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白蛇伝追記 弥栄11 お業

僧侶と娘と巫女。

よし子・・本当にありがとうございます。

僧侶・・・私も丁度、四国、愛媛の松山に用向
きがありましたので、お役に立てれ
ばよろしいのですが。

巫女・・・本当にこちらにお出でと聞き、神仏
のお導きをかんじました。

僧侶・・・お話はあらかじめ、伺いました。
巫女様のお読み取りなら間違いない
と思います。ただ私がやるべきこと
を確認しなくてはなりません。

よし子・・どうぞ。

僧侶・・・巫女様の言われますには、
精霊となられたご先祖の白蛇様と
まだ生きておられる、白蛇様がおら
れるようですね。

よし子・・ますます、私どもでは、手がつけられ
ません。

僧侶・・・全ての現象には、始めと言うものがあ
ります。其れを解くことこそ本質を見
極める事なのです。
巫女・・・白蛇様もそれをお望みです。

僧侶・・・私も明日には京都に用向きがありま
す。今夜にはこちらを立ちます。
巫女様にお願いしました、道具
立はそろいましたか?

よし子・・ハイ、榊、お酒、お塩、そして水はこ
この水を使います。
私は白い作務衣を用意しました。

僧侶・・・結構です。おお、立派なお榊ですね。

巫女・・・僭越ながらわたくしが補佐させてい
ただきます。

僧侶・・・心強いです。それではまいりましょ
う。

僧侶・・・ところでこちらは、奈良原神社様とは
ご縁がありますか?
よし子・・ハイ、家の敷地内にある、お遍路さん
の道しるべにその名が記されています。
子安大師様のお像を守らせて頂いており
ます。

僧侶・・・やはりそうですか。白蛇は皇室に近い
と感じたものですから。お気になさ
らずに。

巫女・・・読み取りの時、この海には人々の航海
の安全を守り、皇室の安寧を願う、般
若姫が入水している。我々はこの姫よ
り永遠の命をもらった。いままで人に
害を及ぼさないで、来れたのも、この
姫のおかげである。と言われました。

僧侶・・・この海の守りとなっている姫さまにも
御礼申し上げましょう。

よし子・・有り難いことです。

僧侶・・・それではまいりましょう。

・・・暗転・・・

暗い蔵のなか

僧侶・・・まずは、施主の方のお心をお示し下さ
い。

よし子・・永いあいだ、お祀りもせずに放ってお
きまして、申し訳ありません。
今日真心を持って白蛇様のお祀りをさ
せていただきますので。どうぞお鎮ま
り下さい。

僧侶・・・こちらの屋敷と蔵の払いを致しましょ
う。榊に此方の水をたっぷりつけて祓
いたまえ、清めたまえ、と言って、上
から下に払って下さい。

巫女・・・私もお手伝いいたしましょう。

僧侶・・・それは心強い。

三人は真剣に榊を振るう。すると、榊を振ったさきから、明るくなって行く。いちじんの風が吹き

僧侶・・・お心が通じた様でございますね。
次は私の番です。

僧侶祈りの陣立てを行い巫女は僧侶の背後にひかえる。

僧侶・・・僭越ではございますが、此方のお屋敷
にはまだご成仏成されない御心の念が
あられます。この方を般若心経にてご
成仏の道に導かせて頂き、後は無言の
行となります。

