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白蛇伝追記 弥栄10 呼び出し

翌日。良平は飛松をよびだした。

飛松・・・やあ、坊ちゃん。あれそちらは?

よし子の旦那・・・刑事あがりの友人ですわ。

飛松・・・な、なんだって、急に坊っちゃんなん
だって言うんですか?

良平・・・いや穏便に話しを付けようと思って
さ。
飛松・・・せっかく良い話しを持って来てやって
るのに、これはないだろう、こんな商
売やってりゃあ。すねに傷のひとつや
ふたつありますんでね。
よし子の旦那・・・そうだろうよ。おれのいみな
は公安のサトルってんだ、聴いたこと
あるだろう。

飛松・・・公安の誰かわ知らないが、何の証拠も
ないのに、しょっ引くわけにはいかな
いよ。

よし子の旦那・・・それが有るんだよ。ほら出て
きちまったのさ。

安代の手帳をちらつかせる。

飛松・・・知らないね。なんなんです?

よし子の旦那・・・安代さん死亡時の見てた人の
話と綜合 すると、君やばいんじゃな
      い?

飛松・・・ちょっと、何言ってるんですか?
どうしてそうなるんですか?
私はお客の依頼で手伝うことは有りま
すが、アクギな事はやりませんよ。

よし子の旦那・・・(ニヤッと笑って)あそう。
客が依頼したら、喜んでアクギなこと
をやるってか?

飛松・・・証拠出せ、証拠。

良平・・・これは何だ?

飛松・・・(のぞいてみてビックリする。)
知りませんや。

良平・・・ぼくの母さん利口な人だからね。木の
伐採の契約書から請求書、他の不動産
業者からの密告しょるいまでいつでも
戦えるように準備してたんだよ。

飛松・・・何で見つからなかったんだ。

よし子の旦那・・・桜田門が預かってました。

飛松・・・チクショウ。

よし子の旦那・・・あんたの言う、大切なお客を
呼ぶんだな。

飛松・・・だ、だれのことだ。

よし子の旦那・・・隣りの旦那だよ。

飛松・・・知らない、知らない。

よし子の旦那・・・いいんだよ。全て飛松さんが
やりました。凄いね。死体遺棄、
器物破損、犯人幇助の罪、脅迫
罪、他のも数えてやろうか?

飛松・・・わかったよ。呼ぶよ。何もかも、俺の
せいにはしないだろう。

よし子の旦那・・・分かんないよ。悪だから。

飛松・・・はい、私です。ちょっと居酒屋トキに
来てくれませんか。
いい話か?えー。多分いい話しです。
じやあ、すぐに。

よし子の旦那・・・いい話しね?

飛松・・・そうでも言わなきゃ出てきませんよ。
すっぽんみたいなもんだからね。

作蔵・・・だれがすっぽんだって。

よし子の旦那・・・ハヤ。

作蔵・・・散歩してたんだよ。降りそうだから、
早めにね。ところでいい話ってなんだ
い?ここんとこサッパリいい話が無い
んでね。
此方は?

飛松・・・えーえーいい話のお相手の。

良平・・・いや、相手は僕です。

作蔵・・・何者だ。

飛松・・・隣りの土地の所有者。

作蔵・・・えっ、なんだってお前が。しかし
飛松どうなってるんだ。
飛松・・・みんなばれてます。

作蔵・・・何の話かな?ワシは知らんぞ。全て飛
松がやったはなしだ。そうだった。お
母さんご愁傷様。ワシには関係ない話
だ。
良平・・・全てあんたのやったこと、証拠があ
る。しかし、悔しいが、百歩譲って、
僕の提示した金額であの土地を買って
下さい。小手先の値段交渉はなし。
時間に余裕が無い。ここに破棄できな
い契約書を弁護士に作成してもらっ
た。アンタは何時も実印を持ち歩いて
いるらしいな。そうだ、何も言わずに
サインとはんこうを押せ。
作蔵・・・合法とはみなされないぞ。

良平・・・証人が二人。その内1人は不動産業者だ。

よし子の旦那・・・
      此方にはお前が不利な証拠がある。
      (作蔵.飛松を見る。)
飛松・・・みました。この目で!

良平・・・それから考えても、いい話だとおもう
よ。アンタは一千坪の大地主様だ。
金は弁護士に振り込んでくれ。金が振
り込まれた時点で、契約成立とする。
後日弁護士が土地の権利書をもってく
る。これからは全て弁護士が関与す
る。

作蔵・・・待て、何で俺なんだ。

良平・・・ごめんなさい。長い間、ウチの先祖が
隣りにしてきたこと、考えたさ。
悔しかっただろう。いやきっと言葉で
は言えないものがあるはずだ。
もう終わりにしよう。そう思ってはい
けませんか?
これで許してください。

作蔵・・・えー。なんだって。嘘だろ
おれの支えが消えていく。
何のために悪やってきたんだよ。
ヤダ。やだよ。
こんな手応えのない結末なんて作蔵さ
まには考えられない。
飛松面白くない。どうにかしろ。

飛松・・・いいじゃないか、こういう穏やかなのも。

よし子の旦那・・・あっ雨だ。

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