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それから


早くも梅雨が近づいてきている感じなのでしょうか。
都内はどうも雨空で、なかなかにじめっとした空気がまとわりつきます。

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さて、それから、についてです。


新型コロナウイルスをめぐる混乱のなかで、拙速なかたちでの法案成立が避けられたことは極めて妥当だと思います。検察の独立性について(検察側の暴走をくいとめるという意味でのバランスも含めて)広く、深く国会などで議論されていくことを望みますし、それを今後も注視していきたい、ということに尽きると思います。


また、今回あらためて、どの職業、どの立場にいる人も、精神的な負荷なく自由に意見が言えて(或いは言わないことを選べて)、またそれらの意見についても(相手の人格を否定したりするかたちではなく、より良い答えを探すために)自由な批判ができる社会を醸成することはそれぞれの政治、思想、信条にかかわらず大事なことだと思いました。

これは以前、斉藤和義さんが震災時に発表された歌に対して、その内容について批判するつもりが、危惧していた物事の単純化をより促進させてしまうような感情的発言を自分がしてしまったことへの反省も含めています。


どうすれば建設的な議論が生まれやすい空気を生むか。
SNSが発達した世の中で、市井のひとたちが抱えた不安や疑念をどう表現すればいいのか。勝ち負けではないのに発言すれば即座にゲームがスタートしてしまい、敵か味方かという振り分けに巻き込まれ、その双方から激しい言葉の応酬を受けてしまうようなこの状況下で、バランスをとることは非常に困難なことだと思います。こたえはなかなかみつかりません。

法案の内容に関する具体的な議論と同程度、あるいはそれ以上に「著名人の政治的発言」に関する是非もワイドショーなどを中心に注目を集めていました。世論への影響度が高いことを鑑みて、より慎重さを自身に課すことはあるべき姿勢だと思いますが、発言した行為それ自体の是非に注目が集まりすぎる状況は必ずしも健全だとは思えません。

一方でSNSでの反応を受けて、賛否含め様々な立場から法的、政治的な専門知識を有した方々が一般向けに論点を整理、提示、議論されていました。今回注目されていること以外の論点の重要性を指摘する方もいました。その多くが、とても有意義なことだったと思います。(自分自身、とても勉強になりました。そのうえで初めて手にできた理解、より深まってしまった疑念、どちらもあります)。

市井の人々の素朴な反応にたいして専門家がより高次の議論へと引き上げる。そうやって醸成されていく世論に対して、政治家が真摯に応えていく。はなはだ理想論(あるいはきれいごと)ではありますが、その繰り返しが、よりよい社会への議論につながるのだと思います。

わかりあえない社会のなかで、どう互いが共存していくか。それは大小あらゆる局面で常に問いかけられてしまうことです。生活の様々な局面で誰もが、色々な考えを自然に持ちます。ときには当事者となり、強い怒りを表明せざるをえないときもあるでしょう。ひとつの言説だけでそのひとの考え全てを判断するのは無理があります。短絡的に党派性に引き込むような姿勢はいたずらに分断を生むだけではないかと僕は思います。

いずれにしても、それぞれが社会を生きていくなかで(生活や仕事、日々の暮らしを懸命にするだけで誰もが大変です。多くを語る余裕などないひとがほとんどです)、それぞれができうる限りの範囲で政治を含めた社会の動静に関心を持ち、それを外に発信するかしないかにかかわらずよく考え、しかるべき機会で有権者としての権利を行使していくことは、言うまでもない一般的なことですが、何度確認しても良いほどの大事なことだと思います。


水野良樹

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