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可愛い子には旅をさせる話 その4

これまでのあらすじ。机上旅行で脳内旅行トレーニングを積む小学生の私。親戚からの圧で遣”徳島”使として乗り換え4回、11時間越えの初めての一人旅に出発することになる。

流石に名古屋駅の新幹線乗り場までは送ってくれた両親とホームで別れ意気揚々と新幹線自由席に乗り込みます。手には乗り換えと時刻を書いた手書きのメモ持参です。また非常に忘れ物が多い小学生だった私のために母は鞄は小さめ、かつ一つにまとめてくれました。お隣のおじさんに岡山まで行くんですとお話しして乗り過ごし対策もバッチリです。安心して座ると四国出身である我が家の冬の主食。小さな鞄の3分の1を占める伊予ミカンをカバンから取り出し完全リラックスムードです。

子供の頃からあまり緊張をしない性格だった私。強制労働から解放された喜びも相まって不安など全くなく、ただただ自分の決めたルートを初めて旅行する楽しさでいっぱいでした。新幹線を岡山で乗り過ごすこともなく。旅は順調に進みます。宇野線に乗りかえ車窓から見える田圃を眺めながら初めてみる景色だな、遠くまで来たなと珍しく緊張したのを覚えています。宇高連絡船は1988年に廃止されてしまいましたが私の小学生の頃はバリバリ現役。今でも左舷の窓から見える瀬戸内の島々の影ははっきり思い出すことができます。今思えばあの島影には芸術の島として有名になった直島も含まれていたのでしょう。新幹線、在来線、連絡船と乗り継ぎ、高松に上陸すると今度はディーゼル区間に突入します。なんと徳島県は日本で唯一電車が通っていない県なのです。そのため県民は「電車」とはよばず「汽車」と呼びます。これだけはずっと変わってません笑。最近はJR四国の赤字問題とディーゼルの環境問題が叫ばれているのでそのうち日本で唯一鉄道のない県になってしまうのではないかと密かに危惧しています。徳島で再度別のディーゼル区間である牟岐線に乗り換えここからはラストスパートです。旅の途中、隣になった旅客にはほぼ例外なく一人なの?と聞かれ、一人で名古屋から徳島に行くと伝えると例外なく驚愕され、貴重な年末の食糧を分け与えられた私。乗り換えも切符の購入も全く問題なく、鞄のミカンが残り3つほどになった頃、無事に日和佐駅に到着し親類からの熱烈歓迎を受けたのでした。

10日ほどの滞在中、私はお年玉集めに奔走しました。そして小学生一人旅の効果は抜群でした笑。どこの親戚に行っても「よく来たよく来た!」と最高級の賛辞を受け、私史上最高額のお年玉をいただき、ついでに弟の分もくださいと兄弟思いな発言をするとなおさら「偉い偉い」と褒められるというポジティブなPDCAサイクルを父方、母方の両方で回し続けお年玉を回収し続けました。普段行かない親戚の家にも招待されたりもしたので小学生の一人旅効果は絶大でした。

そもそもはお年玉を回収に行く旅ではなかったのですが自分で計画した旅行の達成感、そしてそれを褒めてくれる親類や旅中知り合った大人、成果物としての有り余るお年玉。旅行というのはなんと素晴らしいことか。初めての経験、初めて話す優しい知らない隣の旅行客、初めて訪れる場所、初めて乗る電車、船、汽車。全てが楽しく興奮に包まれていました。私の旅の原点はまさにこの旅にあります。

誘拐や事故にあう可能性もあります。小学生に私のような旅行をした方がいいとおすすめをしているわけではありません。時代も違います。私がお伝えしたいことは年齢が若い時の旅行というのは新鮮な「知る」喜びに溢れているということです。そして自分に自信を持ち、周りを信じ、計画を立てて実行するというポジティブな環境に身を置くことができることは人格形成にとても良い影響を与えるのではないかということです。私がTRIPで若い人たちに旅行するきっかけを提供したいと思うのは、私自身のこの旅の経験があったからです。

旅好きに育った私はその後、世界20カ国以上を訪れ、アメリカ、台湾、中国、スペインに住み、言葉を習得し生きる術を学びました。旅行をすることも、知らない人と話をすることも、初めての経験をすることも不安を持つことはありません。むしろワクワクします。結果今までに20回以上引越し、旅するように暮らす人となりました。地球のどこでも生きていける、地球が自分のフィールドであると感じることができるようになったその始まりは徳島に行ったこのはじめてのひとり旅にあります。

もちろん人間にはさまざまな価値観があり、私のような生き方や暮らし方、働き方が一番良いという気持ちは全くありません。ただ若い頃に旅をした経験した上で、自分にとって最適な生き方を選ぶことはその後の人生をより豊かにするのではないかと思います。

若い人たちにさまざまな経験をしていただけるよう素敵な旅を提供できるよう、楽しくて便利な旅のサービスを作ることができれば嬉しいなぁと思っています。 そしてそのような事業をTRIPの仲間と一緒に行うことは私にとって新たな旅でもあると思っています。旅行っていいですよね!!

わんわん、またね!!

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