ヒロシが20年続ける習慣。「好きを仕事に」は一冊のノートから始まった


2020年12月18日 Forbes JAPANより

好きを仕事に──。まさに多くの人が憧れる理想的なワークスタイルを実現してきたのが、お笑い芸人・YouTuberのヒロシだ。

「ヒロシです」からはじまる哀愁ある自虐芸で一世を風靡し、一時は最高月収が4000万円を超えるほどの人気者に。2015年には、大好きなアウトドアやソロキャンプをテーマにしたYouTubeチャンネル「ヒロシちゃんねる」を立ち上げ、今年9月にはチャンネル登録者数100万人を突破した。

さらに、この12月には、少年時代を回想した最新エッセイ『沈黙の轍 ずんだれ少年と恋心』(大和書房)を刊行。独特な視点と心に染みる語り口がクセになる、意外な文才を発揮している。

「一発屋」などという世間のイメージとはうらはらに、着々と、飄々と、自分のやりたいことを実現させてきたヒロシ。「やりたいことしかやってない」という彼は、なぜ現在の成功を掴めたのだろうか。

その秘密はずっと続けてきた習慣にある。ひとつは「種まき」、そしてもうひとつが、今回初めてその存在を明かしてくれた「やりたいことノート」だ。やりたいことだけやって成功する方法について、詳しく語ってくれた。

やりたいことをやってるだけ。「戦略」なんて何もない

ピン芸人でブレイクしてから一度、テレビの世界を離れました。トーク番組のひな壇も先輩との付き合いも苦手で。精神的に追い込まれすぎてマンションから飛び降りようとしたこともあった。これ以上、テレビに出るのは無理だと思いました。2009年頃です。

それからは、複数の「種」を同時にまいてきました。「種をまく」といっても、ただやりたいことをやるだけ。頭で考えるだけじゃなく、「やりたい」「面白そう」と思ったら、その瞬間に小さくてもいいから「動く」ことをとにかく続けました。

カフェ経営もやったし、バンドもやった。その中で、自分の予想を超えるほど当たったのがソロキャンプYouTubeだったんです。

キャンプは小さい頃から好きでした。YouTubeを始めたのは、自分のための記録。たとえばエッフェル塔に行ったら写真を撮りたくなるように、キャンプに行っていたら自然と焚き火の動画を撮りたくなった。そして「YouTubeというものがある」と知って、1人のキャンプを記録するために投稿をはじめて、続けていたら見てくれる人が増えたんです。

とはいえ、やりたいことをやっても、成功もあれば、失敗もあります。じゃあ成功するための僕なりの「戦略」があるのか? 正直、何もありません。

皆、僕がたくさん動いて種まきしたことのうち、「成功」した部分しかみえていないだけなんです。たとえばYouTubeを始める前、「ヒロシのワクワク放送局」という生配信をしたら、一応全国区で顔が知られた芸人なのに、視聴者は2人だけでした。でもそんなことあったの誰も知らないでしょ。知っているのはその2人だけ。気づかれていない失敗を他にもたくさんしてきました。

とにかく、やりたいことは全部やればいい。その過程で、何か結果がでるかもしれない。でもやりたいことだから、結果がでなくても楽しいんですよ。

書きなぐった「やりたいこと」に自分を寄せていく

「自分のやりたいことがわからない」という人には、20年間つづけている僕の習慣が役に立つかもしれません。それは、毎年正月にノートに手書きで「やりたいこと」「なりたい自分」を箇条書きにすることです。

大学生の頃から始めて、芸人として落ち目の時も、今でもつづけています。ただ書くだけですが威力はすごくて、ソロキャンプの仕事や会社の経営も書いてから実現しました。



大切なのは、「やりたい」「こうなりたい」と思いつくことはずらーーーーっと全部書き尽くすこと。僕は何ページにもわたって書くこともあります。

「できる、できない」は一切考えない。ストッパーをかけず、自分の欲望をそのまま書くんです。ちょっとしたことから大それた夢までなんでもいい。「携帯を新しくする」「金髪にする」「年収3億円にしたい」「総理大臣になる」「CAとチョメリたい」だっていいんです。

ノートを誰かに見せたら「総理大臣になれるわけない」「あの有名女優とやれるわけない」と言われるでしょう。でも人に見せるものじゃないから思いつくまま書けばいい。

書くことの何がいいか? アンテナが立つようになるんですよ。たとえば「芸人になりたい」と書いたら、テレビでオーディション番組の告知が映っていると「ん?」と反応できるようになります。それが365日積み重なって、自然と「やりたいこと」へ意識や行動が引っ張られるようになるんです。

「やりたいこと」の1年以内の成功率は悪いですよ。普通の大学生の頃に「芸人になる」「冠番組をもつ」って書いていましたから。でも長いスパンで考えたら効果は大きい。10年前の正月に書いたことは、ほとんど達成していると思います。

書いたら見返すことはありません。1年後の正月になったら新たに「やりたいこと」「なりたい自分」を書いていく、とても簡単なことですよ。

「始めたら3年は続けた方がいい」なんて信じない

やりたいことも、気が乗らなくなったらやめればいい。「案外楽しくないな」と思うかもしれないし、僕も釣りはずっと好きだったけれど、キャンプを始めてからぱたっとやらなくなりました。また無理のない範囲で続ければいい。

YouTubeは5年も続けているから、「継続できる努力家」だと思われることがあるけど、それはぜんっっっっっぜん違う。

よく見てもらうと、YouTubeは不定期更新なんです。お金稼ぎが目的なら毎日更新の方がいいと思うけど、僕は気が向いたらキャンプに行って、投稿するスタンス。だから5年やっている割に本数は少ないんですよ。

僕は「継続」できない人間です。小さい頃から憧れていた漫才師になったとき、ネタを定期的に作るどころか、サボっていた。翌日にネタ見せがあるのにネタが完成していなくて、少し焦っていても、コンパの誘いがあったら迷わずコンパに行ってましたから。

でも、そうやって途中でやめると、他人から批判的な目線を向けられることがあるかもしれません。「働いたら3年は続けた方がいい」とか言うけれど、そういうよくわからない押し付けは、子どもの頃から疑問でした。

小学生のときにサッカーする時、自然と僕はディフェンスに回されて、クラスの人気者は勝手にフォワードだったことがよくあって。彼らが点を決めて喜んでいるのを僕はただ後ろで見ていたんですよ。「なんでこいつがモテるために俺が付き合わされなきゃいけないんだろう」って思いながら。だって、サッカーの技術試験をして配置が決まったんじゃなくて、クラスの暗黙のヒエラルキーで決まっているだけなんだから。

つまり、誰が決めたのか、根拠に納得できないなら、一切気にしなくていいんです。やめたいならやめて、続けたいなら無理なく続けたらいい。

言えることはただ一言、「動け」



僕はYouTube以外のチャレンジも「失敗」とは思っていないんです、生配信もカフェもバンドも。小学生の頃は漫画家になりたいと思って、赤塚不二夫の『まんが入門』を読んで、Gペンやインクも買ったけれど、すぐやめました。でも、三日坊主だって結果が出なくたっていい。そのとき、やりたいことをやれた。

2009年にテレビを離れてから「『芸人なのにYouTubeやってる』と思われたら恥ずかしい」と踏み留まっていたら、今はありませんでした。

先のことを考えすぎて動かないのが、一番良くない。絶対に成功する法則なんてないんだから、「やりたい」「おもしろそう」と思った瞬間に、小さくてもいいからすぐに行動すること。僕から言えるのは一言に尽きます、「動け」。

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