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白蛇伝追記 弥栄7 良平と解体屋

(居酒屋。飛松が良平を待っている。 )

良平・・・あ、お待たせしました。

飛松・・・イヤイヤ、坊っちゃん。待っており
ましたよ。どうぞこちらへ。

良平・・・大叔母さんの決断が遅くてまいった
よ。

飛松・・・何になさいますか?ビールで、よろし
いですか?
良平・・・あー。いいね。

飛松・・・伊東の大奥様はここらでも、有名なし
っかり者ですからね。

良平・・・それに、頑固だしね。

飛松・・・マア、グットどうぞ。一気に、サアど
うぞ。

良平・・・ありがとう。上手く行くと思うよ。た
だちょっと待ってくれ。

飛松・・・土地の名家には良くあるんですよ。
先祖がどうの、お祀りがどうのと先に
伸ばすタイプの方が多い。お母様も手こ
ずっておられました。

良平・・・母さんの事も知っているの?

飛松・・・イヤ、ウワサですよ。ウワサ。
買いたいと言って来た方はよく分かる
方ですから、逃げはしません。

良平・・・マア、僕は此方の言い値で買ってくれ
る人に文句はないよ。

飛松・・・そうです。そうです。お任せ下さい。

良平・・・あんなに大きな土地ですから、よほど
ご執心で、思い入れがあるんでしょう
ね。
飛松・・・そうですね。ご執心と言う言葉は ぴっ
たりですね。まあ、お任せください。
サアサア、もう一杯。

(良平は飛松のしゃくにどんどんピッチが上がっていく。飛松、良平がトイレに立ったすきに店の外に出て、買い手と電話している。 )

飛松・・・ハイ、上手くいっています。買い手が
源蔵さん、貴方だということは、おく
びにも出していません。ご安心下さ
い。そちらに又参りますから、打ち合
わせどうりお願いします。あっもどっ
てきました。失礼します。

良平・・・明日は大叔母さんと一騎討ちだよ。さ
あ、今夜はゆっくりとやすみまし
ょう。おやすみ。おやすみ。

良平フラフラしながら店を出ていく。

飛松・・・やれやれ手の焼ける坊っちゃんだ。イ
ヤイヤ、もう少しだな。

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