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どんと晴れ。

座敷童のお引越し、第二編 座敷童から一言

ワシの家は決まっていません。足音がしたり、子供の話し声がしたからと言って自分の家に座敷わらしがいるなんて、勘違いしないでください。

私達は小さな神様です。

人間が気が付かないだけで日本全国におります。
こちら、岩手県の遠野というところから私達のように、各地に出かけて言ったというところです。
ワシらを大切にしてくれる人の家に住んでいます。
誰だってそうでしょ、声もかけられないでお願い事ばかり、ご飯もくれない、寒い部屋にとじこめられる。変な人形を持ってこられても文句も言えない。

ワシも小さいながら神様ですから、いやはやです。近頃はワシが神様だと言うことを知らない人も沢山います。例えば妖怪やお化けと一緒に考えている人もいるんです。

冬の水は冷たすぎ、湯気の立つお茶を頂きたい。
近頃のお菓子はみんなセロファンというものに包まれています。
ワシらは匂いが嗅げない。そのセロファン破いて下さい。ワシらは匂いでお腹を一杯にしているんだよ。考えてくれないかな。
子供と遊んだのは見えても見えなくても、声をみんながかけてくれたからだよ。
それから、名前をつけるのはやめてね、、ワシらは大きな神様じゃあないから、名前は遠慮します。

この前、ウチに座敷わらしの事わかる人が二人来たよ。
一人目の人は僕たちのいる部屋に首だけ突っ込んでさあっと居なくなっちまったが。
二人目の女の人は平気で部屋に入って来た。この人にくっ付けばこの部屋から出れる。
「座敷童の部屋」なんぞと書かれたら、ワシらはそこからでれないんだ。
だけどこの人は平気で入って来たからね、腕に飛び付いた。
妹の座敷童は小さ過ぎるからここに置いてはいけない。もちろん抱きかかえて飛び付いたんだ。この人ワシを見て可愛いって言ってくれた。神様だって「可愛いなんて言われたら」嬉しい時はめちゃくちゃ嬉しいもんだ。
一人目の人も実は私を見て居たらしいのだが二人目の人と相談してここから連れ出してくれることになった。二人は車というワシが初めて乗る、乗り物で脱出計画を立てワシらを遠野の商店街にある洋品店に連れて来てくれた。
初めて乗る、この乗り物はビックリだ。景色がどんどん横を飛んでいく。
雲に乗るときっとこんなんだろう。
暖かい美味しいお茶が出た。もう何年ぶりだろう。フウフウする。上手い。
フワフワの甘い美味しいお菓子が出た。もちろん、あのセロファンは付いて居ないから、
思いっきり匂いを吸い込めた。
元気が出た。
ワシは神様。普通の人にはもちろん見えません。
昔はぼた餅にも、おこわのご飯にも、みんな今のようなセロファンはかかってなかった。
だから思う存分匂いを吸えたんだ。

ここのお母さんはワシら兄妹のことをすぐわかってくれた。
黄色の布団に枕を二つ用意してくれた。料理も最高。

ここのお父さんもワシらが引っ越して来たのはすぐに分かった。
この時から、優しく声をかけてくれる。

ワシらをここのうちに連れて来た人がやってきた。
この人は大黒様のような人です、胸が厚くて心が暖か。
腕が太くてずり落ちないで済むし。抱っこもおんぶもしてくれます。
昔のお母さんのような人です。
そうです、この人は女の人です。この人はワシには土産にボールを持って来てくれました。
妹には小さいけれど綺麗な手鏡を持って来てくれました。この前来た時妹が欲しそうに
見て居たからと言います。

本当にワシらはこの家に引っ越して来てよかったです。
本当にみんな素敵な人たちです。
このようにしてもらうと、出来るだけ、願い事は聞いてやりたいと思います。
ワシら小さな神様ですから。
ちかごろ、ワシの気持ちを、素直に受け止めてくれる人間が少ないです。
大半の人は疑って、それでも願い事だけはしてくるんですよ。

不思議でしょ。
全く、信じて居ない人にはワシも反応しないんです。
当たり前ですよね。

どちらの神様も同じだと思いますよ。

ドントハレ。

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