よし子、その言葉を聞き、頭を深々と下げる。
彼にはわかっていたのだ、何も話さなくても、この人には通じていた。

僧侶・・・それでは、施主様は先程のお気持ちを
無言でお伝え下さい。

静かに読経が始まる。
僧侶・・・かんじーざいぼーさーつー ぎょうじ
んはんにゃーはーらーみたじー しょうけんごーうんかいくう どーい
っさいくーやく しゃーりーしー しきふーいーくう くうふーいーしき 
しきそくぜーくう くうそくぜーしき じゅーそうぎょうしき やくぷーにょ
ーぜー しゃーりーしー ぜーしょー
ほうくうそう ふーしょうふーめつ ふーくーふーじ
ょう ふーぞうふーげん ぜーこーく
うちゅう むーしきむーじゅーそうぎょうしき 
むーげんにーびーぜっしんに
むーしきしょうこうみーそくほう 
むーげんかいないしーむーいーしきかい
むーむーみょうやくむーむーみょうじん 
ないしーむーろうしー やくむーろう
しーじん むーくーしゅうめつどう 
むーちーやくむーとくいーむーしょー
とくこー ぼーだいさったー えーはんにゃーはーらーみーたーこー 
しんむーけーげー むーけーげーこー 
むーうーくーふー おんりーいっさいてんどうむーそう 
くーきょうねーはん さんぜーしょー
ぶつ
えーはんにゃーはーらーみーたーこー 
とく
あーのくたーらーさんみゃくさんぼー
だいこーちーはんにゃーはーらーみー
たー ぜーだいしんしゅー 
ぜーだいみょうしゅー
ぜーむーじょうしゅー 
ぜーむーとうどうしゅー 
のうじょーいっさいくー 
しんじつふーこー こーせつはんにゃーはーらーみーたー
しゅー そくせつしゅーわー ぎゃーていぎゃーてい はらぎゃー
てい はらそうぎゃーてい ぼーじーそわかー
 はんにゃしんぎょう

般若心経の後、無言の行に移ると、白蛇様が現れる。生きている白蛇様と僧侶の問答。

僧侶・・・由緒正しき、白蛇様。どうぞ山にお帰
り下さい。
白蛇・・・やはり、一族のことを考えると、それ
が一番良いことの様だ。
僧侶・・・奈良原神社の有るお山があなた方の故
郷のようです。道しるべも有りますか
らお分かりになると思います。
白蛇・・・永い間住まいました、古巣の社から出
ることになります。しかし、ご時世で
ございましょう。
僧侶・・・ご了解ありがとうございます。

白蛇様静々と退場。巫女、深々とこうべを垂れる。

白蛇様と入れ替わり、白蛇の精霊が登場する。
精霊と僧侶の問答。

精霊・・・我ら祟り神として過ごす事は好まな
い。故にお前の提案をかんがえてみよ
う。
僧侶・・・恐悦至極に存じあげます。
私の提案は太古の昔より、天界の龍神
の従者としてのお役目を果たして来ら
れた貴重なる御方様方の今後の尊きお
役目の遂行のため、動いていただきと
う、ございます。

精霊・・・ほうよ、ほうよ。我らのお役目を果た
せばならぬ。
此の家の事のみにかかずらわっては。
おれんでな。

僧侶・・・私に縁を持ちます、由緒正しい寺に海
の潮の満ち引きと共に水位が変わる池
をもつ所がございます。
いかがでございましょう、其方の寺の
了解は得ました。
いつでもお迎えしたいと、申しており
ます。
精霊・・・もちろんここの龍宮、龍道に近くなく
てはならない。

僧侶・・・こころえて、居ります。お任せ下さ
い。

精霊・・・そちに着いて参ろう。

僧侶・・・ご案内いたしましょう。

巫女・・・アッ。成就の雨でございます。おめで
とうございました。この雨がふればも
う大丈夫です。

よし子・・ありがとうございました。ありがとう
ございました。これで母が恨まれる事
は無いのでございますね。

僧侶・・・ハイ約束を私とされました。
わたくしが、お約束を果たします。

巫女・・・又私も白蛇伝を世に知らしめるお役目
シッカリはたしましょう。

よし子・・摩訶不思議な現象が私のこんなに身近
にあったなんて、まだ信じられません
しかし、私達人間は、見えない世界に
知らぬ事とはいえ大変失礼な理不尽な
事をしているのですね。
お叱りが有って当然だと思いました。

巫女・・・願い事をするだけして後は忘れてしま
う。そんな人間が増えましたからね。

よし子・・襟を正さなければなりませんね。
本当に本日はありがとうございました

三人改めて成就の雨を傘を開いて、確かめる。
傘に雨が当たる音。


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