見出し画像

圧巻の職人技とカジュアルの融合。YUEQI QI(ユェチ・チ)2025年春夏コレクション

スケジュールが後半になるにつれて、実力派のベテランブランドのコレクションが増えてくる楽天ファッションウィーク。4日目最後のフィジカルショーを開催したのが中国人デザイナー、ユェチ・チによる自身の名を冠したブランド、YUEQI QI(ユェチ・チ)だ。

デザイナーのユェチ・チは、名門セントラル・セント・マーチンズ出身。卒業後はCHANELで刺繍アトリエを学び、自身のブランドを立ち上げた今ではGUCCIとのコラボレーションを実現するなど、大手メゾンとの関わりも深い。

そんな彼女が今回、鍛造鉄と鉄格子をインスピレーション源とした新作のコレクションを発表した。職人がひとつひとつ叩いて形成する鍛造鉄と、大量生産を目的として一気に造られる鉄格子、その製造過程の対比を洋服のクリエイションに落とし込んだという。

まず特筆すべきは緻密で精巧に造り上げられたビーズ刺繍だろう。ファーストルックから登場したのは、職人技と表現するしかないほどに見事なまでに完成されたビーズ刺繍になんとスポーツのユニフォームを合わせたルック。

今回はヘッドピースの制作には、Maison MargielaやMarc Jacobsなどビッグメゾンのヘッドピースも担当し、その精巧なクオリティで世界中から高い評価を獲得している河野富広を起用している。

職人と職人がそれぞれ手作業で造り上げたそのルックはもはや一つの芸術品と言っても過言ではないクオリティだが、そこに合わせるのスポーツのユニフォームだという点がミソだ。そのユニフォームはインナーが透けるくらいの半透明のものを使用しており、狂気的なまでに華麗なクリエイションのルックを一気にカジュアルに変化させている。

また、アイテムの随所に刺繍したかと疑うほどの立体感のある鎖をモチーフとしたプリントが施されている点も面白い。

作り手の技術が恐ろしくハイレベルだからこそ、ルック全体の雰囲気や細かなディテールに遊びを加えることで、あくまでも洋服として、人々にとって親しみやすい印象を与えているのでは、と感じた。

このユェチ・チのクリエイションをカジュアル且つヘルシーに変化させるために今回大きな役割を果たしたのがコラボレーションアイテムの数々だ。
まず、ルック中盤に登場したホワイトのスリーストライプが特徴のこのアイテムは「Adidas」とのコラボレーション。ベースの形は下着をモチーフにレースや得意のビーズ刺繍と合わせることで、対比によるモードとロゴのアイコニックさを共存させている。
また、もう1アイテム発表されたアイテムが「UGG」とのコラボレーションによって生まれた構築的なブーツ。ブラウンが特徴的なUGGのアイコン的ブーツをもとに、内側に水色を挟むことでどこか近未来的で若々しい雰囲気を演出している。

今回筆者は初めてユェチ・チのコレクションを拝見したが、このコレクションを見るとなるほど、なぜこのブランドが若年層のモードラバーに愛されているのか理由がわかる気がした。

発表された全てのルックを見ると、ローライズのデニムや「UGG」とのコラボブーツ、キャップにタイトなトップスなど、どこか全体的に「Y2K」のカルチャーを感じた点が印象的だった。そこに合わさる緻密に造り上げられたビーズ刺繍。このバランス感が非常に絶妙にマッチしており、是非とも展示会で直近で見たい、という想いに浸りながら会場を後にした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?