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「TOKYO NIGHT PARK」 宇賀康之さん対談 HIROBA編集版 前編

スポーツ総合雑誌「Sports Graphic Number(以下、Number)」編集長の
宇賀康之さんを迎えたJ-WAVE「TOKYO NIGHT PARK」の対談。
これまで同様の取材ができない苦労、コロナ禍だからこそ実現した特集など、誌面づくりの知られざる舞台裏も大公開。
前後編のHIROBA編集版としてお届けします。

【前編】人生のいろんな部分が、スポーツにはある。

水野 今回のゲストは、雑誌「Number」編集長の宇賀康之さんです。よろしくお願いします。

宇賀 よろしくお願いします。

水野 Numberでは約5年間、連載を持たせていただきました。2020年は、本来であれば東京オリンピック・パラリンピックが開催されているはずでしたが…どんな一年でしたか?

宇賀 2020年はNumberにとって1000号という節目と創刊40周年、そこにオリンピック・パラリンピックもあるということで、忙しい一年になるはずでした。

水野 そうですよね。

宇賀 緊急事態宣言が出る直前の3月に1000号を出し、4月に40周年を迎えましたが、その後はスポーツイベントがなくなって。再開後もリモート取材が中心で、大変な一年でしたね。

水野 毎号の企画を進めるのも大変だったと思います。

宇賀 やりたいことは常にたくさんありますが、スポーツイベントあってこそ、アスリートの方々が活躍してこそという雑誌なので、その時々にできることをやるしかないなと。取材が難しい時期は、振り返り企画を中心に構成しました。過去の名勝負などを改めて取材するノンフィクション特集は、これまでもやってきたので。

水野 はい。

宇賀 5月に発行した1022号「今だからできること。BASEBALL GOES ON」では、リモートインタビューで対応いただいて、大谷翔平選手のスマホ画像を表紙にしました。

水野 うーん、すごい。そんな中、僕の連載も5年の役目を無事に果たすことができました。ありがとうございました。

宇賀 本当にありがとうございました。

水野 連載のやりとりの中で、「大変な状況ですよね」とメールをお送りしたら、「いまだからこそできる振り返りの特集を丁寧につくりたいんです」と、意外と明るい返信をいただいて。野村監督やマラドーナといった偉大な監督・選手が旅立ったということもあって、改めてその功績を讃える企画もたくさんありました。そういう意味では、見つめ直す一年になったのかなとも思います。

宇賀 そうですね。僕が特にやりたかったのが、「こんな夜に野茂英雄が読みたい。」(1009号)という企画でした。1995年の野茂さんのメジャー挑戦から25年ということで、いろんな方に野茂さんを語っていただき、野茂さんご自身にもインタビューさせていただいた、特別な思いの詰まった一冊になりました。

僕が入社したのも1995年で、新人ではありましたがロサンゼルスでのドジャース取材に同行させてもらったんです。そこからの思い入れもあり、こういう時期だからこそ野茂さんの活躍を読んでスカッとしたいという思いもありました。「こんな夜に」というのは、そういったイメージなんです。

野茂さんは普段ならアメリカにいらっしゃるんですが、コロナ禍で日本にいらっしゃって取材が実現したんです。まさに、コロナの状況があったからこその特集ですね。

水野 なるほど。リモート取材しかできないからこそ、壁も取り払われたというか。本来なら現地に行って、直接お会いしなきゃとお互いに思っていたところ、よりスムーズに進んだところはあるかもしれないですよね。

宇賀 それはありますね。山中伸弥教授と野茂さんの対談もリモートで行いました。山中教授が若い頃にサンフランシスコに留学していたときに、野茂さんがドジャースで活躍していたんです。「野茂さんのご活躍によって自分たちも鼓舞された、ぜひお礼を申し上げたい」ということで、忙しい最中での対談が実現したんです。

水野 すごい!山中教授と野茂さんのように、ジャンルが異なる方同士でも、海外での挑戦という共通項がシンクロして勇気づけられることもあると。僕の連載もそうですが、Numberには異ジャンルの人もたくさん登場しますよね。

宇賀 そうですね。

水野 東京オリンピック・パラリンピックに関連して、桑田佳祐さんが表紙に登場された号(997号)もありました。音楽とスポーツだったり、芸能とスポーツだったりと。スポーツを軸としながらも、スポーツだけに止まらず、いろんな人に門戸を開いてくれている印象があります。

宇賀 そうですね。Numberという雑誌も、文藝春秋という会社自体も、人間に興味があるんですよね。人生のいろんな部分が、スポーツにはある。その部分を抽出して、物語、インタビューにして読者の方にお伝えしたいという思いが原点にあります。

水野 この一年、リモート取材がうまくできたとはいえ、取材対象者であるアスリートの方々とコミュニケーションを取るのはすごく難しかったんじゃないでしょうか?

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