ。もう長い間、言われすぎていて最近は感覚が麻痺しているのかもしれないけれど、自分の仮歌は”くどい”らしい。
その”くどさ”も魅力あるくどさであれば、それが個性となって”味”となるときもあるのだろうけれど、悲しいかな、うちのグループの楽曲と”くどさ”とは相容れない。
自分で書いた曲なのに”相容れない”というのも切ない話だが、しょうがない。
必要のない”くどさ”を、ほどよく中和し、くどくなってしまうほどの熱量の真意をちゃんと汲み取ってくれたうえで、メロディをより遠くに飛ばしやすいものに聞かせてくれるのが、うちのボーカルのあのストレートな歌唱だ。
吉岡の声は、あまりモノマネされない。
モノマネ芸人の方々がフックにするような”クセ”が彼女の声にはあまりないからだ。それでいて一聴すると、その声の音色だけで吉岡のものだとわかるのだから、身内ながらすごいもんだなと思う。
白米に味噌をつける。当然、味噌の味がして美味しい。
白米にふりかけをかける。当然、ふりかけの味がして美味しい。
白米に肉をのせる。当然、箸は止まらない。美味しい。
だが白米が、ただ白米としてそこにあって。
口に運んで、これは他のどの白米とも違う。”あの”白米だとわからせる。
それは強烈な個性だなと思う。(あとすごい技術だと思う)
身内褒めばっかりしてもしょうがないか。
こんな感じのをやってみたいなー。と思っていて、曲をつくりながら打ち合わせでもこのイメージを伝えていたら、本当にエグい感じのレコーディングをしてもらえた。
生々しい、ヒリヒリする感じが好きだ。いずれ、流れると思う。
そして歌入れが待っている。
どれだけのオケでも、歌ってしまうと、歌が主役になるのだから、やっぱりシンガーはすごいなと思うばかり。
水野良樹
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