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白蛇伝追記 弥栄6事件回想シーン

(内藤家の庭)

作蔵・・・だから解らない人だね。

五平・・・旦那様は、この土地を買って下さろうって
     言ってるんだよ。

安代・・・何で、アンタなんかに。

作蔵・・・それは、この山田が説明に上ったはずです
     よね。

安代・・・とても受け入れられない条件でね。

作蔵・・・いや、ウチとしては結構良い条件を、出し
     て居るつもりですがね。

五平・・・そうですよ。ここら辺の相馬の半分も、
     出そうって言うんですよ。

作蔵・・・これ、失礼な事を言っては、いけないよ。

安代・・・何が、良い条件ですか。

五平・・・此方は、何と言っても白蛇様という厄介な
     ものが、存在している。
これでは、一般の人はこの土地を買おうと
     は思わない。

安代・・・絶対貴方達にはどんな事があってもこの土
     地は売りません。

五平・・・何度いっても解らないんだな。

安代・・・良い買主にチャチャ入れているじゃない。
     こっちだって聞いてるんですよ。

五平・・・当たり前じゃあありませんか。

安代・・・警察にこの事を言えばアンタは業者登録
     を取り上げられるんですよ。

五平・・・売主が承諾すればいい事です。此方は焦っ
     ちゃいませんのでね。

安代・・・内は叔母がその気にならなければ此処は
     売りません。

五平・・・他の業者には売る事にしたと言っておい
     ででしたよね。

安代・・・叔母の気が変わりまして売らない事になり
     ました。

作蔵・・・そうそう、そうやって、あんたの所は何時  
     も小作人扱いだ。

安代・・・何の話ですか?

作蔵・・・わしら小作人はいつまで経っても、どんな
     に頑張っても大庄屋様は見向きもして
くれないんだ。解っているが、きもの焼け
     る事だ。
私等小作人には塩っぱい水を飲めとい
     い。自分たちは天下の名水という水が湧き
出す井戸を持つ。私等がまともな水が飲
      めたのも水道が通ってからだ。いやあ
その天下の名水、美味い水が飲みたい
     と、あんたの土地にご執心の私の気持ちも
解ってくださいよ。
安代・・・じゃあ聞きますが白蛇様のお社の出入り口
     の楠を散々に切ってしまって、
白蛇様にも邪険な事をするつもりでしょ。

五平・・・買ってしまえばこっちの勝手。隣から何も
     言ってもらっては困りますよ。

安代・・・白蛇様に祟られますよ。

作蔵・・・え、私等をおどすんですか?

安代・・・内藤家では大事な物なんです。

作蔵・・・また内藤家ですか。さあ早く名前を書いて
     印鑑を押すんだな。

安代・・・嫌です。売る気はありません。

作蔵・・・(吸って居た葉巻を安代の顔に吹きかけ
      る。)さあ書け。

安代・・・(むせながら)嫌です。警察呼びますよ。

作蔵・・・バカな女だ。(更に煙を吹きかける)五平
     抑えろ。

(安代抵抗するが激しく咳き込みポケットから薬瓶を出す。)

(作蔵その薬瓶を奪い取る。安代ともみ合いになるが急に安代が心臓を抑えて倒れる。
安代が苦しそうに身悶える。
作蔵薬の瓶を五平に投げる五平縁の下に投げ込む)

作蔵・・・オイ、オイ。

五平・・・手元が狂っちまいましたよ。アレ、旦那。
     奥さん様子が変ですぜ。

作蔵・・・どうした?オイ。薬、薬。ちくしょう、名
     前を書かないうちに死ぬなよ。
もういい。見つからないうちに退散だ。
     退散するぞ。
(作蔵サッサと裏庭に消える。)
(五平、入ってきた元治に鍵をかけるように言う。)

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