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愛、愛しき人よ6

軽井沢の冬
ある朝早くヒロコは電話をかけた。

ヒロコ・・・お父さんが大変なのよ、サチコちゃ
      ん。素子ちゃんと二人で来てくれな
      いかしら。お父さん、ろれつが回ら
      ないし、人が違ってるの。昨日の夜
      中に首を絞められたの。
      警察は呼びたく無いし、今は大きな
     イビキをかいて寝てる。うん。うん。
     わかった。鈴木さんの所にいってる。      
     軽井沢駅に着いたら連絡して。まって
     る、ありがとう。

東京の娘たちが心配して軽井沢にやってきた日
この日は軽井沢に小雪が降り石油の配送車が頻繁に隣接している道路を行き来していた。佐川が車の運転が出来ないので生命の命ずなである石油ポリに10個の備蓄を整 えなければならなかった。

玄関を開けると、酷い匂いが鼻をついた。
ヒロコ・・・なんの匂い。
(トイレの前で糞便混じりの市川が倒れていた。)
ユキ・・・・お父さん。どうしたの。
素子・・・ヒロさん寝間着を用意してください。
ーーー呆然と立ち尽くす、ヒロコ。しかしあわてて。
ヒロコ・・・お風呂お風呂、
ーーー慌てて風呂の支度をする。
娘たちもこの異様さに終始無言であ
      った。
すぐに風呂を沸かして、寝間着を着
      替えさせた。
佐川の目はドロンとしてどこを見て
      いるのか解らない状態であった。
素子・・・お父さんわかりますか。素子ですよ。
佐川・・・・・・・・・・・


      フラついてまともに座れない。

鈴木・・・・電話もらって驚いたわよ。二人とも
      来てくれたのね。ありがとうね。
久木さんの死も相当ショックだった
      のよね。
初めてできた腹の底から話ができ
      る、男同志だって言ってたものね。

ヒロコ・・・確かに私が東京に行かなくてはなら
      ない時寂しがって居ました。
お酒をやめて欲しいのですが、フラ
   フラしても近くのコンビニに買いに行って
いたのです。

鈴木・・・・このままではダメでしょ。ヒロさん
      一人ではどうにも出来ないし。
お嬢さんよろしくお願いしますよ。

サチコ・・・・はい私達もそのつもりです。

素子・・・でも、私達もショックです。
お父さんが包丁持って、立って居た
       なんて。
ヒロさん怖かったでしょ。すみませ
       ん。


ヒロコ・・・病気です。しょうがありません。早
      く対処しましょう。


ヒロコ・・・前に通っていた病院に電話して見ましょう。

サチコ・・・・私がします。


     に、二階にバックを取りに行く。
鈴木和室に衣類を取りに行く。

素子・・・このまま受け容れてくれる病院に連
     れて行きましょう。
鈴木さん雪がなくなるところまで運転
     代行は頼めますか?その後なら私たち
で連れて行けます。

サチコ・・・・やはり入院出来る施設は久里浜の
       アル中病院だそうです。

素子・・・ヒロさんは一緒じゃない方がお父さ
      ん暴れないと思うから私達に任せて
      下さい

サチコ・・・・本当にヒロさんに何もなくてよか
       った。
お父さんは決してヒロさんに暴力は
      振るわないと思っっていたけど、前   
      にお母さんとの離婚問題の時 すんで
      の事があったからね。

ヒロコ・・・連絡を取り合いながら、私も久里浜
      の病院に行きますからね。
そう言えばお父さんが首を締めて来
      た時、文子文子と私のことを読んで
      たわ。

サチコ・・・・母の名前です。

鈴木・・・・怖いよね、ヒロコさんの事わからな
      かったのね。


鈴木・・・・アッ、軽井沢タクシーですか。鈴木
      です。雪がないところまで代行運転
      お願いします。そう、若い人が雪道
      の運転が不安だからって。セントレ
      アホテルの隣の日本家屋です。なる
      べく急いで下さい。

ヒロコ・・・ユキちゃん。これ。足りると思うけ
      ど、コレしか家にないから。いいわ
      ね。お父さんをよろしくね。


      の姿。

鈴木・・・・大変だったわね。

ヒロコ・・・あれは佐川はんじゃあないわ。酷す
      ぎる。

鈴木・・・・娘さんがいてくれて、よかったわ
      ね。

ヒロコ・・・ハイ。あれは佐川だったんでしょう
      か?
まだ信じられません。
私はただあなたが元気でそばに居て
     くれれば、それだけでよかったのに。
それ以上、何も望んでは居なかったのに。
鈴木・・・・いつからこんなに成ったの、

ヒロコ・・・やはり久木さんの死が大きかったと
      思います。どうにもしてあげられな
      かった自分の不甲斐なさを嘆いてい
      ました。
      そして久木さんの妻の仕打ちを自分
      の事のように、繰り返してお酒を飲 
      むとエスカレートしていくんです。    
      最後には頭の中のまとまりがつかな
      くなっていました。多分誰だかわか
      らなくなっていたかも知れません。

鈴木・・・急だったんだ。
     包丁騒ぎはいつ、

ヒロコ・・・昨夜です。怖かったです。
      二階に逃げました。
      でも、こんな事、初めてなんで。
鈴木・・・・そんな事何度もあっちゃあ困ります
      よ。
ヒロコ・・・そうですね。
鈴木・・・・その前に何かあった?
ヒロコ・・・お酒は飲まないで、と頼みました。
      そこから狂い出して。目が何時もと
      違うんです。本当に怖かったです。

ーーーサチコからメールが入る。 1

ヒロコ・・・読みます。
佐川が少し意識が、戻った。自分がどこにいるか、解らないようだ。もちろん自分が何をやったのかは、解らない。
高崎に出れば、運転代行の人は返す。心配してくれたが、これは家族の問題だからと先の事は断った。ヒロさんはいつ久里浜病院に来るか?なるべく早く、手続きがしたい。

ヒロコ・・・私に責任があります。これから準備
      して行きます。

鈴木・・・・軽井沢もこれから本格的な雪になり
      そうよ。


鈴木・・・・まだ色々あると思うけど、事実は事
       実として、受け止めて、よく周り
       を見て判断する、あなたなら大丈
       夫。待ってます。
      さ、早く行って。後は任せなさい。

急いで出かけていく、ヒロコ。見送る鈴木。

鈴木・・・・これから大変だわ。


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